しっかり者の姉・ちはると、やさしい弟・順平。ふたり暮らしの仲良しきょうだいがゆるっと交わす会話が「リアル」「身につまされる」と人気の『僕の姉ちゃん』シリーズ。雑誌『anan』で長く人気を博しているのも納得の金言がいっぱいで、特にちはると同世代のアラフォー女性には、目からウロコの気づきがあります。待望のシリーズ最新刊『僕の姉ちゃん的生活 明日は明日の甘いもの』について、著者の益田ミリさんにお話を聞きました。

主人公が絶対に使わない言葉

——いい意味で「身の丈」を知り「自分」軸で生きるちはる。このキャラクターに込めた想いを教えてください。

益田ミリ『僕の姉ちゃん的生活 明日は明日の甘いもの』(マガジンハウス)
益田ミリ『僕の姉ちゃん的生活 明日は明日の甘いもの』(マガジンハウス)

【益田ミリさん(以下、益田)】僕の姉ちゃん』は姉と弟の会話のみで完結している漫画です。姉である主人公・ちはるは飲み会、デートなどで忙しくしていますが、職場でストレスを感じることも、もちろんあります。

家に帰り、食卓で向かい合っている相手は「新米サラリーマンの弟」というより、ただ話を聞いてくれる「サボテン」のような設定です。彼は励ましもアドバイスもしません。疲れて帰ってきた姉のおしゃべりに「やれやれ」などと付き合っています。夢のようなストレス解消物語です!

自分の意見をポンポンと語るちはるですが、「男のくせに」「女のくせに」「どうせわたしなんか」などという言葉を使わせていません。自分がどんな言葉を使わずに生きているのかを意識している主人公にしたかったんです。

ストレスがあっても仕事に誇りがある

——シリーズ前作『やっぱり、僕の姉ちゃん』出版から2年たっています。この2年で意識して加えた「ちはるの変化」や「話題の選び方」はありますか?

【益田】僕の姉ちゃん』は現在も『anan』で連載中の漫画です。なので、特集号とリンクする話題を考えることが多いです。

たとえば、「未来の暮らし」をテーマにした号では、きょうだいが未来の便利グッズについて語り合います。弟に「どんなロボットができて欲しい?」と聞かれた姉は、朝の支度をしてくれるロボットがいいと言います。顔を洗ってくれたり、化粧してくれたり、着替えまでやってくれたり。けれど、彼女は最後にこう言うんです。「けど、仕事にはあたしが行くぜ!」。わたしは彼女のこういうところがすごく好きなんです。

——ちはるのように自分を大事に生きたいと思っても、他者と比較したり、他者との関係性を気にしたりしてしまい、なかなか難しいと感じます。益田さん自身、自分の本音に耳を傾けるために、日ごろ心がけていることや実行している習慣があれば教えてください。

【益田】いくつになっても、ああすればよかった、こうすればよかったと後悔することはあるものです。

なので、心身ともにちゃんと休むことは大事だと実感しています。ありきたりですが、まずは睡眠をしっかりとっています。数年前からパイプ枕を愛用しているのですが、頭が熱くならないので、すごく寝やすいです。お店でちゃんと首の角度を測ってもらい、選びました。

あとはなんだろう。今は難しいですが旅に出ると手っ取り早く気分が変わるので、旅はよくします。新幹線なら当日でもすぐ乗れるので、急な旅にぴったりです。思い立って夕方から函館に向かったこともあります。自分が煮詰まらないでいられる方法がわかっていると、ずいぶん楽かもしれません。

アイデアはどんなふうに浮かんでくるか

——読者の共感をよぶ「ちはる語録」。どんなふうに言葉を集めていらっしゃるのでしょうか? 心を動かすための習慣があれば教えてください。

【益田】ふとしたときに思い浮かぶことも多いので、スマホにメモをしたりします。

昔のことを思い出して浮かぶこともあります。たとえば、上京して右も左もわからなかった頃、いろんな仕事のチャンスをくれた人たちがいました。印象深いのが、わたしにチャンスをくれたことすらよく覚えていない人です。時間を経て、ものすごくかっこいいなぁと思います。そんな思い出から、姉・ちはるのこんなセリフが浮かびました。

「チャンスは、むしろ与えた側が試されているんだ 与えたことを忘れるくらいの器でいたい」

益田さん愛用のスケジュール帳とシャーペン(撮影=新田 理恵)
益田さん愛用のスケジュール帳とシャーペン(写真=本人提供)

——もしネタ帳のようなものがあれば、愛用されているツール、筆記具などを教えてください。

【益田】最近は無印良品のシャーペンを仕事で使っています。半透明なので残りの芯が見えて便利なんです。スケジュール帳は、小さく軽く薄い「Campus」のものを愛用しています。バッグが重くなるのがつらいので、ものを選ぶ基準が重量になってます(笑)。