「日本のキャリア女性は、世界で一番睡眠時間が短いと言っても過言ではありません」。そんなショッキングな事実を明かしてくれたのは、世界一の睡眠研究で知られるスタンフォード大学睡眠生体リズム研究所で所長を務める西野精治先生だ。「十分寝ているのに、日中眠くなる」「寝起きがだるい」。眠りに関する慢性的な悩みを抱えている人は意外と多い。そこで西野先生に現代女性が抱える睡眠トラブルや対処法などを伺った。
西野精治(にしの・せいじ)さん
スタンフォード大学医学部精神科教授、同大学睡眠生態リズム研究所所長。株式会社ブレンインスリーブ最高経営責任者兼最高医学責任者。睡眠・覚醒のメカニズムを分子・遺伝子レベルから個体レベルまでの幅広い視野で研究。著書に『スタンフォード式最高の睡眠』(サンマーク出版)、「スタンフォード式お金と人材が集まる仕事術」(文藝春秋)など。

「ある調査では、フランス人の平均睡眠時間は8.7時間、アメリカ人は7.5時間。対して日本人は6.5時間で、6時間未満の人も40%いると言われています。そのほかの調査でも日本人は世界一睡眠時間が少ないと報告されています。また、欧米では女性の方が10~20分ほど睡眠時間が長い傾向にあるのですが、日本人は逆。つまり日本人女性は世界一睡眠時間が短いのです」

西野先生は睡眠不足を『睡眠負債』と名付けている。「今日はちょっと寝不足」という負債が積もると債務超過になり、返済不能となる。つまり簡単に解決できないほど深刻な状況に陥ってしまうということだ。

「普段十分な睡眠をとっている人なら、1~2日寝不足になってもすぐにリカバリーできます。けれども慢性的に睡眠不足の状態の人は、長期的な視野で睡眠を改善していく必要があるのです」

時間だけではない。女性は40歳を過ぎるとホルモンバランスの関係で睡眠の質まで下がるというのだ。

「近年、性ホルモンやその代謝物が睡眠に影響を与えることがわかってきました。女性は月経、妊娠、出産、更年期などで、エストロゲンをはじめとする性ホルモンの分泌量が大きく変動します。通常、就寝中は、深部体温を下げるため、体は熱を放散します。ただ女性は月経時は低温期に、排卵時は高温期になるため、深部体温がうまく下がらないことがあるのです」

つまり、1ヶ月の中で、睡眠の質にばらつきが出やすいということだ。

睡眠不足が引き起こすさまざまな疾患リスク

では睡眠不足や質が悪くなると、どんな影響が現れるのか。睡眠には記憶の整理や定着、嫌な記憶を除去する効果がある。

「なかでも大事な機能として、脳の老廃物を除去するシステムがあります。脳には体と違って老廃物を流すリンパ節はありません。その代わり、脳室内にある脳脊髄液が脳の老廃物を排出しています。そして、この脳脊髄液は日中に比べ、睡眠中は4~10倍活性化されることがわかっています。脳の老廃物が溜まると、アルツハイマーなどの危険因子になる可能性があるため、脳のデトックスにおいて睡眠は極めて重要なのです」

また、短時間睡眠の人ほどBMI値が高くなる傾向があるという。

「睡眠不足になるとインスリンの分泌や反応が悪くなり、血糖値が高くなります。さらに食べ過ぎを抑制するレプチンや、食欲を増すグレリンというホルモンが分泌されるため、太りやすくなります。これは男性よりも女性の方が顕著に現れます」

他にも不適切な睡眠は、新陳代謝や免疫、肌の保水率が悪くなるなど、美容やアンチエイジングにも大きく影響することがわかっている。想像以上に体にとって睡眠は大切なのだ。

睡眠不足の解消には分散睡眠も効果的

では、よい眠りを得るためにはどうしたらいいのだろうか。

「一番大事なのは睡眠時間です。個人差があって、短時間の睡眠でも大丈夫な人もいるので一概には言えませんが、ショートスリーパー以外の方は6時間は確保してほしいですね」

寝不足の時は昼寝も有効だ。一般的には15分以内の仮眠が理想と言われているが、西野先生は1時間までなら寝てもいいという。

「昔と違い、今は子供も大人も圧倒的に睡眠時間が足りていません。そのため、昼寝によるデメリットよりもメリットの方が大きい。ある調査で、認知症の方とそのご家族に、昼寝の習慣についてヒアリングしたものがあります。その結果、昼寝を全くしない人に比べて、毎日30分未満の昼寝をしている人は、認知症発症率が約1/7に、30分~1時間取る人は約半分になることがわかりました。逆に1時間以上寝る人は、認知症発症率は約2倍になるということもわかりました。長時間の仮眠は、睡眠惰性で起きたときに頭がぼーっとするため、パフォーマンスも下がるという悪影響もありますので。昼寝は1時間以内に収めるといいでしょう」

どうしても睡眠時間が確保できないと言うときは、せめて質を高めることを心がけたい。その鍵となるのは、眠りについて最初の90分だ。

睡眠には2種類の状態がある。体は眠っているが、脳は活動している『レム睡眠』と、脳も体も眠っている『ノンレム睡眠』。入眠して最初の90分間は、最も深いノンレム睡眠がやってきて、続いてレム睡眠が訪れる。朝方になるとノンレム睡眠は浅く短く、レム睡眠の時間が長くなり、自然と目覚めが訪れる。これが睡眠の正しいリズムだ。睡眠の質を左右するのは、最初の90分のノンレム睡眠。このときにより深く眠ることができれば、睡眠の質は上がり、睡眠の重要な機能は確保できる。

睡眠は「ノンレム」と「レム」の繰り返し

引用:『スタンフォード式最高の睡眠』(サンマーク出版)

脳と体温のスムーズな切り替えが良質な睡眠へと導く

最初の90分を深く眠るためには、以下の2つのスイッチの切り替えを意識的に行ってほしい。

1.脳のスイッチ

寝る直前までスマホやパソコンでメールチェックやウエブ検索をしていないだろうか。

「ブルーライトが良くないと言われますが、それよりも頭を使って脳を興奮させていることの方が問題です。仕事が忙しくて興奮状態だったり、考えごとや心配ごとが頭から離れないままベッドに入っていないでしょうか。過緊張や過覚醒の状態だと、脳も興奮していて、スムーズに睡眠に入ることができません。音楽を聞いたり、気持ちが落ち着く本などを読んで、思考をオフにして、リラックスした状態になりましょう」

2.体温のスイッチ

前出の通り、眠気は深部体温を下げるために体が熱を放出したときに訪れる。これを妨げず、促してあげるのが質の良い睡眠につながる。

「深部体温」と「皮膚温度」の差が縮まると眠くなる

引用:『スタンフォード式最高の睡眠』(サンマーク出版)

スムーズに体温を下げる方法として、よく挙がるのが半身浴。ただし、入り方には注意が必要だと西野先生は言う。

「40℃のお湯に15分浸かると、深部体温は0.5~0.6度ほど上がります。体はこれを下げようとして、熱を放出するのですが、入浴前の状態まで体温が戻るまで約90分かかるのです。このタイミングでベッドに入れば深い睡眠が訪れますが、体温が下がらないままベッドに入ってしまうと、逆に寝つきが悪くなるのです」

深部体温は「上げ下げ」が鍵!

引用:『スタンフォード式最高の睡眠』(サンマーク出版)

入浴して寝るまでに90分も時間を取れないという場合は、40℃よりもぬるいお湯にしたり、入浴時間を短くする、シャワーで済ませるなどした方が睡眠の質は良くなる。

「女性に多いのが冷え性だから靴下を履いて寝るという方。靴下を履くと足先から熱を放散できなくなるため、避けた方がいいでしょう。冷え性の方は靴下で足を温め、寝る直前に脱ぐと熱放散をしやすくなるのでおすすめです」

もうひとつ体温を左右しているのが、サーカディアンリズムと呼ばれる体内時計。サーカディアンリズムは25時間周期のため、何もしないとどんどん夜型の生活になっていく。体を24時間周期にリセットするために、欠かせないのが朝日。朝、太陽の光浴びてから活動をスタートすると、夕方リラックス状態に入りやすくなるという。

「逆に最初に陽の光を浴びるのが午後や夕方になると、サーカディアンリズムは後ろにずれていくことがわかっています。良質な睡眠は朝の過ごし方から始まっているのです」

体の熱を放散できる寝具が睡眠の質を決定づける

熱放散をスムーズにするためには、寝具選びも見直すべきだろう。特に西野先生が重視しているのが頭。頭寒足熱と言われるように、頭や脳の温度を下げることは質の良い睡眠につながりやすい。ところが既存の枕では、熱がこもりやすく、脳の温度が下がりにくいのだ。そこでその問題を解決する枕を西野先生自らが考案した。それが、全体がコイル構造になった『ブレインスリーブピロー』だ。春雨のように全体に空気を内包した構造により通気性を確保。空気に触れる面が多いため、どんな姿勢で寝ても、頭の熱が逃げやすいようになっている。

『ブレインスリーブピロー+オーガニックコットンカバー』3万3550円(税込)/ブレインスリーブ

素材はポリエチレンを使用。縦は3層、横は5層と場所によって硬さが異なっており、寝返りがうちやすい構造となっている。さらに、1週間ほど使い続けると、頭の形になじんできて、まるでオーダーメイドのようなフィット感になる。枕が合わず、寝起きに肩が凝るなどの心配も無用だ。ポリエチレン素材のため、水洗いが可能で、ダニが繁殖しづらく、清潔に保てるなど、細部にまでこだわっている。

睡眠に悩んでいる人は、脳と体温、そして睡眠環境を見直してみてはどうだろう。

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Edit & Text=林田順子 撮影=田子芙蓉