創刊以来、ファッションから健康、実務に至るまで、常にキャリア女性の本音を引き出し続ける『プレジデント ウーマン』。そこで、実は悩んでいる人が多い「コート」に関して、読者500人アンケート調査を実施、それを受けて去る3月某日、読者7人を交えた座談会を開催。キャリア女性がコートに抱える課題と、それらを解決する条件を探るため、約1時間半、歯に衣着せぬ本音が交わされた——。
スタイリッシュなコートを着て笑顔を見せる女性
写真=iStock.com/alexandr_1958
※写真はイメージです

キャリア女性のための秋冬プロジェクト

ファッションの世界では、秋冬シーズンの新作は毎年2月に発表される。それを受け、各ファッション誌では猛暑の中、秋冬コーディネートの撮影するのが常だ。

暑い季節に秋もの・冬ものは考えられないという女性も多いかもしれないが、実は、PW編集部では、キャリア女性のための新たな秋冬ファッションプロジェクトを、2021年2月に始動。試行錯誤を繰り返しつつ、真夏の今、佳境を迎えている。8月から順次その全貌を明らかにする予定だ。

実は妥協している人が多い⁉ キャリア女性のコート事情

秋冬の装いの主役といえばコート。面積が大きいことと、ある程度の投資額が必要とされるため、コート選びに自然と慎重になる人は多いはず。冬本番ともなれば「防寒」はより必須要素となり、実用面がさらに求められることとなる。

だからこそ、ビジネスシーンで着用するコートに悩む女性も多い。今年1月、プレジデント ウーマン(以下、PW)サロンメンバー500人に対し実施したアンケート調査でもその悩みの深さが明らかになった。

「通勤コートについてお悩みがあれば教えてください」(複数回答)

1位 防寒重視だとビジネスライクではなくなる 40.7%
1位 軽くて暖かい素材のコートが見つからない 40.7%
1位 ビジネスを中心に考えると似たデザインしかない 40.7%
4位 周囲の人と似たようなコートになってしまう 32.2%
5位 色の選択肢が少ない 30.5%

なんと同率1位の回答が3つも! 意見としては「防寒重視だとダウンがいいけれど、それだとカジュアルになりすぎる」(金融)、「ビジネス用に……と考えると似たようなデザインになって、外回りのときは部下と見た目がほぼ一緒ということがあった」(営業)、「軽いと寒い、暖かいと重い……手持ちのコートは一長一短(笑)」(出版)などが挙げられた。

そして興味深いのが、「次に買いたいコートはどんなもの?」というアンケートに関する回答。

「次に買いたいコートはどんなものですか?」(複数回答)

1位 軽くて暖かく、スッキリ見えるダウンコート 42.4%
2位 上質素材のマニッシュなシンプルデザインのコート 40.7%
3位 ビジネスシーンで役に立つ機能性の高いコート 30.5%

まるで手持ちのコートの悩みを払拭するかのごとく、回答の1位が「軽くて暖かく、スッキリ見えるダウンコート」に。

一方で「ダウンが暖かいのはわかっているけれど、通勤にはカジュアルすぎる」(広告代理店)、「防水、防汚などの機能は嬉しいけれど、それだとデザインがイマイチなものが多い」(秘書)など、欲しいものが見つけられていないという意見も多く見られた。

コートに対する不満&悩みは座談会でさらに明らかに!

座談会に参加したキャリア女性7人にも、リアルな悩みを聞いた。

とくに目立ったのは「なるべくシンプルで着膨れしないものが欲しいのに、なかなかない」(生保)というもの。同時に「暖かさとエレガントさを兼ね備えたコートがない」(外資IT)という意見にも同意が集まった。デザインと機能が両立しているコートに、多くの人が出合えていないという印象だ。

また、「男性の管理職とともに移動することが多いが、紅一点でも変に浮かないように女性らしすぎず、かといって男性的すぎないコートが欲しい」(金融)という女性管理職ならではの意見も。デザイン性といっても、“素敵かどうか”だけではなく、印象管理の面も同じくらい大切であることがわかる。周りの男性管理職とのバランスを気にしつつ、そうすると「色の選択肢が少なく、黒や紺、ベージュになりがち。地味に転んでしまうのはテンションが下がる」(金融)という本音も交わされた。

座談会の様子
撮影=田子芙蓉

やはり、コートに関する悩みは、多くのキャリア女性に共通しているようだ。座談会で挙がった色の選択肢がない、地味に転びがちという悩みは、アンケート結果と一致する。

「現在もっとも愛用している通勤コートの色は何色ですか?」

1位 黒 28.8%
1位 紺 28.8%
3位 ベージュ 15.3%
4位 グレー 13.6%

周りから浮かず、着回しにも便利なものという選択肢が、「周囲の人と似たようなコートになってしまう(32.2%)」という悩みにつながっていることが予想できた。

着たいけど着たくない? ダウンコートには複雑な思いが…

悩みを読み解くと、ダウンコートは暖かいから一着は持っていたいと思いつつ、デザインにはいまいち満足していないように思えるが、キャリア女性たちの本音は?

「防寒という意味では真冬に重宝している」が……「ダウン特有の横線? がすごくカジュアルに見える」「一般的なダウンはモコモコで襟が詰まっていて、太って見えるのが不満」「スーツとダウンの相性が悪い」などなど、キャリア女性にとってダウンは鬼門(?)のようだ……。

ダウンコートを着ている女性
写真=iStock.com/4FR
※写真はイメージです

「シャリシャリとすれる音も何気に気になるときが(笑)」という意見も聞かれた。中でももっとも同意が集まったのは「仕事着としてはマッチしていないとわかりつつ……寒さに勝てずに着るという感じ」という意見。着たくて着ているというより、防寒のために仕方なく着ているという印象だ。

では、「これなら好んで着る!」という理想のダウンコートとは一体どんなタイプのものだろうか? ざっくばらんな意見を聞いた。

「シンプルで一見ダウンっぽくないもの」(保険)、「できれば顔色が悪く見えない色。奇抜な色はやっぱり難しい」(金融)、「コートは頻繁にクリーニングできないから、汚れが目立たないのはマスト!」(外資IT)など、要求は続々。「重いのは着るのが嫌になりそう。ワガママだが、軽くて暖かかったらベスト」(マスコミ)。これらがもっとも優先されるべきポイントのようだ。

コートを見比べる参加者
撮影=田子芙蓉

気になったのは「パッと羽織っただけでとりあえずサマになるものがいい。男性と一緒の外回りだと相手先を出る際、コートの脱ぎ着を待ってくれないことがある(笑)」(金融)という声。たしかに、着脱に時間がかかるものは、外回りの営業職にはとくに向いていない。

これまでベストなコートがなかなか見つからなかっただけに、どんどん出てくる率直な意見。総合すると、ダウンなのにダウンに見えない、スマートな見た目で防寒性抜群。さらには汚れが目立たない一着が欲しい、という理想満載な意見で一致したが……。

まだまだ出てくる、理想のコートへの条件の数々

管理職層が多くなるPW読者世代。理想のコートの条件として、以下の意見も続々と挙がった。

「素材が大切。上質で、肌触りがいいものが欲しい」(保険)と、着心地と見た目のクラス感が大切だという主張。よくあるファー襟については「暖かいしリッチ感があっていいかも」という人と、外回りが多い職種では「仕事ではNG」とも。ほかにも「その日の気分でストールなどを巻くのでなくてもいい」「つけはずしは面倒」という声も上がる。

また、目立ったのはコート丈の問題。「合わせるボトムとの丈バランスにいつも悩む」(不動産)、「スカートは裾から出てもいいのかどうか……」(金融)などが大多数。「背が低いので余計にバランスが悪く見えないか心配」(保険)という意見も見られ、コートはたくさん持たないぶん、着回し力と中の服を選ばないのは重要なことがわかる。

働く女性たちにとって納得のいくコートの価格とは?

アンケートの結果、コートにかける予算の現状は「5万~10万円未満(32.2%)」がトップ。僅差で「3万~5万円未満(30.5%)」となっている。座談会で挙がったのもほぼ同意見。10万円はひとつのボーダーのようだ。

一方で「シルエットと色が気に入ったら値段は気にせずに購入する。自分のステータスや、相手に与える印象に投資すると思えば決して高くない」(不動産)、「値段に見合う質の良さだったら初期投資としてアリ」(マスコミ)、という投資派も。「値段は関係なく、この先長く着続けられるかを基準に考える」(保険)という意見も印象的だった。

座談会ではさまざまなダウンコートのサンプルを試着してもらいながら本音を引き出した。
撮影=田子芙蓉
座談会ではさまざまなダウンコートのサンプルを試着してもらいながら本音を引き出した。

価格に関しての感覚は割れたが、おおむねその価格にふさわしいかどうかが納得いけば、長く大切に愛用するコートとしてワードローブの仲間入りとなりそうだ。

以上のことをまとめると「見た目はまるで上質なウールコート、けれど実は防寒性に優れた極薄のダウンコート」=キャリア女性が望む究極のコートが出来上がることがアンケート&座談会で導き出せたのだが……。本当にそんなすべてのわがままを満たしたコートが現実的につくれるのだろうか?

「理想のコート」への熱いストーリー、続きは8月末にお届けします!