お金持ちのすごい備蓄スキル
新型コロナウイルスによる自粛生活から、徐々に日常を取り戻しつつある。自粛中の生活で直面し不便を感じたのが、マスクとトイレットペーパーなどの品不足ではなかっただろうか。早朝から何軒もドラッグストアを回ったり、開店前から何時間も並んでようやく入手した人も多いはずだ。
ところが、資産1億円を持つお金持ちたちは、そんな騒動に巻き込まれず、落ち着いて自粛生活を過ごした人が多いという。なぜ、そんなことが可能だったのだろうか。
その理由をファイナンシャルプランナーの藤川太さんはこう語る。
「お金持ちの人たちは、事前にある程度の量を備蓄していましたので、品薄の間は様子を見ることができたのです」
とくにマスクは、品薄になってからネット上で高値転売されるケースが増えた。それを受けて政府は、3月に国民生活安定緊急措置法を改正し、転売を禁止したほどだ。そして5月下旬には、三重県津市の男性が購入したマスクを2倍近い価格で転売したとして書類送検された。それほどマスクの入手は困難だった。
お金持ちの人たちは、品薄になる前にマスクなどを確保していたわけだが、それができたのには、普段からのある習慣が関係しているという。
常に最悪のシナリオも想定し、備えを怠らない
「お金持ちの中には、常に未来を予測しながら行動している人が多いのです。新型コロナウイルスに関しても、早い段階で感染の拡大を予測し、必要なものを購入しておいたようです」
お金持ちは、未来に対して常にいくつかのシナリオを想定し、どのシナリオが現実になっても慌てないように、備えをしているのだという。
クルーズ船のダイヤモンドプリンセス号が横浜港に入港したのは2月3日だった。その2日前に香港で下船した乗客が新型コロナウイルス感染症の陽性であることが判明したため、日本政府は横浜港での下船を認めなかった。
その後は連日のようにダイヤモンドプリンセス号の様子が報道されるようになったが、国内での感染拡大を想定する人はまだ少なく、マスク不足などは表面化していなかった。
お金持ちの人たちはこのころから、最悪シナリオとして国内での感染拡大を想定し、必要になると思われるものをある程度、備蓄しておいたということだろう。
いつでも生活レベルを落とせるのが真のお金持ち
実際に品切れが広がってからでは打つ手もなくなってしまう。スーパーマーケットに買い物に出かけたとき、長い行列ができていても、ある程度の備蓄があれば、「もう少し様子を見よう」と考えることができる。
行列に並ばざるを得ないか、少し様子を見る余裕があるかでは、ストレスの度合いは大きく変わるだろう。また、行列に並ぶことによって感染するリスクもあったわけだ。
実際に感染が拡大してからは、消費の引き締めも素早かったという。
「家計の引き締めをされている方が多いですね。とはいえ、やみくもに出費を抑えるわけではありません。抑えるべきものとそうでないものを明確に切り分けています。真っ先に減らしたのは外食費(外食ができなかったので当然ではありますが……)。何かあれば、いつでも生活レベルを落とせるのが真のお金持ちです。逆に家族の夢の実現に影響を及ぼす教育費などの節約は考えません」
お金持ちの心配はストックよりフロー
お金持ちの女性の中には、起業して会社を経営している人も多い。資産(ストック)はある程度持っているが、この局面において、収入(フロー)が確保できるかは不安な面がある。
「従業員には休業や退職してもらいい、不足する分を家族で補うなど、行動も早かったですね」
実は「高収入=お金持ち」ではない。年収が1000万円を超えていても、ほとんど貯蓄がない世帯も少なくないのだ。
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和元年)」によると、世帯年収1000万円以上1200万円未満の世帯で金融資産の保有額が100万円未満の割合は13.7%に上る。世帯年収が1000万円以上でも7世帯に1世帯がほとんど貯蓄できていないことになる。
お金持ちは巣ごもり生活が苦にならない
こうした世帯の多くは、年収の上昇よりもぜいたくな生活が先行してしまっている。最初から広い家に住んだり、高級車に乗ったり。いったん生活のレベルを上げると、なかなか落とすことができない。一方、資産1億円をつくった女性には、そもそもぜいたくな暮らしを求めていない人が多い。
「常に身の丈に合った生活を心がけているので、緊急事態宣言で巣ごもり生活を余儀なくされても、それを楽しむ余裕があるんです。彼女たちは全然困っていません。むしろ家族と一緒に過ごす時間が長くなり、家族の絆が強まったことに喜びを感じている人も多いようです」
この生活はアフターコロナにも影響する。
お金持ちはリベンジ消費をしない
自粛生活で旅行や外食ができなくなり、ストレスをためていた人は、外出ができるようになったとき、反動で消費を急拡大させる可能性がある。いわゆるリベンジ消費だ。
すでに米国では、その傾向が明らかになっている。米国の小売売上高は4月に前月比14.7%の大幅減となったものの、5月には同17.7%増と大幅に増えた。
「1億円を超える資産を持っている人は、こうしたリベンジ消費をすることもありません。お金を使う目的をしっかり意識しているので、いつも平常心でストレス解消のための消費をしないのです」(藤川さん)
お金持ちの女性たちは感染拡大の第2波、第3波を想定し、消費を抑えながら自宅での生活を楽しんでいるだろう。