傘は日常よく使うものでありながら、特別マナーを学ぶ機会はなく、一人ひとりの常識と気遣いに任されているのが基本です。けれど周りを見渡すと、大の大人でもできていないのが傘のマナー。叱ってもらう機会がないことだからこそ、扱い方をきちんと知って、秋の長雨が続くこのシーズンに自分も周りも気持ちよく過ごしましょう。持つとき、さすとき、閉じるとき。あなたはエレガントな振る舞いが身についていますか?
黄色いライムの壁の背景に紫色の傘
※写真はイメージです(写真=iStock.com/Galina Chetvertina)

特に注意したい! 濡れた傘の扱い方

日本ではおもに梅雨シーズンばかりがフォーカスされますが、実はこの時期も意外と多い雨の日。必然的に傘が必要となりますが、思いのほか認識不足なのが傘のマナーです。

まず気をつけたいのが、濡れた傘の扱い方。たとえばクライアントを訪問した際、先方がお出迎えをしてくれたところで、濡れた傘の水滴を落としたいがためにバサバサと振りさばきながら閉じる。これは意外とやりがちですが、乱暴な印象を与えかねないうえに、水滴が周囲に飛び散ってしまいます。傘を横に向けて閉じるのも、傘先が人に向かうので危険です。正しくは傘をゆっくりすぼめながら先を下に向け閉じること。このとき、周囲を確認するのも忘れてはならないことです。水滴を落としたい場合は、傘を閉じてから小さく静かに振るか、タオルハンカチなどでスッとまとめてふき取るといいでしょう。これは傘が傷みにくいポイントでもあります。

またたとえば電車の中で、濡れた傘を手持ちにしていると、落ちたしずくがいつの間にか隣の人の靴に落ちて……なんていうことがあります。そんなときには傘を体の正面で持ち、傘先を床につけることでうっかりを防ぐことができます。当然、ベルトで留めてまとめておくのが基本です。傘袋に入れてもいいでしょう。折りたたみ傘の場合は軽くたたんでいったん袋に収納しましょう。

傘立てを使うときなども、ベルトで留めるのを忘れずに。濡れた傘をまとめるのが憂鬱だという人は、別売りのリングを傘につけておくのもオススメ。骨の先の部分を使って手早くまとめられるので、手が濡れずに便利です。

あなたはどうしてる? 狭い道ですれ違うときの傘マナー

傘を使用しているときのマナーで案外知らないのが、道ですれ違う場合。狭い道では何もせずにすれ違うと傘同士がぶつかったりして危険です。また、直前で傘を高く持ち上げる人がいますが、それではしずくが落ち、結局濡れてしまって不快ですよね。どちらかだけが気を遣わなければならない雰囲気もなんだか残念です。

そんなときはお互いに傘を外側(相手がいるほうと反対側)にかしげて、傘が当たらないように配慮するのがベスト。水滴が落ちることもないうえに、仕草としてもとても自然でエレガントです。

傘を持って地下鉄の階段を歩いている女性
※写真はイメージです(写真=iStock.com/FangXiaNuo)

それから、女性に多いマナー違反として意外に知られていないのが、傘の中棒を肩に当てて斜めにさす行為。後ろの人の視界を遮ることにもなりますし、気づかぬうちに服やバッグがびしょ濡れになってしまいます。人や信号を待っているときなど、手持ち無沙汰でやってしまう人が多い“ナナメ持ち”ですが、無意識でいるときこそ注意が必要。普段からやらないようにクセづけておくことが大事です。

また、おしゃべりに夢中になっているとついお互いの距離が近くなって、露先から滴るしずくに無頓着になる場合も。これは自分は濡れませんが、一緒にいる相手に迷惑がかかってしまいます。雨の日こそ相手との距離感に気をつけたいものです。

傘をさすとき、持ち歩くときに気をつけたいこと

傘をさすときには、基本、閉じるときの動作を逆再生する気持ちで、周囲を確認しながら静かに開くのがいいでしょう。ひとつ気をつけるとすれば、ワンタッチで開くジャンプ傘の場合。傘の機能に任せて勢いよく開くと、とくに雨の中さしてきた傘は水滴が飛び散る可能性も。片手を軽く添えて、静かに開く心配りが必要です。

また、傘を持ち歩く日には、使用前・使用後にかかわらず、周りへの配慮が必要です。たとえば鞄と一緒に持つのは、傘の先が外側に向き、すれ違う人に当たってしまう危険性が。人とすれ違うときには、反対側にさっと持ちかえましょう。

男性に多いのは、傘を地面と平行にして持ち歩くマナー違反。それで大きく腕を振って歩いていては、傘も凶器になってしまいます。とくに駅の階段などでは要注意。ちょうど後ろの人の目の高さと同じくらいになる傘の先は、大人だけではなく小さい子どもにとっても怖いものです。

駅構内や通勤電車など、多くの人がひしめく中で傘を持ち歩く機会が多いビジネスパーソン。そのマナーを知らずしては、どんなに仕事で成果を上げたとしても、たったひとつの動作で印象が下がってしまうことがあります。細やかなことですが周りに配慮して、天候に振り回されずエレガントな所作ができるのもまた、できる大人の条件です。

2017年、傘の持ち歩き方による危険性をイラストにまとめて注意喚起したのは、haniho_kumさん。
他人から指摘されづらいことだからこそ、自らの傘の持ち方をあらため、周囲の人を危険にさらしたり、トラブルに発展させたりしないように心がけましょう。
その傘の持ち方、危険です
イラスト=©haniho_kum