DESIGNデザイン WORKSワークス ANCIENTエンツェント【ポケトル】の場合

数字よりも観察して答えを探す

2018年、“日本最小の携帯ボトル”というコピーとともに登場したポケトル。発売から現在まで累計販売数は180万本! コロナ禍のテレワークでもマグカップ代わりに使う人が増えている。この大ヒット商品を開発した小林裕介さんは、発売前は数字よりも観察を重視した。

(右)株式会社DESIGN WORKS ANCIENT 代表取締役 小林裕介さん(中)企画部 猶原こころさん(左)企画営業部 堀田結貴さん
(右)株式会社DESIGN WORKS ANCIENT 代表取締役 小林裕介さん(中)企画部 猶原こころさん(左)企画営業部 堀田結貴さん

「この商品が生まれたのは、500ミリリットルのペットボトルのお茶を余らせる僕自身の体験がきっかけ。世の女性も飲みきれないだろうと、街行く女性を観察したら、やはり自動販売機では小さい容量を買う人が多かった。一方、売り場を占めていたボトルは300~350ミリリットル。一番小さくて250ミリリットルでしたが、それより小さいサイズにニーズがあると踏みました」

自信をもって、製作担当の猶原こころさんに話したが、やや反応薄。

「容量が半分なら値段も半額という感覚になりますが、製造コストは同じ。むしろ小さいほうが技術的に難しい。それでも小林の熱意に押されて製造に着手しました」(猶原さん)

ポケトルってどんな商品?

シニアやママに大人気! ただの流行に終わらない?

目標は1年で5万本。ところが展示会で発表したところ、会期中に注文が殺到。一気に10万本まで増産した。いざ商品が市場に出てからも、5万本、10万本と増産しても追いつかない。工場を増やしても、常に在庫切れになる。100万本を超えて、さすがに数字を意識せざるをえなくなった、と小林さんは語る。

「数字から出発していたらできなかった」
「数字から出発していたらできなかった」

「もともと通勤時間が30分~1時間の都内のOLさんをターゲットにしていましたが、ふたを開けてみると65歳以上が20%超と、シニア層の方に買っていただいていた。子どもを持つママたちにも人気がありました。これで、ひょっとしたら流行りじゃなくて、ずっと長く愛してもらえる商品になるんじゃないかとイメージが切り替わりましたね」

定番の120ミリリットルに加えて、150ミリリットル、180ミリリットル、さらにスープボトルも投入。最近ではSDGsの観点から、ヨーロッパで人気に。国内でも給水スポットが増えてきた。世界中の人々が、当たり前にポケトルを持ち歩く日も近いかもしれない。

マーケッターはこの数字を見た!
DESIGN WORKS ANCIENT流 ヒット商品を生み出す3原則

※金額は税別です。
※数字は雑誌掲載当時のものです