働き方改革で時間に余裕ができた人、新型コロナウイルスの影響で時間を持て余し気味の人もいるかも知れません。そんなときこそ働く女性に考えて欲しいのが、スキルアップや資格の取得です。雇用保険にはスキルアップを目指す人を支援する給付金があります。お得に、賢く学ぶ方法を知っておきましょう。
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※写真はイメージです(写真=iStock.com/gece33)

自分らしく働くためにスキルを高める

もっと仕事を頑張りたい。収入アップを図りたい。そんな気持ちがあるなら、仕事に関係する分野の勉強をしてみる、というのもいい。転職を希望しているなら、興味のある資格を取得するのもいいだろう。

最近は、新型コロナの感染リスクから、景気の悪化、企業の業績不振で仕事を失うのではないかと不安を感じている人もいる。副業を許可する企業も増えているので、本業だけでなく、副業を持つことも、今後ますます重要になってくる可能性がある。

さらにキャリアについては長期的な視点で考えることも重要である。

65歳まで働くのは今や普通のことであり、人生100年時代には、70歳、75歳まで働く人も増えていくと考えられる。そんなに長く働きたくない……というため息も聞こえてきそうだが、何も、若いときと同じように週5日、フルタイムで働く必要はなく、週2~3日、短時間など、無理のないペースで働く道もある。70歳前後はまだまだ若いし、仕事を持っていた方が、毎日が生き生き過ごせるという利点もあるだろう。

そうかといって、どんな仕事でもいい、というわけにはいかない。60代以降は、自分の好きな仕事、特技が活かせる仕事、楽しみながらできる仕事に就くのが理想的だ。そのためには、現役時代から将来に向けて資格取得などの準備をしておきたい。

費用の一部が雇用保険から給付される

勉強や資格取得のためにはお金もかかるが、費用を一部助成してくれる制度がある。「一般教育訓練給付金」と「特定一般教育訓練給付金」、「専門実践教育訓練給付金」で、いずれも雇用保険(会社員が加入する社会保険で、失業給付などが支給されるもの)による給付金だ。

「一般教育訓練給付金」(以下、一般)と、「特定一般教育訓練給付金」(以下、特定)は、資格取得やスキルアップのための費用の一部が給付されるもので、在職中の人と、退職から1年程度の人も対象になる。

具体的には、受講開始日に雇用保険被保険者期間(雇用保険に加入していた期間)が3年以上の在職者が対象だが、はじめて給付を受ける人は、被保険者期間1年以上で対象となる。雇用保険は31日以上の雇用が見込まれ、週20時間以上働いている人が加入するので、会社員はもちろん、アルバイトなどで働く人でも加入している場合がある。

すでに退職している人でも、退職するまでの雇用保険被保険者期間が3年以上で、退職の翌日から受講開始までが1年以内の人なら、給付を受けることができる(妊娠、出産、育児、疾病等の理由により教育訓練給付の適用対象期間が延長された場合は最大20年以内の人)。

給付されるのは、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講し、終了した場合で、給付される額は、「一般」と「特定」とで異なる。一般では、入学料、受講料(最大1年分)の20%・上限10万円となっている。

特定の場合は、受講開始1カ月前までに「訓練前キャリアコンサルティング」を受け、ジョブ・カードを作成し、ハローワークにおいて受給資格確認を行う必要があり、受講費用の40%・上限20万円と、一般より手厚い給付が受けられる。

転職や独立、副業に役立てられそうな講座も対象

前述のとおり、給付の対象となるのは厚生労働大臣の指定を受けた講座を受講した場合だが、一般で指定されている講座は2020年4月1日現在で2044講座にのぼる。

情報処理技術者試験、簿記検定試験など、仕事にすぐに役立てられそうなもの。通訳案内士、日本語教育能力、産業カウンセラー、学芸員など、副業や、転職、独立に役立てられそうなものなど、多様な講座が揃っている。通学が中心だが、通信で学べる講座もあるので、新型コロナウイルスで外出しにくい時期であっても、学びの機会が得られそうだ。資格取得ではなく、修了が条件なので、気軽に利用できる。厚生労働省のサイトに情報があるので、チェックして欲しい。

特定についても、宅地建物取引士、社会保険労務士、税理士、行政書士、弁理士、通関士、ファイナンシャルプランニング技能士など、多彩な講座が指定されている。

一般についても、特定についても、「教育訓練制度 厚生労働大臣指定教育訓練講座」の検索システムで、分野や資格別、スクール・キーワード別、また実施方法(通学・通信・eラーニング)や地域×などで検索できる。

「過去に利用したことがある」という人もいるかも知れないが、この制度は、過去に利用したときの受講開始日から3年以上経過していれば、何度でも利用できる。1度に限らず、給付を受けて複数の学びを得ることができるのだ。

より高度な資格には専門実践教育訓練給付金

MBAや看護師など、高度な専門職を志す人を支援するのが、「専門実践教育訓練給付金」だ。

対象者の要件は、一般、特定と同じ(ただし、はじめて給付を受ける人は、被保険者期間2年以上の人が対象)で、前回の受給から3年以上経過していれば、何度でも受給できる。

給付を受けるには、事前にコンサルティングを受け、就業の目標、職業能力の開発・向上に関する事項を記載したジョブカードの交付を受け、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講する必要がある。

対象となるのは、MBA、看護師、介護福祉士、美容師、調理師、歯科衛生士、社会福祉士、言語聴覚士、キャリアコンサルタント、保育士、栄養士などの教育訓練で、給付期間は2年間だが、資格取得に繋がる場合は最長3年まで延長される。

給付額は受講の場合と、資格を取得した場合で異なる。受講では費用の50%で、受講期間が1年では40万円、2年では80万円、3年で120万円が上限となる。さらに資格取得などをして、修了から1年以内に雇用された場合は、給付が手厚くなり、費用の70%が給付される。上限は受講期間1年では56万円、2年では112万円、3年で168万円と、かなりの額にのぼる。

具体的にどんな講習が対象になるかは、前述の「教育訓練制度 厚生労働大臣指定教育訓練講座」の検索システムで調べられる。

新型コロナウイルス感染症対策のため、教育訓練受講開始が延期されていることもあるが、通信やオンラインの活用した補習などもある。調べておこう。

離職者にはさらに手厚い給付金も

専門実践教育訓練給付金を受けた人で、2022年3月31日までにはじめて専門実践教育訓練を受講する、受講開始時に45歳未満の離職者である、などの条件を満たすと、加えて「教育訓練支援給付金」も受けられる。金額は、失業給付の基本手当日額の80%に、2カ月ごとに失業の認定を受けた日数を掛けた額となっており、個々で金額が異なる。

そのほか、自治体によっては、在住者や在勤者を対象に、資格取得講座を割安な料金で開催するなど、スキルアップを支援している例もある。例えば東京都では、主に中小企業で働く人を対象に、スキルアップや資格試験受験対策等の短期講習を低料金で提供している。住んでいる地域の自治体、勤務している地域の自治体をチェックしてみよう。

これからの時代。働けるスキルを増やしておくことは、働く女性にとって必須のテーマと言える。興味がある分野を学ぶのもいいし、さまざまな資格に挑戦して適性を見極めるものいい。そのための費用が補助されるのは非常にいい制度であり、しっかり活用して欲しい。