S&P500への投資はウォーレン・バフェットも勧める有効な手法。しかし、このところの株価上昇でGAFAMの占める割合が高くなり、GAFAの成長鈍化とともにS&P500の上昇もストップするのではないかとの話も出始めています。本当のところはどうなのか、投資ブロガーのりんりさんに解説してもらいました――。
星条旗とウォール街
写真=iStock.com/Fabrice Cabaud
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GAFAMの株価が下がるとS&P500も下がる「噂」は本当か

米国の代表的な株価指数であるS&P500は最高値の更新を続けていますが、時価総額の約20%をGAFAM、つまりグーグル(Google)、アマゾン(Amazon)、フェイスブック(Facebook)、アップル(Apple)、M(マイクロソフト)の5社が占めているため、「GAFAMの成長が止まればS&P500の上昇も止まる」との指摘があります。

たしかに現在のS&P500にとってGAFAMの影響は少なくありません。そうなればS&P500の成長が鈍化したり、株価が下がることもあると思います。しかし、GAFAMの株価が下がったとしてS&P500の優位性は変わらないと考えています。

S&P500の構成銘柄(上位10銘柄)

例えば、S&P500の過去の値動きを見ると、グロース株(成長株)が低調の時期にはバリュー株(割安株)が、バリュー株が低調な時期にはグロース株が相場を支えるサイクルになっていることがわかります。

歴史からわかるS&P500「グロース株」「バリュー株」サイクル

実際、過去10年ほどは、低金利や低インフレがGAFAMなどの業績を後押ししてグロース株の株価が上昇してきました。しかし、今年上半期は、GAFAMの株価よりも金融株やエネルギー株などのバリュー株の上昇が目立っていました。今後、金利の上昇やインフレ率の上昇が明確になってくれば、さらにバリュー株の上昇につながると考えます。

図表2はS&P500のグロース株に連動するETF「SPDRポートフォリオS&P500グロース株式ETF(SPYG)とバリュー株に連動するETF「SPDRポートフォリオS&P500バリュー株式」(SPYV)の値動きを比較したものです。

2001年をゼロとして比較すると、2015年央まではバリュー株がグロース株を上回っていますが、以降はグロース株がバリュー株を上回っていることがわかります。

S&P500のグロース株とバリュー株の動き

グロース株とバリュー株のどちらが有利かは、市場環境によって変化します。例えば、インフレ率が高くなると、インフレが行き過ぎないように政府は金利を引き上げて金融の引き締めを行います。そのときにはバリュー株が有利になる傾向があります。

金利が上昇すると銀行は利益を出しやすくなるので金融セクターの株価が上昇します。あるいは、原油価格が上がると、エクソンモービルなどエネルギーセクターの株価が上昇するのです。

またS&P500指数は過去多くの企業の新陳代謝が行われてきました。かつて、エクソンモービルやAT&T、IBM、GEなどの大企業がGAFAMにその座を明け渡したように、の成長が鈍化しても、次の時代のGAFAMのような企業が現れると考えます。

アマゾン株が下落してもS&P500は最高値を更新

実際にS&P500の構成銘柄の直近の値動きを見ると、7月末以降はアマゾンの株価が大きく下落しています。しかし、他の企業の株価の上昇が補ってS&P500は最高値を更新しています。

S&P500よりも高いリターンを目指したいのであれば、市場のほとんどを占めるプロと戦ってコスト控除後で勝ち続けなければならないということでもありません。

超一流の大学を出た人を雇い、お金をかけて情報収集・分析をしているプロと勝負するには、こちらも自身の人生を費やして市場のサイクルや企業の分析などをしなければなりません。

株式の売買が成立するためには、ある企業の株式を同じ価格で「売りたい人」と「買いたい人」が存在することになります。この時、同じ企業の株を一方は高すぎると思って売り、もう一方は安いと思って同じ株価で買うことになります。その時どちらかの判断が間違っているのです。売買後に株価が上昇すれば「売った人」が間違っていたことになりますし、株価が下落すれば「買った人」が間違っていたことになります。

プロに勝てる自信がなければ指数連動の投資がベター

短期であれば運よくプロに勝てることもあるかもしれませんが、長期的にプロに勝ち続けるのは困難です。であれば、S&P500などの指数に連動する商品に投資をしていれば、プロの平均点は取れます。まずは低コストで平均点のリターンをしっかり確保するのがいいと思います。

そのうえでさらに興味がある人は、バリュー株、グロース株など次のステップに進むのもいいでしょう。

「S&P500投資」で成果を出すには辛抱強さも必要

S&P500に連動する商品に投資する場合には、注意してほしいことがあります。長期でみれば右肩上がりで上昇していますが、横ばいの時期もあるのです。2013年以降は力強い上昇が続き、何度も最高値を更新しているので見逃してしまいがちですが、過去には低迷していた時期もあります。

図表3は1982年から直近までのS&P500の動きを示したものですが、2000年から13年の間は上がったり下がったりを繰り返し上昇していません。この間に投資をしていれば、ほとんどリターンが得られなかったことになります。同じように1970年代も低迷しています。

S&P500の推移(1982年~2021年)

もしかしたら、低迷する時期を今後経験するかもしれないことをよく理解したうえで投資をすることが大切です。それを理解していれば、低迷している時期でも我慢して次の上昇を待つことができます。

その心構えができていないと、S&P500が低迷したときに売却して、すでに高くなっている国の株価に連動する商品を買ってしまいかねません。安値売りの高値買いになって、結局損をしてしまいます。

過去の超長期リターンをみれば、米国株式のリターンが全世界株式のリターンを上回る結果となっています。しかし、人によって投資期間が異なります。たまたま米国株式市場が低迷している20年間に米国株式に投資をしてしまうと、全世界株式よりも低いリターンになることもあります。

それを回避するには、保険として全世界株式に連動する商品を中心に運用するのがよいでしょう。

S&P500に投資している人がいま売ると損をする理由とは

今後のS&P500の動きを考えると、米国政府の金融引き締めで一時的に株価が下落する可能性があります。「そのときにいったん売却した方がいいのか?」と考える人もいるでしょう。

しかし、いつ下がるか、どのくらい下がるかを判断するのは簡単ではありません。また、売却すると利益の約20%は税金として徴収されてしまいます。いったん売却して再投資の時期を狙ったとしても、保有し続けるよりも高いリターンを狙うのは至難の業です。私は市場に出たり入ったりするより、“いつづける”ほうが結果的に高いリターンが得られると考えています。

S&P500への投資は著名な投資家であるウォーレン・バフェットも勧めている投資法で「ほとんどの投資家はS&P500インデックスファンドを信頼したほうがいい」とアドバイスしています。米国株投資を考えるうえでこの基本は今後も変わらないでしょう。