サントーニの伝統と革新
靴好きでなくともその名を知っているであろう、高級シューズブランドの「サントーニ」は、現会長のアンドレア・サントーニ氏により1975年イタリアのマルケ州コリドニアで創業。1990年に当時弱冠21歳の息子ジュゼッペ氏が継承し、今年で45周年を迎える。
もともとは小さな紳士靴からはじまった同ブランドは、創業当初から妥協なきクオリティと熟練した職人によるハンドメイドを徹底。社内ですべての生産工程を手がけ、伝統や品質を重視しながらも、時代を先取る革新的なデザインや技術を取り入れてきた。結果、今や世界に多数の店舗を構える名門シューズブランドの地位を獲得し、紳士靴だけではなく女性用のパンプスや、大人のための上質なスニーカーなども話題に。「まるで芸術品のようだ」と称されるオリジナルシューズの数々は、世界中の人たちを魅了してやまないが、実はサントーニが衆目され続ける理由は、その美しい靴の存在だけではない。。
人と技術をリスペクトする企業姿勢
実にサントーニは、サステナブルにも尽力しているブランドだ。同社が掲げた「SANTONI RETHINK」というサステナビリティへの具体的取り組みを示す新しいプロジェクトは、文化の向上と環境にリスペクトすることに重きを置いている。
たとえばそれは人材。450名以上の職人をかかえるサントーニでは、かけがえのない技術と知識の継承、そして高品質な製品を安定し提供し続けるために、学校をつくりシューメイキングを教えている。これはブランドの利益の確保だけではなく、文化を守り継承していく社会的責任につながっている。
同社は何よりも人的資本を強みとしており、働く環境を整えることで地域の人々の雇用を守り、経済活動を促している。マルケの人たちにとってもかけがえのない企業となっていることは間違いない。
リサイクル資材と再生エネルギーの活用も
サントーニでは、10年以上にわたりリサイクル素材と再生可能エネルギーの使用、そして廃棄の削減にも努め、資源を守ることにも徹底的に取り組んできた。
驚くべきは本社の建物に使われているガラス、鉄、アルミニウムなどの資材は90%以上が再生利用可能だということ。また、雨水を集めて再利用するシステムにより貴重な水資源をも節約。さらにはオフィス、工場、倉庫、駐車場などのすべての建物の屋根に約4000枚のソーラーパネルが設置されており、その巨大な発電所によって年間110万7500キロワットを発電、本社に太陽エネルギーが供給されているのだ。
これは業界全体が必要とする電気量のおよそ170%。サントーニはまさに製品をつくり出すというクリエイティブな目的を果たしながらも、環境に配慮するという時代を先駆けた取り組みを体現しているブランドといえよう。
革新的なスニーカーの誕生
ブランドの根底に脈々と流れているサステナブルな考え方を形にした製品といえば、なんといっても今注目が集まっているSANTONI RETHINKの新作スニーカーだろう。
アッパーに海洋プラスチックゴミからつくられた工業用布を使用したスニーカーは、裏地は再生ポリエステルを60%混合。ソールには半分以上再生ゴムを使用し、接着剤も無毒で生分解可能な水性にこだわった。
ほかにもシューレース(ひも部分)はオーガニックコットン100%に改良し、トリミングレザーも天然皮革のリサイクルとしているのだ。
美しい靴には理由がある。デザイン力や技術力はもちろんのこと、人と環境、そして未来にやさしい取り組みとたゆまぬ努力を内包しているからこそ、サントーニの靴は美しく、世界中の人を虜にする魅力にあふれているのだ。