コロナショックで株価が大幅下落したのも束の間。株価は大きく上昇しています。これから投資するのは遅すぎるのか、もし投資するならどんな銘柄が有望か。投資に詳しいファイナンシャルプランナーの深野康彦さんが、2021年の株式投資を語ります――。
ノートパソコンで財務チャートを見ている女性
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30年ぶりの高値更新

コロナショックで2020年3月には1万6300円台まで下落した日経平均株価。その後、急回復し、2020年末には2万7400円台、21年2月初旬には2万9000円台を突破し、30年ぶりの高値を更新しています。

コロナ禍でサービス業やアパレル、観光業などでは、従業員の解雇や倒産なども起きている中、どうして株価が上がっているのか、不思議に思う人もいるでしょう。バブルではないか、という見方をする人もいますが、私は、2021年の株式市場について、当面は堅調に推移すると見ています。

株価は経済の先行指標です。人々が、企業業績が回復しそう、景気がよくなりそう、と感じることができれば、株式を買う人が増え、株価は上昇しやすくなります。株価が上昇しているということは、多くの人が国内の経済を悲観してはいない、ということです。

コロナの対処の仕方がわかってきた

昨年の第1波の時には、この先、世界はどうなってしまうのか、どんな恐ろしいことが起きるのかが分からず、誰もが大きな不安に包まれていました。その不安はまだ続いていますが、第2波、第3波を経験する中で、緊急事態宣言やロックダウンで行動を制限すれば感染者が減る、密を避けることで感染をある程度予防できるなど、コロナはこういうもの、ということが、少しずつ分かってきました。ワクチンの有効性も明らかになり、日本で接種できる時期も近づいてきています。未曽有の出来事であることは間違いありませんが、対処の仕方が見えてきて、光が差してきた、というわけです。

実際、業績が悪化する企業がある一方で、業績を維持している企業、利益を増やしている企業、回復傾向の企業もあり、そのことも、株価が上がる追い風になっています。

株価上昇の2つ目の理由

もう1つ、株価に影響しているのが、日本を含め、主要国が金融緩和と財政政策という2つのアクセルを踏んでいることです。日銀では、ETFの大量買入れを行っています。ETFとは、日経平均やTOPIX(東証株価指数)などに値動きが連動する上場投資信託で、株式市場全体に投資するイメージです。巨額な資金が投資されると、相場が押し上げられます。

また世界の多くの国で金利が0%台(米国は1%台)に抑えられており、預金しても、債券を買ってもお金が増えません。そのため、多くの資金が株式市場に流入し、株価が上昇します。

先が見えてきたこと、そして金融緩和と財政政策が、株価上昇につながるエンジンになっているのです。

市況情報をみて足を止めた若い男性
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今後注視すべき、株価のマイナス材料

日経平均は今年中に3万円を回復し、多少の調整(上げ下げ)をしながら、1~2年は堅調に推移すると見ています。

株価にマイナスに働く材料は、皮肉なようですが、経済の正常化です。経済が正常化すれば、金融緩和と財政政策という、2つのエンジンが終わってしまうからです。

想定以上に景気が良くなった場合には、金融緩和が終わり、金融引き締めに舵が切られます。実際に米国ではバイデン大統領がいずれ増税に舵を切ることを表明しており、実行されれば、一時的に消費が冷え込み、株価の下げ要因になります。

米国では金融政策を決定するFOMC(連邦公開市場委員会)が年8回開催され、景況判断や政策金利の上げ下げなどが発表されます。その内容は世界の株式市場などに影響を与えますから、年8回のFOMCの会合や、日銀の金融政策決定会合には、注目したいところです。

また、中国も世界経済のけん引役であり、その景気動向も重要です。実際、中国で久しぶりにコロナによる死亡者が出た際には、日経平均が600円程度値下がりしています。

バブルが破裂する危険な兆候2つ

投資家の動向にも注目しましょう。現在の株価について、バブルなのでないのかと懸念する向きもあります。バブルは終わった時にバブルだったと気づく、とも言われますし、現段階で絶対に違うとは言い切れませんが、バブル時には、「ITバブル」など、特定の投資テーマがもてはやされ、ITに関連する銘柄ならどんな銘柄でも買われる、という現象が起きがちです。そうした状況が生まれてきたり、借金してまで株を買う人が増えてきたりした時には注意が必要です。

業界トップ層から“不人気銘柄”を探す

では、実際にどのような投資をすればいいかを考えていきましょう。

景気や業績が急回復することをV字型回復と言いますが、回復に時間がかかりそうな時にはU字型、低迷したままならL字型などと表現されます。現在の株式市場はどうかと言うと、上向きと下向きとに分かれる「K字型」の様相です。パソコンやクルマの需要増から半導体を含む製造業は特需で業績が上向きです。対して、飲食、旅行、小売などサービス業(非製造業)は、全体的には下落傾向です。まずは、成長が期待できる業種や銘柄、期待できない業種、銘柄に大きく分かれる、といったトレンドを念頭におきましょう。

コロナ禍で業績が悪化しても、8割の企業は回復すると言われています。それを踏まえれば、コロナ以降、株価が上がっていない銘柄を狙う、という戦略もあります。鉄道株や、旅行会社などはコロナ禍で業績が悪化していますが、そのまま低迷し続ける企業と、回復する企業があるはずです。業界の上位5社程度から、回復が期待できる銘柄を選ぶのもいいでしょう。

例えば、地方銀行の上位5行に入っている、ある地銀は、多くの世界的企業のメインバンクとなっており、多額の含み益を有しています。知識や発想を応用して、銘柄選びをしてみてください。

配当金を得ながら株価上昇を待つのも手

株式投資には、値上がりしたところで売って得る売却益のほかに、配当金という利益もあります。日本を代表するような金融機関や商社などでも、配当利回り(配当金額÷株価×100)が4%台、5%台となっている例があり、配当金を得ながら、株価上昇を待つ、というやり方もあります。高配当銘柄は、証券会社のサイトにあるスクリーニング機能で検索できます。

株主優待も株式投資の魅力の1つですが、業績悪化で廃止になったり、縮小されたりしている例もあります。優待券など、期限付きのものは自粛で使いきれない可能性がないかも、チェックしましょう。

投資するタイミングについては、「緊急事態宣言やロックダウンは買い」という考え方もあり、株価が下がった時が狙い目です。一度にまとまった額を投資するのではなく、少額ずつ、時期を分けて投資することで、高値づかみの失敗を避けやすくなります。時間軸を長くとって投資するのが望ましく、いったん相場が下がっても、次に上がる時まで待てるような資金で行うことが重要です。

買って売るのセットで一生モノの投資スキルを

銘柄を選ぶのが難しそうなら、ETFに投資するという方法もあります。

日経平均に値動きが連動するETFは3万円程度から投資でき、国内の225銘柄に分散投資するのと同様の成果が得られます。少額で銘柄分散ができ、個別の銘柄に投資するより値動きが抑えられます。ETFにも配当金があり、225銘柄の配当利回りは平均1.6%程度(2月初旬現在)です(実際のETFの配当金とは異なります)。

ETFには東京証券取引所に上場する全銘柄の株式で構成されるTOPIXに連動するタイプもありますが、株式市場のトレンドがK字型であることを踏まえれば、上向きの銘柄だけに投資したいところ。その意味では日経平均に連動するタイプが良さそうです。個別銘柄と同様に、少額ずつ、時期を分けて投資しましょう。

買うより売るほうが難しい

個別銘柄に投資する場合も、ETFに投資する場合も、重要なのは、「買うだけでなく、売る経験をしてみること」です。実際に投資をしてみると、もっと上がるのではないかと考えて売りそびれたり、下がると目を背けて放置してしまったりと、自分の投資の癖に気付かされます。買う、売る、をセットで経験して、「もっと早く売るべきだった」「持っていればよかった」などのトライアル&エラーを繰り返していくと、自分に合った投資の仕方が身に付き、投資の腕も上がっていきます。

投資は豊かに生きるためのたしなみであり、運用のスキルは一生モノです。リスクをとってもいい資金を、少額ずつ、銘柄も分散する。そうした投資のセオリーを守り、レッスンの意味も込めて挑戦するのがおすすめです。