組織や働き方が多様化する中、キャリアアップのための選択肢もまた大きく広がりつつあります。自分の強みをどう捉え、どんなスキルを磨き、将来をどう切り拓いていくべきか──。そうした疑問にお応えするべく、PRESIDENT WOMANでは専門家や女性リーダーを迎えてキャリアアップセミナーを開催。好評を博したイベントの模様をお届けします。

【出演者】

雇用ジャーナリスト
海老原 嗣生さん
アクセンチュア
マネジング・ディレクター
植野 蘭子さん
アクセンチュア
華原 未奈さん
 

女性の転職&キャリアの法則とは

海老原 嗣生さん
えびはら・つぐお/雇用ジャーナリスト。大手メーカー、リクルートエイブリック(現リクルートエージェント)、リクルートワークス研究所などを経てHRコンサルティング会社ニッチモを設立。著書に『人事の組み立て~脱日本型雇用のトリセツ~』など。

今回のセミナーは、「多様化する時代と女性のキャリア戦略」をテーマに、オンラインイベントとして開催されました。最初に行われたのは、雇用ジャーナリストの海老原嗣生さんによる基調講演。雇用問題や女性のキャリアに詳しく、人気漫画『エンゼルバンク』の“カリスマ転職代理人”のモデルになった人物でもあります。

海老原さんはまず、ここ数十年で女性のキャリアがどう変わってきたかを、データを示しながら解説。ひと昔前は「短大卒・事務職採用」だったのが、2000年頃から「四大卒・総合職採用」が増え、2015年には管理職の入り口にあたる係長の女性比率が初めて2割以上になったと言います。

このデータから、海老原さんは「2030年ごろには女性管理職比率が全体の3割に迫るはず。今後10年が女性活躍の急伸期」と強調。女性のキャリアの選択肢も着実に広がりつつあり、特に最近は若手女性社員が急速に増えていることから、その管理・指導役として30代女性が引く手あまたになっているのだそう。課長職などでの中途採用も多いため、女性は今後、転職も含めたキャリアプランを真剣に考えていく必要がありそうです。

「その際に知っておいてほしいのは、キャリアはソフトウェアで言えばOSとアプリケーションで構成されているということです。OSは論理的思考力やマネジメント力などのいわば『社会人力』で、比較的どこの組織でも使えるもの。一方、アプリは業界知識や専門技能などを指し、同じ業界内でしか使えないもの。この2つをうまく生かすことが、転職やキャリアの成功につながります」

一般的に、転職やキャリアアップにはアプリの力が重要に見えますが、実は女性に多い5R系の仕事(PR、IR、HR、CR、Research)ではOSの力も重要。そのため、こうした職種の女性の中途採用では、アプリの力よりOSの力のほうが重視されやすいと言います。

その上で、OSの主要な要素は、経営・自営系に向く「稼ぐ力」、経営系に向く「牽引する力」、組織内での活躍に向く「何とかする力」の3つだと指摘。中でも「何とかする力」は、無茶ぶりや丸投げを受け止める力とも言い換えることができ、これは女性のほうが伸びやすいのだとか。

「転職やキャリアアップを考える時は、自分が目指す方向のOSを持っているのかどうかを見つめることが大切。特に、何も見えない状態から情報を集め、正しい判断をして道筋をつくっていける『何とかする力』は大きな武器であり、女性の方が身につきやすい。この力があれば、どこの組織でも活躍できる可能性が高いと思います」

【女性の転職・キャリアの法則】
(1)女性活躍は今後10年で急伸、2030年には女性管理職が3割に
(2)今、30代女性は若手女性社員の管理・指導役として引く手あまた
(3)女性は専門技能(アプリ)だけでなく「社会人力」(OS)も武器に

「社員の男女比50対50」を目指す企業も

続いて行われたのは、「I&D(インクルージョン&ダイバーシティ)組織の実現に向けて」と題したスペシャルトーク。総合コンサルティング会社「アクセンチュア」の戦略コンサルタントであり、女性リーダーとしても活躍する植野蘭子さんが、同社の戦略や改革への取り組みを伝えてくれました。

植野 蘭子さん
うえの・らんこ/アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 人材・組織 プラクティス 日本統括。東京外国語大学卒業後、自動車メーカー人事部を経て中途入社。幅広い業界において企業変革支援や人材・組織戦略、成長戦略、M&A支援などの戦略コンサルティングに従事。2児の母。

アクセンチュアでは、平等で多様性を当たり前とする企業文化を実現すべく、I&Dを経営戦略のひとつに掲げているそうです。目指すゴールは、2025年までにグローバル全体の社員の男女比を50対50にすること。そのための施策として、女性の採用強化、キャリア継続意欲の維持・向上、女性リーダーの継続的な輩出などさまざまな取り組みが行われてきました。

コンサルタントは激務というイメージがありますが、アクセンチュアでは独自の働き方改革「Project PRIDE」を進め、改善に向けて取り組んでいるのだそう。その結果、残業減少、離職率低下、有給取得率上昇、さらには女性比率向上と、それぞれの課題において確かな成果が表れていると言います。

こうした成果はI&Dの変革にもつながり、働きやすさが向上した結果、一般社員はもちろん管理職や経営幹部に占める女性比率も増加。これまでの道のりを「その時々の課題を捉えて、改善を重ねながら進んできた」と振り返る植野さん。今後も取り組みを継続し、多様な人材が働きやすい環境をさらに目指していくと力強く語りました。

【アクセンチュア I&Dへの取り組み】
(1)「2025年までにグローバル全体の社員の男女比50対50」を経営戦略に
(2)女性の採用強化や女性リーダー育成を重視し、女性比率もアップ
(3)働き方改革「Project PRIDE」により残業減少や離職率低下も

キャリアチェンジも選択肢のひとつに

次に、海老原さんと植野さん、3年前に中途採用でアクセンチュアのストラテジーグループに入社した戦略コンサルタントの華原未奈さんによるクロストークが行われました。トークテーマは「女性のキャリアと職場のリアルな“いま”」。3人が女性のキャリアアップやキャリアチェンジについて、体験談や分析を交えながら語り合いました。

海老原さんは、アクセンチュアのI&Dへの取り組みについて「意識改革に加え、女性の活躍を阻む長時間労働など“見えない壁”の排除にも取り組んだ点がすばらしい」と評価。こうした企業風土は華原さんも肌で感じているそうで、「入社して一番驚いたのは、活躍の度合いにも働き方にもまったく男女差がないことだった」と言います。

こうした風土の中で女性リーダーが増えていけば、「数の力」が生まれてさらに女性活躍が進んでいくはず。「係長まではその段階に来ている」という海老原さんの言葉に、マネジメント職を務めている植野さんも深くうなずき、「この数十年の間に、意思決定のプロセスが男性社会ならではの暗黙知から透明性のあるものに変わってきた」と実感を語りました。

とは言え、植野さんはまだ男性がマジョリティーだった時期から頑張ってきた女性。男性社会の常識に違和感を覚えたこともあったそうですが、そんな時は環境や相手を無理に変えようとするよりも、自分の成長やスキルアップに心血を注いだと言います。

これを受けて、海老原さんは「現在活躍中の女性には3つの世代の人がいる」と指摘。1つ目はいま役員になっているような50代以上の女性で、男性社会を勝ち抜いてきた紛れもないスーパーウーマン。2つ目は総合職世代のトップランナーたちで、主張が強くエネルギッシュな、いわば「肉食世代」。そして3つ目はそれほど個性が強くない「普通世代」で、この人たちは上の2つの世代を見て「私には真似できない」と不安になりがちなのだとか。

「普通世代の中には管理職になりたくないという女性もいますが、今は過渡期。あと4~5年もすれば普通世代の管理職が増え、やがて女性役員や女性部課長のイメージも決して『真似できない』ものではなくなるはずです」(海老原さん)

では、「普通世代」に当たる華原さんは、自身のキャリアをどう捉えているのでしょうか。自動車部品メーカーの事業企画から、まったく未経験だった戦略コンサルタントという仕事に転職。大きくキャリアチェンジしたのは「企業の変革を、外部の知見を生かしてサポートするような仕事がしたい」と考えたからだそうです。

華原 未奈さん
かはら・みな/アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部。慶応義塾大学卒業後、自動車部品メーカーに入社。事業企画部にて商品化に向けた事業計画策定等を経験。2018年にアクセンチュアの戦略コンサルタントへキャリアチェンジし、半導体等ハイテク産業や製薬等のライフサイエンス業界を担当。

「海老原さんの講演にあったアプリとOS(社会人力)の話は、本当にその通りだと思いました。コンサルタントもOSが重要で、加えてお客様の業種によっては前職での経験をアプリ(専門技能)としてダイレクトに生かせます。当社にはさまざまな業界からの転職者がいますが、それも前職での経験を強みにできるからだと思います」(華原さん)

実は植野さんも、自動車メーカーの人事部門からコンサルタントに転身した未経験組。その経験から、「コンサルタントは未経験からでも挑戦しやすい職業。この仕事に転職できたのも、前職でOSを鍛えておいたおかげ」と語ります。

さらに、転職後に出産・育児を経験してからは、「コンサルタントの仕事は思っていたよりプライベートと両立しやすい」と感じているそうです。特にアクセンチュアは在宅勤務やフレックスタイムなどの制度が整っているため、場所や時間に縛られない柔軟な働き方が可能なのだとか。

自分の価値を発揮できる仕事に就きたい人、自分に合った働き方をしたい人にとっては、転職も選択肢のひとつになっているようです。最後に、海老原さんが次のキャリアを考えている女性に向けてエールを送ってくれました。

「社会でいちばん必要とされるのは『何とかする力』。特にコンサルタントの方々はこの力が磨かれるのでどの組織でもやっていけますし、さまざまな業種の顧客と接する時も、この力によって短期間で次々とアプリを積み重ねていけるでしょう。皆さんも次のキャリアに向けて、ぜひご自身の力を伸ばしていってください」

セミナー終了後、参加者からは「刺激と勇気をもらえた」「キャリアへの理想と現実のギャップからくるモヤモヤを吹き飛ばしてくれた」など、たくさんの感想が寄せられました。OSとアプリの話では「自分に足りない部分がわかり、打破する気持ちになれた」という人も。多くの参加者が、今後のキャリアを考えるための大事なヒントを得たようでした。

アクセンチュアでは、社員一人ひとりの活躍を支援しています。

Edit=辻村洋子 Photograph=田子芙蓉