初対面の人とは最初の会話で場を和ませて
私の場合、支店や支社でお世話になっている代理店の方を接待する機会が日頃から頻繁にあります。初対面の方の接待も多く、そういうときは、最初の会話で場の雰囲気を和らげることを心がけるようにしています。
例えば、「私の自宅は静岡の伊豆にあり、東京に単身赴任をしています」といったことをお話しすると相手の方が興味を持ってくださり、会話が弾みやすくなります。
普段から飲食店はよくチェックしていて、個人的に接待に使える店のリストを10軒くらいはいつもキープしています。東京・恵比寿にある1日2組限定の「mori」は、お客様ご夫妻をお招きした際に、奥様から「女性好みのお店」と、とても感激していただけました。堅苦しくない雰囲気のときは、同・六本木にある行きつけの古民家和食店「欅くろさわ」を使うことも多いですね。
接待はその後に続く関係づくりの場です。食事と会話でもてなすことで、仕事でも本音のコミュニケーションが可能になる関係を構築できるのではないかと思っています。
有意義で楽しい時間をつくる仕掛けとセンスを
時代とともに接待のあり方も変わり、今の接待は広い意味での「ビジネス上のコミュニケーションの場」といえます。
それだけに会の位置づけやスタンスを確認してから臨むようにしています。会の趣旨によってドレスコードも違いますが、プラスアルファの遊び心とセンスも大切にしたいもの。サッカー好きな方をお招きした席では、キリンが応援するサッカー日本代表のサムライブルーにちなんで青を基調とした服装でお迎えしたこともあります。
会話は、できるだけ話題を広げることを心がけます。初対面のアイスブレイクでは、天候や時事ネタは無難ですが、できれば事前の情報収集などでお相手の関心事を踏まえつつ自分らしさを出せると印象に残りますよね。そんな互いの個性が生きるような話題を用意しておくよう心がけます。
海外からのお客様も同じですね。お酒のある場は、知的好奇心を刺激する会話が飛び交うことも多いもの。そういう刺激的な会話から、新しい発想やイノベーションが生まれるかもしれません。
相手の社風に合わせた店選びや会話を心がける
接待では相手の社風を考慮して準備することが重要だと思っています。例えば、同じ中華でも、フランクな雰囲気の会社なら大皿で取り分けるスタイルで、序列を重んじるレガシーな会社には一皿ずつのコース料理など、選択が違ってきます。
会話も同じで、業種や社風によって盛り上がる話題、タブーな話題があるので、そこは気を使うようにしていますね。
また、お店選びでは、先方からのアクセスのよさも重要。電車でいらっしゃる方もいるので、乗り換えは1回までの範囲と決めて探します。
接待する側の参加メンバーが事前に会の目的意識を共有することも大切です。先方と打ち解ける時間を持つことで、ビジネスの潤滑油となるのが接待の役割。有意義な時間を過ごすためにも、チームとしてしっかり役割分担をしておくべきでしょう。私はお酒が強くないので、メンバーにお酒に詳しい人間を加えたり、店側ときめ細かな進行をやり取りする担当を決めるなどして、準備するようにしています。
驚きや新鮮さを楽しんでもらえる店選びを
私はエグゼクティブ向けのグルメサイトの運営責任者として業務しており、接待をする側、される側の経験も数多く積んできました。魅力ある接待ができる店は、味や雰囲気、空間、サービスなどの基本スペックに加えて、その店独自の語れる何かを持っていることです。
例えば、銀座にある日本料理店「六雁」は、料理に真摯に向き合う姿勢とお客への丁寧な心遣いが秀逸。カウンターキッチンと完全個室があり、最近人気のカウンター会席として利用することもできます。話題性では、2019年、東京・日比谷にオープンした「TexturA」。中華×スパニッシュの注目店で、今の東京っぽさを代表するお店です。
接待となると、どうしても無難で安心できる有名店を選びがちです。でも、心に響く新鮮さや驚きは、何よりのおもてなしだと思っています。
ホテルの支配人や旅館の女将など一流を知る方も接待するので、普段から礼儀やマナーにはかなり気をつけています。これらはチームでも共有しておいたほうがいいですね。