子どもたちが楽しみにしているお年玉ですが、コロナ禍で帰省もままならず、祖父母から受け取るのは難しそうです。今年のお年玉はどう受け取るのがいいか、お年玉をきっかけに子どもに金銭教育をするにはどんな方法があるか、キッズ・マネー・ステーション代表の八木陽子さんに解説してもらいました――。
正月にお年玉をもらう日本の子供たち
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現金書留やプリペイドカードでもらう方法も

コロナ禍で「今年は帰省を控えよう」と考えている人も多いでしょう。そこで悩ましいのは、お年玉です。子どもたちは、年に一度のお年玉を楽しみにしているはずです。帰省しなければ、祖父母や親せきから受け取ることができなくなってします。

祖父母の場合は、地元のおいしいものを送ってくれるときに、孫へのお年玉を忍ばせてくるかもしれませんが、宅配便で現金を送ることは禁止されていますので、現金書留やプリペイドカードなどでもらうのがいいかもしれません。

甥や姪に渡す場合には、事前に親同士でおおよその金額や送り方を相談しておくといいでしょう。

紙幣や硬貨の種類を知らない子どもが急増している

子どもがお年玉を受け取る時期は、親子でお金について考えるチャンスです。とくに、今回の年末年始は、家族でゆっくり過ごす家庭が多いでしょう。日ごろは学校の勉強で忙しく、お金のことを話す機会もありませんので、ぜひ、この機会を利用してほしいですね。

とくにいま、金銭教育の重要性は増しています。それは、コロナ禍でキャッシュレス決済が一気に増えているからです。小さなお子さんを持つ保護者の方の中には、ほとんど現金を使わなくなっている人もいます。

その結果、子どもたちが現金を目にする機会が減り、紙幣や硬貨にどんな種類があるか、よくわからない子どもが増えています。

「アマゾンで注文すればタダ」と勘違いする子どもたち

現金を目にしなくなると、お金がどこから来ているのかもわからなくなります。親が仕事をして、給与が口座に振り込まれ、そのお金を引き出して買い物をする。その流れが以前にも増して見えなくなっているのです。

こんなことがありました。ある人が小さな子どもを連れて、買い物に行きました。そのときは、現金で決済しましたが、家に帰ってから子どもがこう言ったそうです。

「ママ、お店で買わない方がいいよ。アマゾンならお金がいらないんだから」

母親がネットでポチっと注文する姿からは、お金を支払っていることがわからなかったのでしょう。生体認証や顔認証が普及してくると、店舗で買い物をしても決済したことに気づかないでしょう。子どもは支払いをせずに欲しいものを持ち帰ってもいいと、考えてしまうかもしれません。それだけ決済の方法が変わっているのです。

忙しい母親はかまってほしい子供がそばにいてもスマホを操作し、ノートパソコンも使用している
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電子マネーではお金を稼ぐ大変さは伝わらない

キャッシュレスが進んだことで、お金を稼ぐことの大変さもわかりにくくなっています。お子さんが塾や習い事などに通うようになると、首都圏ではSuicaやPASMOなどの電子マネーを持たせることも多くなるでしょう。

電子マネーで支払いをすると、子どもにはお金が減っている感覚がありません。「欲しいものがあったらカードを出せばいい」という感覚だけです。自分の子どもが塾帰りに「友達みんなに肉まんをおごっていた」などという話も聞きます。

父親や母親が一生懸命に働いて得たお金が、電子マネーに形を変えて入っているから買い物ができることが理解できません。幸い、いまはまだ現金とキャッシュレスを併用できますから、お年玉の一部を電子マネーに入金してみるなどの体験も必要かもしれません。

お年玉を親が預かるときの注意点とは

また、子どもが受け取ったお年玉を親が預かるケースは少なくありませんが、その場合には注意が必要です。親にしてみれば、子どもの将来のために、どう貯めておけばいいか考えながら預かっているのですが、子どもにはそれが伝わっていないことが多いのです。

子ども向けにお金の講座を開いた際に、お年玉について聞いてみると「親にとられた」という子どもが少なくありません。子どもからお年玉を預かるときには、「将来のために銀行に預けておくから」などと、具体的に説明をしておいたほうがいいでしょう。

子どもが小学校高学年以上なら、子ども名義の銀行口座をつくってお年玉を入金できるようにするのもいいと思います。学校が冬休みに入ったら、銀行の窓口に行って一緒に口座をつくってはどうでしょうか。ただ、メガバンクには、紙の通帳を有料化する動きがありますから、ネット銀行でもいいでしょう。

QRコード決済と口座をひも付けてお金の流れを理解させる

加えて、QRコード決済には年齢制限がない会社もありますから、銀行口座を開設しておけば、QRコード決済とひも付けて、ゆくゆくは子ども自身が利用できます。15歳以上であれば、デビットカードをつくることもできます。今後、ますます子どもたちはキャッシュレスでお金の管理をするようになるでしょう。親の口座とひも付けてしまうと、スマートフォンを落とした場合などに大変ですが、子どもの口座であれば、残高も限られますからリスクを抑えることにもなります。

お年玉を原資に投信積立で投資を学ぶ

最近は「投資教育をしたい」との要望も聞くようになりました。お年玉をきっかけに子どもに投資を教えるのもいいでしょう。投資信託であれば、千円から購入できる会社もありますし、積み立ても可能です。わが家でも子どもが小学5年生くらいになったとき、お正月に話をして、お年玉を原資に毎月3000円、年間で3万6000円の投信積立を設定しました。

コモンズ投信の「こどもトラスト」やセゾン投信の「こども口座」など、親子でお金や経済のことを学ぶことを目的にした口座もありますから、検討してみるといいでしょう。

投資商品は価格が上がったり下がったりしますので、慣れるには時間がかかります。しかし、きちんと商品を選んだうえで「長期・積立・分散」を実行できれば、お金が増える経験ができるはずです。それが重要です。最近は確定拠出年金を取り入れている企業が増えましたが、定期預金でほったらかしにしている人も少なくありません。それは、投資でお金を増やした経験がないからだと思います。大人になってから、しっかり資産形成するためにも子どもの投資教育は欠かせません。

日ごろは忙しくゆっくり考える時間はなかなかないでしょうから、年末年始に実践してみるといいでしょう。