お金目的のお手伝いにならないためのコツ
お小遣いを報酬制にしてもいいか――。そんな質問を受けることは少なくありません。報酬制とは、「お手伝いをしたら○円」と条件を決めて、お小遣いを渡す方法です。
何もしなくても、毎月決まった金額がもらえるお小遣いは、労働の対価という世の中の仕組みとは違います。何もせずにお金をあげるのは、不労所得のようなものです社会に出ると、不労所得などほとんどありません。その意味で、お小遣いを報酬制にして、働くことの大切さを子どものときから実感させるのは、いいことだと思います。
しかし、導入に失敗すると逆効果にもなりかねませんので、慎重に考える必要があります。
たとえば、お手伝いを報酬の条件にすると、お手伝いがお金目的になってしまい、人の役に立つ喜びが薄れてしまうでしょう。お手伝いを条件にする場合には、「お手伝いをすることは家族の一員として当たり前」であることを教えることが重要ですし、お手伝いをしてくれたときには「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えることを忘れてはいけません。
わが家でも以前、報酬制のお小遣いを取り入れたことがあります。お風呂掃除をしてくれた日は、カレンダーに丸をつけておき、1カ月に一度、清算する形にしました。固定のお小遣い500円にお風呂掃除の分を加えて渡していました。
このとき、子どもには、「家の手伝いをするのは当たり前だけれど、お風呂掃除だけは仕事とみなす」ことを明確に伝えました。その後、子どもが中学生になり部活が忙しくなったためやめましたが、仕事を継続する大変さは伝わったとうまくいったと思っています。
テストの点数とお小遣いを連動させるのは正解か
お小遣いと成績を連動させるケースもあります。「テストで○点以上とったら、お小遣いを渡す」ようなパターンです。成績を上げる点では、一時的に効果があるかもしれませんが、お手伝いと同様、勉強をする目的がお金になってしまいます。報酬がなければ頑張れなくなる恐れがあります。
小学校の先生と話をしたときに、こんなことを聞きました。生徒から「テストの点数を200点満点にしてほしい」と言われたそうです。理由を聞いてみると、その生徒の家庭ではテストで80点を取るとお小遣いを160円もらえることになっていたそうです。100点なら200円です。テストが200満点になれば、お小遣いも400円もらえると考えたのでしょう。
冗談半分の会話だったかもしれませんが、子どもは素直なだけに、考え方の基準がお小遣いの金額になってしまう可能性があります。
勉強したくないから「お金もいらない」と考える子どもも
また、いったん成績とお小遣いを連動させてしまうと、いつやめればいいかも難しくなってしまいます。小学生であれば、100円程度でも喜ぶでしょうが、中高生になるとそうはいきません。金額が膨れ上がってしまい、その段階で報酬制をやめてしまえば、勉強をする意欲を失ってしまうかもしれません。
なかには「勉強したくないから、お金もいらない」「たくさんお金が貯まったから、塾には行きたくない」と言い出す子どももいます。
ご両親からすれば、お金の管理がしっかりできる子どもに育ってほしい、世の中の仕組みを知ってほしいなどの気持ちを込めているのでしょうが、意外に失敗してしまうケースが多いのです。
スポーツの成績とお小遣いを連動させる弊害とは
スポーツの成績とお小遣いを連動させるのも注意が必要です。子どもが野球やサッカーをしている家庭では、「試合で得点したらお小遣いを渡す」報酬制を取り入れるケースがあります。とくに父親が熱心なケースが多いようです。
この場合、デメリットもあります。たとえば、サッカーなどではチームワークで得点を目指すのが普通です。しかし、お小遣い欲しさに、自分勝手なプレーになってしまいがちです。チームメートにはパスをせず、自分がゴールすることばかり考えてしまうのです。
子どもにすれば、自分がゴールすることで父親が喜んでくれますし、お小遣いも手に入るのですから、モチベーションは上がるでしょう。しかし、チームメートとの関係は悪くなってしまいます。
教育関係者には報酬制のお小遣いを否定する人が少なくありません。「目の前にニンジンをぶら下げて走らせるのはよくない」との考え方です。もちろん、それも一つの考え方ですが、報酬制もデメリットを克服して導入できると、家庭内で働く大切さを実感できます。絶対的な正解はありませんから、ご両親がよく考えて失敗しないように取り入れるといいでしょう。
お小遣いはいつから渡すのがベストか
お小遣いはいつから渡すのがいいか、との質問もよく受けます。一般的には小学校3、4年生あるいは中学に入学したのを機に渡す家庭が多いようです。塾に通うようになり、1人で行動したり、友達同士で出かけたりするようになったことをきっかけにお小遣いを渡すケースも少なくありません。
早くからお小遣いを渡したからといって害があるわけではありません。小学校1、2年生からでも構わないでしょう。
子どもに欲しいものがありそうなら、お小遣いを決めて、その中で管理させるのも効果的です。その際には、お小遣いは何に使うのか、おおよそ親子で決めておくのがお勧めです。友達と遊ぶときに使うのか、文具もお小遣いで買うのか、などを相談しておくのです。
いままで通り、必要なものには、すべて親がお金を出しているにもかかわらず、お小遣いを渡しても意味がありません。子どもに任せるモノを決めて、そのために必要な金額に少しプラスアルファする形で金額を決めましょう。
そして、一部余った分は貯めていく習慣をつけるのがいいでしょう。お金を貯めることの大切さを学べるのもお小遣いのいいところでです。ただ、「貯めることが美徳」ではないことを伝えることも大切です。
お金を貯めておくと、まとまった金額になり、欲しいものが買える、やりたいことができる、そのことを実感することが大事です。その意味では、最終的にどう使うか、目的を決めて貯蓄するのがいいのではないでしょうか。