収入を得ながらスキルアップする
副業をする人、考える人が増えています。その背景にあるのは、働き方改革です。残業が減ったのはいいことですが、残業代がなくなって収入が減った人もいます。また企業側も多様な働き方を支援する目的などから、副業を解禁する動きが広がりました。
さらにコロナ禍で在宅勤務が広がり、通勤時間が減った分、時間に余裕ができた人も少なくありません。加えて将来への不安も高まり、副業で収入アップを目指す人が増えたわけです。
最近は接客、営業、通訳といった副業に人気が集まっています。収入が増えることに加え、ビジネススキルがアップする、好きなことを仕事にできる、定年後も続けられる仕事を見つける、などのメリットを得るなど、副業にはさまざまな魅力があります。
会社員の副業で、社会保険料が増える働き方とは
会社員が副業した場合の社会保険料と税金はどうなるでしょうか。まずは社会保険料について見ていきましょう。
副業を行う場合、働き方などによって社会保険料が増える場合と増えない場合があります。
副業には、アルバイトやパートなど、企業などに雇用される働き方と、データ入力や商品販売など、個人として業務を請け負ったり、アフィリエイトなど、自身で収入を得たりする働き方があります。
社会保険料が増える可能性があるのは、企業などから雇用されて働くケースです。この場合、勤務する時間や企業の規模などによっては社会保険の加入対象に該当します。加入対象となるのは、以下のAあるいはBの条件を満たした場合です。
A.1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上
B.以下の要件をすべて満たす人
・週の所定労働時間が20時間以上あること
・雇用期間が1年以上見込まれること
・賃金の月額が8.8万円以上であること
・学生でないこと
・常時501人以上の企業(特定適用事業所)に勤めていること
※常時500人以下の企業でも、労使合意に基づき申出をする事業所及び地方公共団体に属する事業所で務めている場合は加入対象。
平日、フルタイムで本業の仕事をしていれば、副業は短時間になることが多いと思いますが、Bの条件に該当することは十分考えられます。副業を始める際にはしっかり確認しておきましょう。
保険料負担が増える可能性がある3つの社会保険
会社員が加入する社会保険には、健康保険、介護保険(40歳以上)、厚生年金、雇用保険、労災保険があります。このうち、労災保険以外の保険料は、労使で負担することになっており、本人が負担する保険料は給与から天引きされています。
社会保険のうち、雇用保険は本業、副業での重複加入ができないため、一般的には給与が多い方の企業でのみ、加入します。労災保険は両企業で加入しますが、保険料は全額事業主負担です。
したがって、副業をすることで本人の保険料負担が増える可能性があるのは、厚生年金と健康保険、介護保険、ということになります。
加入手続きをしないと罰則も
社会保険加入対象に該当する場合には、自身で加入の手続きを行う必要があります。
具体的には、本業の会社を管轄する年金事務所に「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出します。提出しないと罰則がありますので、気を付けましょう。用紙は日本年金機構のウェブサイトからダウンロードでき、電子申請、郵送、窓口への持参が可能です。
届け出をすると、年金事務所で本業と副業の給与を合算して社会保険料が計算されます。社会保険料は事業主と本人の折半で負担しており、本人負担分は給与などから天引きされていますが、副業をした場合の社会保険料は、本業の事業主と、副業先の事業主で、会社ごとの報酬月額の比率で案分します。
例えば本業の会社の報酬が40万円、副業先が20万円の場合、報酬合計60万円に基づいて社会保険料が計算され、保険料の3分の2を本業の会社と本人の折半、3分の1が副業先と本人の折半、となります。
年金事務所からそれぞれの会社に社会保険料の額が連絡され、各社の毎月の給料から社会保険料が天引きされます。つまり、副業が社会保険加入対象となるアルバイトやパートでは、収入が増える分、社会保険料の負担が増加する、というわけです。
保険料負担が重くなるのはいや、と思うかもしれませんが、納める保険料が多ければ将来受け取る年金が多くなるなどのメリットもあります。
社会保険料が増えない副業は、個人事業主としての副業
一方、単発で仕事を請け負ったり、自身で収入を得たりする場合はどうでしょうか。
そうした働き方は個人事業ということになります。社会保険制度では、会社と個人事業のどちらか一方でしか保険に加入することはできず、本業の会社の社会保険にのみ加入することになります。社会保険料も、会社の給料分のみで計算されます。
したがって、個人事業でどれだけ大きな所得があっても、それが副業である限り、社会保険料には影響はない、というわけです。
必要に応じて確定申告や住民税の申告を行う
税金についてもおさえておきましょう。
企業に雇用された場合の給与は「給与所得」、個人で働いたことへの報酬は「雑所得」に区分されます。給与所得、雑所得とも、年20万円を超えた場合は、確定申告をする必要があります。
また20万円以内でも、確定申告をした方がよいケースもあります。
給与が支払われる際には、勤務先が所得税を計算して源泉徴収(給与から税を天引き)しています。しかし本来は生命保険料控除などの各種控除があり、控除によって課税所得が減れば、税額が軽減されます。本業の企業では年末調整で各種控除の手続きができますが、副業先では年末調整がないため、確定申告することで納め過ぎた税金が還付されるケースがあるのです。
また雑所得については、経費を差し引くことで税が軽減されます。例えば50万円の売り上げがあっても経費が40万円かかっていれば所得は10万円で、確定申告は不要です。しかし、報酬の支払い時に源泉徴収されていれば(所得税を引かれていれば)、確定申告をすることで納めた税の一部が還付されます。50万円に対して課税されていたものが、確定申告することにより、経費を除いた10万円への課税となるからです。
確定申告をした場合は、税務署から市区町村に通知されるため、住民税の申告は不要ですが、確定申告しないケースでは、市区町村の役場に住民税の申告をする必要があります。
税制は複雑な面がありますから、不明点は税務署や役場、勤務先などに相談するといいでしょう。
キャリアアップにつながるような副業ができれば理想的。ただし、忙しくなりすぎて、心身の健康を損なうことがないよう、気を付けてくださいね。