これまではどこか我慢をしたり、無理をすることで成り立つイメージのあったサステナビリティですが、これからは違います。あると生活がより豊かになる「香り」にだって、人々の健康と地球環境の双方に配慮した楽しみ方が存在するのです。私たちがモノづくりの背景を知り、意識を高めることで世界はきっと変わるはず。連載3回目は、世界中にファンを持つ「FUEGUIA 1833」の企業理念と哲学に迫ります。

フレグランス

サステナビリティは自己犠牲の上には成り立たない

目には見えずとも、私たちの生活に深く関わっている「香り」。ときに体のこわばりを緩め、傷ついた心を慰めてくれる癒しの存在は、人生がより豊かになる重要なエッセンスだ。けれど一方で、フレグランスに使われている成分には人間の健康をおびやかすだけではなく、自然環境破壊へ繋がるものも含まれていることがあるのをご存知だろうか。

香りに限らず私たちはこれまで、自身が購入する商品を選ぶときにはデザインや価格、個々の好みを基準に選んできた。しかしながら持続可能な発展を意味するサステナビリティが重要視されている今、手にするものの背景を知り、過程にまで責任を持ってつくられたものを意図して選択する行動が求められている。

けれどここでひとつ知っておくべき大切なことがある。それは、サステナビリティは個々の自己犠牲の上に成り立つものであってはならないということ。自分が我慢することで他者の幸せを望んでも、それは決して長続きしない。社会のためといいながら自分を後回しにするのは、結果“持続可能”とは真逆になってしまうのだ。私たち人間は、経済活動をするうえで自然を切りくずし、自分本位な豊かさに変えている部分がある。いつのまにか地球を支配している立場と勘違いしてしまいがちだ。けれど、自然の恩恵を受けて生活しているのは私たち人間のほう。与えられる立場として常に感謝の気持ちを忘れずに、かつ自然とどう共存していくのかを真剣に考える必要があるのだ。

サステナブル意識の高いフレグランス

自然環境と、使う人の健康どちらにも配慮している「FUEGUIAフエギア 1833」は、2010年ブエノスアイレスで創業。約100種類の香りが歴史・文化・人物からインスピレーションを得た深遠なストーリーを背景に持つのが魅力だ。そして今もっとも注目すべきは、最高峰の自然原料を厳選し、調査から香りの考案、調香、製造、包装、そして販売にいたるまで、全工程に責任を持ち、そのすべてを調香師ジュリアン・ベデルが統括していること。これにより創業以来、一貫したサステナビリティとオリジナリティの軸は決してぶれることがない。

さらに、すべての香りは入手可能な原料分で生産するリミテッド・エディションで、パルファンのクリスタルボトルにはシリアルナンバーを刻むという徹底ぶり。ミラノのラボラトリーでは1200種以上の原料に合わせてカスタマイズされた機械を揃え、そこに熟練の技術を持った職人たちの細やかな手作業が加わることで、まるで芸術作品ともいえるようなフレグランスが生まれている。このように香りを生み出すまでの開発はもちろん、箱の製造や包装などを行うファクトリーも併設しているという。

また、多くの香料や化粧品に含まれる多環式ムスクを一切使用しないのも「FUEGUIA 1833」のこだわりだ。合成ムスク、またはPCMともいわれる多環式ムスクは、これまでも河川や海洋に住む生き物に害を与える物質としてたびたび議論されてきた。人間の体内に残り、環境ホルモンとして問題が指摘されている側面もある。それらを一切排除し、自然界で完全に分解できる植物性の原材料に限定し、代わりに抽出の過程に手間と時間をかけることで自然にも生命にもやさしいフレグランスが誕生したのだ。

ブランドの環境への取り組みはこれだけではない。2014年には自社のボタニーを開設し、5ヘクタールのプランテーションに100種類以上の芳香を持つ植物を育てることに成功。自然に配慮した抽出方法を徹底することで環境への負荷を軽減、研究調査も行っている。

豊かさとサステナビリティは両立できる

自身の癒やしが自然を傷つけるものであってはならないし、また反対に、自分が我慢することで環境を維持しようとするのも本当のサステナビリティとはいえない。私たちがこれからめざすのは、自己も他者も心地よく、地球環境に配慮できる生き方であり「持続可能な」未来に向かいながらも、個々が最高に快適なポイントで健やかに生活すること。今がまさにそのポイントを探り当てる過渡期のような時代なのかもしれない。

豊かさとサステナビリティは両立できる。そんな理想を体現してくれる「FUEGUIA 1833」のフレグランスは、私たちの未来のあり方の見本となってくれるだろう。また、そういったブランドの存在を知り、信頼できるモノを選ぶ消費活動こそ、私たちが「地球のために今すぐできること」にほかならない。

FUEGUIA 1833 東京本店
店舗
東京都港区六本木6-10-3
グランドハイアット東京1Fロビー内
TEL:03-3402-1833
www.fueguia.jp
直営店ではフラスコを手に取りフレグランスを直接香ることで、ムエットによる紙ごみをなくし、繊細で奥深い本来の香りを試すことができる。