新型コロナウイルス感染症問題によって、世界の主要国は破格の金融・財政緩和を余儀なくされ、世界には「コロナ緩和マネー」があふれています。あふれたマネーはグローバル化した金融市場を駆け巡り、手ごろな投機商品に吸い寄せられていきます。今、どんな投機商品が売れているのでしょうか。また、絶対にしてはいけない投資とは——。
株価ボード
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コロナ緩和マネーで世界的にバブル景気に

「投機」とは、投資の一種ですが、将来の利益を楽しみに、長期的なスパンで資金を投じる投資に対して、投機は「機に投じる」、つまりチャンスと見るや、そのときに儲かりそうな商品を買い、短期の利ザヤを狙う投資です。投機と投資は、ニュアンスが違います。

2021年現在、日本もコロナ禍で実体経済は大不況なのに、コロナ緩和マネーのおかげで“機”が生じ、投機的な株買いの動きが活発になった結果、日経平均株価が30年ぶりに3万円台(2021年2月)を記録するという事態になりました。

あふれたマネーが実体経済と連動せずに、株価をぐんぐん押し上げる……これはバブルの特徴です。しかし、どの国も新型コロナ問題に解決のめどが立つまでは、その原因となっている緩和政策を大なり小なり続けざるを得ません。

ですから、もうしばらくはカネ余りが続き、今のバブル的な状況も続くと思われます。では今、どのような投機商品が売れているのか見ていきましょう。

余りガネが流れ込み株価は3万円台に

冒頭にお伝えしたように、株価はコロナ流行下で、大きく値を上げました。日経平均株価は、ラグビーワールドカップのあった2年前の2019年2月末には2万1385円だったものが、その2年後の2021年2月には、なんと3万円台を記録しています。1990年以来、実に30年ぶりの大台復帰です。なお6月現在は、少し下がって2万8000円前後ですが、これは暴落の始まりというよりも、一進一退の局面に入った印象です。

おそらく株価は、しばらくはこの高止まり状態のままでしょう。実体経済が不況(デフレ)の中、コロナ対策の金融・財政緩和がまだまだ継続されそうなことを考えると、今後しばらく「デフレでモノが安いのに、緩和マネーがあふれ返る」状況が続きそうです。

そうすると、必要なモノを買っても個人も企業もカネが余るわけですから、必然的にその余りガネが、株や土地などの資産への投資に流れ込んでくるものです。投機的に買う人も少なくないでしょう。しかもコロナのせいで、この実体経済の不況とカネ余りは、世界的な現象です。ならば外国人投資家も同じ思惑で動くでしょうから、この現象はしばらく続くでしょう。

住宅ローン金利の安さから不動産ブーム勃発

不動産も別荘から中古マンションまで、非常に売れています。これは、都市部の感染状況悪化とテレワーク普及で郊外脱出組が増えたこともあるでしょうが、一番の理由は「カネ余り+史上最低の住宅ローン金利」と考えられます。

住宅ローン金利は、アベノミクスの異次元金融緩和より下がり続け、さすがに下げ止まったかなと思ったところに、コロナ緩和でさらに下がり、2021年5月現在は「変動金利で0.4~0.5%、全期間固定金利でも0.9~1.0%ぐらい」という驚きの安さになっています。

総務省発表の「2020年人口移動報告書」によると、東京都の人口移動は下半期ずっと「転出超」でした。つまり、まず「三密の都心を離れたい+テレワーク普及で都心に住まなくてよい」人が増え、そのタイミングでカネ余りに史上最低の住宅ローン金利……。これはもう、東京近郊で不動産ブームが起こらないほうがおかしいのです。

創造的な男が森の家で屋外での作業
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2020年の最初の緊急事態宣言時、安倍総理は「テレワークの導入で、通勤者の7割削減」を呼びかけ、多くの企業が実施しました。あれを経験したことで、多くの人々が「自宅でも仕事をこなせる」ことに気づきました。ならば無理して三密必至の23区内に住まなくても、埼玉・千葉・神奈川のほうが住環境もいい。もっと言うなら、「たまに本社+遠くても交通費支給」の会社なら、「新幹線で約1時間前後」の近隣リゾート地である熱海・軽井沢・越後湯沢などに住むという大胆な選択肢もあります。

また逆に「都心のど真ん中のマンション」というのもありだと思います。なぜなら緊急事態宣言下でも通勤が必要な人にとって、せめて電車での感染リスクを減らすために「職場に歩いて(or自転車で)通えるマンション」という選択肢も出てくるからです。

とまあ、ここまでは実際に「住む」ことを考えてきたわけですが、そういう思いの人が多いということは、投機物件として不動産を買うのも魅力的、ということになります。

素人が手を出すには危なすぎる仮想通貨

仮想通貨(暗号資産)の代表格といえばビットコインですが、その市場は非常に不安定で、上げ幅・下げ幅ともに常軌を逸しています。

ビットコインは、まず2009年に「1BTC=0.07円」で始まりますが、2017年にはなんと200万円を突破します。しかしその後、瞬く間に30万円台にまで急落し、以後数年間は数十万円~100万円前後で推移します。それがコロナ緩和マネーで2020年後半から上がり始め、ついに2021年4月にはなんと「1BTC=700万円」、当初価格の1億倍にまで達します。ところが、そこからどんどん値を下げ(ひどい日は1日100万円以上ダウン)、わずか1カ月後の5月には300万円台まで暴落しています。ここまで乱高下するビットコインは、まさに投機商品。現状では素人が気軽に手を出せる商品とは言えないでしょう。

ビットコイン
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仮想通貨は、国家が信用保証してくれる従来の法定通貨とは異なり、「利用者同士がオンライン上の信用保証システムを共有することで構築する、国家の裏付けを必要としない財産的価値」で、正しくは「暗号資産」と呼ばれます。コストがほとんどかからないうえ、24時間取引ができるなど利点も多く、今日世界に急速に拡大しています。

そして、その価値の構築で使われる技術が「ブロックチェーン技術」です。これは、世界の全取引を記録し続けているオンライン上の取引台帳を全利用者で共有するもので、ハッキングによるデータの改ざんをきわめて困難にする技術ですが、実際には不正アクセスによる流出(つまりビットコインの盗難)が起こっています。

日本でも2018年、東京と大阪の仮想通貨取引所で、それぞれ580億円、67億円相当ものビットコインが流出し、多くの日本人が立件されています。そして仮想通貨は、ハッキングやシステム障害などでセキュリティ面に不安が生じると、投資家がすぐに売りに出すことから、その価値がいったん下がり始めると、暴落を止められなくなります。なぜなら仮想通貨は、国家が保証する法定通貨ではないため、価値をコントロールしてくれる中央銀行が存在しないからです。

ビットコインは、発行額の上限が「2100万BTC」と決められているため、その意味では通貨というよりも、同じく希少性を価値とする「金(GOLD)」に近い資産です。しかし金ほど「危機時の安全資産」として機能していません。そういう意味では、現状のビットコインは、ビジネスの片手間に投資するのに向いた商品とは言い難いと思われます。