実際に株を買ってみたい。「でも銘柄はどうやって選んだらいいの?」「収益性はそんなにないともいわれているけれど」。そんな疑問を解決すべく、投資のプロに、失敗しないESG投資の極意とオススメ銘柄を聞いた。

世界の大きな資本がESG銘柄に流入している

コロナウイルスと金融の概念
※写真はイメージです(写真=iStock.com/4X-image)

ESG関連の銘柄は現在世界の多くの投資家の注目を集めています。厚生年金などの運用をするGPIFもESG銘柄や債券への投資比率を高めています。GPIFは160兆円の大きな資本を持つ機関投資家です。株価の上昇を捉えるには、自分が注目している銘柄をほかの投資家が買うかという点も重要なので、機関投資家の巨大な資金がESG銘柄に流入していることは大きな魅力です。今回はオススメ銘柄を3つのポイントで選定しました。

ESG指数への組み入れがありROEで収益性もチェック

1つ目は、ESG銘柄をどのように選ぶかですが、一般の人が個別企業のESGへの取り組みを評価するのは難しく、投資初心者は、大手機関が設定した代表的なESG指数に組み入れられているかどうかを参考にするのが無難です。

英国のFTSE インターナショナル社の「FTSE4Good Index Series」「FTSEBlossom Japan Index」、米国のモルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル社の「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」などが有名です。今回はGPIFも参考にしている「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」の銘柄を対象にしました。

2つ目のポイントは収益性です。ESG銘柄は、環境、社会、ガバナンスに配慮する分、事業コストもかかっていることが多く、必ずしも株式投資で最重要である収益の伸び、成長性が高い銘柄ばかりではありません。そこで、稼ぐ力の大きさをROEで見ます。

ROEは自己資本利益率(Returnon Equity)の略で、自己資本(純資産)に対し、どれだけの利益が生み出されたのかを示します。企業が持っているお金を使い、事業活動をしてどれくらいもうけたかを表しているのです。今回はROE8%以上の銘柄に絞りました。

時価総額が大きく倒産リスクが低いもの

3つ目のポイントは、時価総額が一定額以上のものを選ぶことです。時価総額は株価×発行済株式数で表されます。時価総額が大きい企業は多くの投資家が成長を期待して投資しているということになります。株価の変動リスクが小さく、比較的安定しているため、投資初心者に向いています。ここでは、時価総額が3000億円以上の銘柄を選びました。

以上が選定方法ですが、買い方、持ち方についてもポイントが2つあります。まず、買う時期ですが、投資初心者には「時間分散投資」をおすすめします。100万円を四半期ごと、4回に分けるというように、機械的に日を決めて、少しずつ買っていくのです。

最安値では買えませんが、一度に全額投資して、高値づかみする失敗は防げます。長期に分散して買うことで、購入単価は平均されるので、急な価格変動があっても慌てる必要はありません。天才投資家も、すべて最安値で買い、最高値で売り抜けることなどできません。

窪田さんのESG投資必勝5カ条

また株式投資は、基本的には購入時よりも値上がりしたときに売って、「利益確定」をして収益を得る(これをキャピタルゲインといいます)ことがひとつの大きな目的ですが、ESG銘柄は、短期の値動きに惑わされず、最低1年以上は持ち続けてください。ここで選定した銘柄は急に何倍にもなったりはしませんが、値動きは小幅でも、長期で成長が見込めるものばかりです。1年持ってみて、どのくらい上がっているのか確認して、売るか、持ち続けるかを決めればいいのです。

キャピタルゲインだけでなくインカムゲインも魅力的

3つのポイントで銘柄を絞り、その中からさらにピックアップしたものは以下になります。今後も長期的な成長が見込める通信系からNTTドコモとKDDI。NTTドコモの親会社で、ドコモの株を64%持つ日本電信電話(NTT)も条件を満たし、かつ、ドコモの恩恵を受けるものとして、おすすめできます。

また製造業では、グローバルでも知名度の高い日本企業の最大手、自動運転やMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス、交通機関をIoTで結びつける次世代の交通サービス)などで注目を浴びるトヨタ自動車と、世界シェア1位のタイヤメーカー、ブリヂストンです。

コロナ禍でますます関心が高まるヘルスケア分野ではオムロン。日用品を幅広く扱うトイレタリーの雄であり、化学品事業もある花王。

小売り系では、傘下に、日本一のコンビニチェーンであるセブン-イレブン、百貨店のそごう・西武、スーパーマーケットのイトーヨーカドー、外食のデニーズ、金融のセブン銀行を抱える、多角経営のセブン&アイ・ホールディングス。ユニークな経営で知られ、百貨店でありながらカード事業で収益を上げる丸井グループ。

食品系では、ビール、飲料、健康食品と幅広く事業展開をしているアサヒグループホールディングスです。

それぞれ成長分野の事業を持っており、財務が安定しています。事業のリスク分散がなされていたり、コロナ禍でも大きく事業が毀損きそんすることがなかったりした銘柄です。

どの銘柄も配当を実施しているため、仮に一時的に株価が下がっても、「配当がある」(配当収入のことをインカムゲインといいます)点も安心です。新興企業のように、一晩で10倍になったり大幅下落したりせず、需要が安定している「ディフェンシブ銘柄」も多く含まれています。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、株価は一時的に大幅に下がりましたが、売られすぎた反動もあり、元の水準に戻しています。ただ、実体経済の回復はまだまだなので、世界各国の景気刺激策により、株価はこの先さらに値上がりが期待できる銘柄も多い状況です。

ESG投資の盛り上がりとコロナ禍というタイミングは、優良で安定した株に投資できるよい機会だと思います。