会社の数字は、健康診断の数値のようなもの繰り返し行った、仮説を立てるトレーニング
財務状況は、その会社の基礎体力をはかる“健康診断”みたいなもの。明らかにされたデータを見れば、会社が元気かどうかは一目瞭然です。不健康だと従業員が元気になれないし、利益も出ない。健康なときもあれば病気のときもある。大手術が必要になることもあるでしょう。だから何かあったときのための貯金が必要です。経営がカツカツになると立て直すのはとても大変で、お金では解決不可能になります。これは、会社の立て直しを図る経営支援会社に勤務していた時期に痛感したことです。
私が本格的に数字にかかわるようになったのは、大学卒業後、ゴールドマン・サックス証券の調査部に入社してから。「会社の数字」を見ることが、仕事の一部になりました。証券アナリストの仕事は、財務分析だけでなく、分析対象としている企業の将来性を見極め、その株価の評価をして投資家へ推奨します。
黒字だから大丈夫かというと、そうともいえない。キャッシュ・フローを見ないと安全に経営されているかどうかがわからないし、単年度の数値だけでは正確に判断できません。そこで関係者に入念な取材をして、投資家への調査リポートを英語と日本語で作っていたのです。
●結論を先に!
●要点はBullet Point(箇条書き)で書く。
●取材、分析をもとに仮説を立てて検証し、その結果を簡潔に伝える。
●数字は自分の仮説をあくまでも裏付けるためのもの。
仮説が間違いでも次のステップへの糧になる
課題にぶつかった際、まずは「なぜそうなるのか、数字で表せないところを定性的に分析」し、「その理由を数字によって定量的に説明しようとするとどうなるか」を考える訓練を、何度も何度も行いました。数字は事実を裏打ちするために使うもので、いかようにも読めるもの。想定した仮説が合っていれば面白いし、仮説と違った場合でも「なぜだろう?」とまた考える。それを繰り返すことがトレーニングになります。
数字の見方を広げれば、会社の課題が見え、問題がなぜ起きているのか、解決のためにどうすればいいのかを考えられます。もう一歩進めれば、問題の解決策まで具体的に提示できる。さらに改善後に数字が上向いてくれば、また面白くなります。
ファーストリテイリングに入社して、ユニクロやジーユーのマーケティング部にいた時期も訓練の日々。テレビコマーシャルなどの広告宣伝費をガンガン投下しているイメージがありますが、実はお金にとてもシビアな会社で、社長まで承認を取らないと、予算がおりなかった。広告の費用対効果などをきっちり理論立ててプレゼンする必要があるのですが、なかなか通らない。経営陣からのダメ出しがあまりにも多くて何度もくじけそうになりましたが、言われることは至極まっとう。ビジネスパーソンとしてとても鍛えられたので、今では大変感謝しています。
いろんな会社を経てZebra Japanに縁がありました。当社が運営する「フライング タイガー コペンハーゲン」というストアは、社員もアルバイトも、スタッフ全員が明るくて元気。仕事を楽しんでやってくれています。それは本当に素晴らしく、何ものにもかえがたいこと。冒頭で言ったように、会社の数字が元気だから人も元気なのでしょう。数字も人もセットで元気――将来に向けて大きな可能性を秘めている会社の条件の1つだと思っています。
『新版 経営分析入門』
●森田松太郎著(日本経済新聞社)
数字から会社の実力がわかる。納得の名著。
『企業財務分析』
●D・R・ハリントン、B・D・ウイルソン共著(新世社)
財務分析をイロハから教わった教科書的存在。
『新訂 財務諸表分析』
●平澤英夫著(日本経済評論社)
財務諸表から学べるものを熟知できた一冊。
▼愛読書
『心を高める、経営を伸ばす』
●稲盛和夫著(PHP研究所)
稲盛和夫氏の成功への過程に勇気づけられた。
『一倉定の経営心得』
●一倉 定著(日本経営合理化協会出版局)
事業の成否を決定する、社長のバイブル本。
『人を奮い立たせるリーダーの力』
●平尾誠二著(マガジンハウス)
珠玉の言葉の数々に、リーダーの本質を実感。