2020年は新型コロナウイルスの感染拡大に翻弄される1年になりました。経済評論家の加谷珪一さんは「消費低迷はまだ続くものの、投資や副業にはチャンスがある」と言います。その注目分野とは。
2021年度財務目標コンセプト
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感染の再拡大で再び消費が落ち込む可能性が高い

冬に入って新型コロナウイルスの感染が再拡大したことで、仕事や生活に不安を抱えている人も多いと思います。2021年の経済はどのように推移し、私たちはどう対応すればよいのでしょうか。

2020年の前半は、これまで経験したことのない出来事が続き、多くの人が職場や私生活において対応を余儀なくされました。外食産業や観光産業など影響が大きかった業界で働いている人はもちろん、コロナとは直接関係ない業界であっても、売上高の縮小などから、ボーナス削減や減給に直面しているという人も少なくないでしょう。

年後半は、コロナにも多少慣れたせいか、大きな混乱こそ発生しませんでしたが、経済状況は決して良くなっていません。2020年7~9月期のGDP(国内総生産)は、物価の影響を考慮した実質(季節調整済み)でプラス5.0%、年率換算でプラス21.4%となりました。

4~9月期は8.2%のマイナスでしたから、7~9月期については大幅なプラス成長ということになります。しかしながら、4~6月期に8.2%落ち込んだ後、そこから5.0%戻しただけですから、1~3月期を基準にすればまだ3.6%のマイナス状態が続いています。

クレジットカード大手のJCBとビッグデータ解析会社のナウキャストの調査によると、10月時点でのクレジットカード消費動向は、コロナ感染前の1月後半との比較で5.7%のマイナスとなっています。

約30%の下落だった4月と比較するとかなり良くなっていますが、9月以降はGoToキャンペーンの効果が大きく、8月までは20%近くのマイナスが続いていました。この冬の感染拡大で、GoToは見直しが進められていますから、再び消費が下落する可能性は否定できません。

支出のカットでコロナ不況を乗り切る覚悟を

ここで気になってくるのが2021年3月の年度末です。日本企業の多くは3月決算ですから、4月を基準にすると、コロナ後に本格的な決算を迎えるのは初めてということになります。日本の全企業の業績を平均すると、売上高が2割落ちると営業利益がほぼ全額吹き飛んでしまいます。2021年3月期決算では多くの企業が赤字に転落し、減給やボーナスカットなどが行われる可能性が高いでしょう。

コロナの影響を受けていない業種や公務員などを除き、基本的には来年以降の賃金は下がる要素ばかりですから、昇給を前提にした生活設計は一旦、見直す必要があると思います。2021年は大きな買い物は控えた方がよいですし、住宅ローンなど一定額の支出を余儀なくされている人は、他の支出を切り詰める努力が求められます。

仮にワクチン接種がうまくいかなかった場合、あと2年程度、こうした事態が続く可能性がありますが、その間は何とか耐え凌ぐしかありません。

株式市場では再生エネルギー関連に注目

実体経済は厳しい状況なのですが、どういうわけか株式市場は活況を呈しており、米国のダウ平均株価は一時、3万ドルの大台に乗せ、史上最高値を記録しました。日本の株式市場も米国に連動する形で上昇が続いており、一部の論者は余剰のマネーが株に殺到しバブルになっていると批判しています。確かにそうした面があるのは事実ですが、筆者は必ずしもそれだけが株高の原因ではないと考えます。

このところの株高を主導してきたのは、テスラやマイクロソフト、グーグルといったIT企業であり、これらは、非接触で経済を回すというポストコロナ社会を象徴する企業です。また、バイデン次期大統領は、コロナで落ち込んだ経済を復活させるため、再生可能エネなどの分野に巨額投資を行う方針を明らかにしています。

いまは投資のチャンス! その理由とは

また、大型投資を実現するためには国債増発が必須ですから、財政悪化懸念からインフレが意識されており、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)も、緩和策の拡大によるインフレについて、ある程度、容認する構えを見せています。つまり、物価が上がる可能性が高いということになりますから、株や不動産が買われる可能性が高いのです(金価格がこのところ上昇しているのも同じ理由です)。

つまり、今の株高はポストコロナ社会への期待と、物価高の予想を反映したものですから、一概にバブルだと切り捨てるわけにはいかないというのが筆者の見解です。

一部の銘柄が高騰しているのは事実ですから、市場がいったん調整に入る可能性もいていできませんが、場合によっては安く買えるチャンスと考えることもできるでしょう。

実際、そのように捉えている人は多く、若い世代を中心にネット証券の新規口座を開設する人が増えています。いまは経済的に厳しく、投資どころではないという人も多いと思いますが、幸運にも、当面の経済状況が大きく変わっていないという人は、あくまでも長期的なスタンスであることが前提ですが、投資を検討してみてもよいでしょう。

パソコンの前で両腕を上げる女性
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米国では例年の2倍に達する起業ブームに

また、副業を検討している人にも、ある意味ではチャンスが到来しています。

いわゆる巣ごもり消費が増えたことで、ネット通販が大きく伸びていますし、飲食店もデリバリー化が進むなど、新規事業の増加が顕著です。

すでに米国では、新規事業が例年の2倍近くの水準となっており、ある種の起業ブームが発生しています。日本社会は米国と比較すると変化は緩やかですが、米国で起こったことは、必ず日本にも波及します。2021年はコロナ禍が続いても、間違いなく新しいビジネスが増えますから、当然のことながら新しい人材へのニーズも高まります。ある程度のスキルを持った人に限定されますが、副業を始めるにはよいタイミングとなるかもしれません。

アフターコロナでもマイホームを買うなら、やはり都心

コロナによって在宅勤務が増えたことから、郊外や地方の広い家に転居を希望する人が増えていますが、現実には都市部から地方や郊外への大きな人の移動は発生していません。確かに一時的に東京からの転出は増えましたが、コロナで仕事を失った人が実家に帰ったことが原因と考えられており、地方への分散化が起こっていると解釈するのは難しいでしょう。

コロナで供給が少なくなったことから、都市部のマンションはむしろ価格が上昇しており、大きく値崩れする兆候は今のところ見られません。

夫婦共働きで、どちらかが派遣社員の場合、どこが勤務地になるか分かりませんから、中心部から遠いエリアへの転居にはリスクが伴います。また今後は人口の急激な減少に伴い、急ピッチで地方や郊外の商圏が消滅していきますから、やはり人口が多く、便利な場所のほうが資産価値を維持しやすいでしょう。コロナをきっかけにマイホームの取得を検討している人は、後で後悔しないよう、場所についてはより慎重に検討してください。