「サステナブル」や「SDGs」という言葉が飛び交うずっと前から、環境や人へ配慮した取り組みを続けてきた日本生命保険相互会社、“ニッセイ”。大きく成長したSDGsの取り組みや、職員7万人が受け継ぐサステナビリティ、そして今後の展望についてリポートする。

ニッセイだからこそ実現できるSDGsの取り組み

2030年までに持続可能でよりよい世界をめざす17の目標と169のターゲットを掲げるSDGsは、いまや企業が取り組まなくてはなくてはならないことのひとつだが、一方でそれに対する具体的なアクションや意識の持ちようは、企業ごとに多様性を増している。そんな中、創業以来“人と人とのつながり”を大切にし、それをSDGsに生かしている日本生命保険相互会社の取り組みについて、CSR推進部長の宮崎まゆ子さんにお話を聞きました。

——御社のSDGsへの取り組みは多岐にわたりますが、主な活動をいくつか教えてください。

【宮崎さん】SDGsの概念が制定される前から行っている取り組みが多いのですが、古くは1924年「生活といのちを救い、人々のお役に立つ」という意味の済生利民を理念とした財団法人日本生命済生会の設立から始まり、1964年に次代を担う子どもたちの豊かな情操を育みたいという想いで、ミュージカルに無料招待するニッセイ名作劇場を開始しました。そして1992年からスタートした“ニッセイの森”の活動などが主な取り組みとして挙げられます。現在はほかにも、子育てと仕事の両立を促進する企業主導型保育所の展開や、障害者スポーツの観戦・ボランティア、フードバンクへの寄贈などがあります。

——それらの活動において、生命保険会社という特性が生かされている点はありますか?

【宮崎さん】なんといっても地域に根ざしているという点です。私たちはお客様一人ひとりに長く寄り添う生命保険という商品を取り扱う中で、信頼のおけるコミュニティを丁寧に育てることを目標としてきました。人と人が出会うことで生まれるものの大切さを知り、関係性を深めていくというその小さな積み重ねでできた関係性が、地域に密着した社会貢献活動につながっていると感じます。

——いまや全国に広がる“ニッセイの森”は、まさに地域の方々との共同作業という感じですよね。

【宮崎さん】そうなんです。この取り組みは弊社が紙を多く消費しているいち企業であったことから発足したプログラムで、紙のリサイクル活動に加え、地域の皆様と一緒に植樹活動をスタートしたのがはじまりです。1992年から植樹活動を実施し、翌年には財団法人ニッセイ緑の財団(現・公益財団法人ニッセイ緑の財団)を設立しました。現在は当社の役員・職員・OB・OGなど、約5万3000人が会員の“ニッセイの森”友の会があり、活動費用をまかなうための募金を実施したり、活動参加を促したりといった取り組みもしています。

第1回植樹活動“ニッセイ富士の森”の模様(1992年)
第1回植樹活動“ニッセイ富士の森”の模様(1992年)写真提供=日本生命

——“ニッセイの森”への取り組みは、職員にとってどのような影響がありましたか?

【宮崎さん】支社から近い場所に森があり、職員がボランティアに参加しやすい環境ということで、社内全体のSDGsへの意識も自然と高まるきっかけとなりました。約30年経過した今では当時植えた木々も大きく育ち、その木を使った樹木プレートを学校に寄贈したり、子どもたちの自然観察に役立ててもらう木のしおりを無償提供したりと、森の成長とともに私たちの活動も変化しています。

育樹活動の様子(2019年)
育樹活動の様子(2019年)写真提供=日本生命

——取り組みがスタートした当初の年間10万本を10年かけて植える計画は2002年に、そして今年はニッセイの森200カ所を達成したと伺いました。

【宮崎さん】「ニッセイ100万本の植樹活動」ですね。この計画を達成した2003年以降は、「ニッセイ未来を育む森づくり」として、植樹・育樹活動をとおして森林づくりを継続しています。また、今年7月には町の約75%が森林という北海道茅部郡の森町もりまちというところで、200カ所達成記念調印式をおこなうことができました。関係者が一堂に集まった様子はとてもなごやかな雰囲気で、この町でメモリアルな瞬間を迎えられたことをみなさまに喜んでいただけました。さらには町がニシン漁で栄えたことと、弊社の企業名を合わせて地元の方が“ニッセイにっしんの森”と名付けてくださったことも、今までの取り組みが大きく成長したのを感じて嬉しかったですね。

“ニッセイの森”マップ(2020年7月時点)
画像提供=日本生命
北海道の森町で行われた200カ所めの「ニッセイの森」記念調印式(2020年7月27日)
北海道の森町で行われた200カ所めの「ニッセイの森」記念調印式(2020年7月27日)写真提供=日本生命

職員の意識が高く保たれているその理由とは

——御社のSDGs活動がどれも長く続いていることで、サステナブルの精神が受け継がれていると感じますが、どのようにして職員の士気を高めているのでしょうか?

【宮崎さん】入社時にSDGsに関する研修があったり、役員向けに勉強会を開催したりしているのはもちろんなのですが、やはり全国に“ニッセイの森”があることが大きいのかもしれません。役員・職員・OB・OGの半数以上が自発的に募金をしていること、さらに役員・職員7万人のうち年に一度は社会貢献活動をしようといった取り組みが、2015年度の開始以降5年連続で100%の活動実施を達成しています。どこかひとごとになりがちなSDGsの取り組みですが、会社全体で森を大切にしている意識が浸透していることで、職員一人ひとりにとってとても身近なものに感じるのかもしれませんね。

——皆さんとても意識が高いですよね。その理由はなんでしょう?

【宮崎さん】生命保険の特性である「万が一のときにみんなで助け合おう」という精神と、持続可能な未来をつくるための目標であるSDGsは、考え方に共通項が多いのではないでしょうか。もちろん弊社がさまざまな取り組みを始めた当初はサステナブルやSDGsといった単語は飛び交っていませんでしたが、昨今の意識の高まりにより、さらに弊社の動きも加速したと感じています。

——SDGsの取り組みにおいて、今後の展望や目標を教えてください。

【宮崎さん】まずは、職員全体にもっと満遍なくSDGsやサステナブルについて理解してもらうことです。おしなべて意識が高い職員が多いとはいえ、やはり関わる仕事の内容によってはまだまだ知らないことも多く、それぞれの活動の中に浸透させることが大事だと感じます。さらには私たち自身が理解を深めることで、SDGsがどんな形でお客様に関心をもってもらえるのかを考える必要がありますね。そして、もしも私たちの行動を見ていただくことで、お客様の毎日が心地よく変わるアクションを広げていけたら――こんなに嬉しいことはありません。これまでのように地域社会と共生していく中で、今までの延長ではなく、イノベーションを考え、多様化するニーズに迅速にこたえていけるように。これまでよりももっとジャンプアップするために、丁寧な努力を重ねていきたいですね。

SDGsを積極的に推し進めるだけではなく、独自のネットワークを活用してそれを伝え、社会に広く貢献してゆく。社会的責任を健やかにまっとうし続けるニッセイの取り組みに、これからも注目していきたい。