歯にミネラルを与える高機能歯みがき剤を開発
「芸能人は歯が命」──。インパクトあるCMで名が知れ渡ったサンギの美白高機能歯みがき剤「アパガード」。それまで歯ブラシの補助と考えられていた歯みがき剤をオーラルケアの主役に押し上げ、歯みがきのイメージを一新した。
「歯みがきは、人と語らい、豊かな人生をもたらすもの。CMで描いたそんなイメージが新鮮だったのではないでしょうか」と、同社社長のロズリン・ヘイマンさんは話す。
CMではあえて機能性を直接うたわなかったが、製品そのものが革新的だった。「アパガードをはじめとする私たちの歯みがき剤は、歯を“削って汚れを落とす”のではなく、歯垢などを“吸着”し、成分補給により歯を“修復”します。従来の歯みがき剤とは発想が根本から異なるのです。それを可能にしたのが、サンギが独自に研究開発した『薬用ハイドロキシアパタイト』。サンギのオーラルケア製品すべてに配合されています」
ハイドロキシアパタイトは、水分、タンパク質に並ぶ「人体の第三の構成成分」である。骨や歯の主成分であり、歯の表面を覆うエナメル質の97%、中の象牙質の70%はハイドロキシアパタイトで形成されている。それをオーラルケアに最適化したのが「薬用ハイドロキシアパタイト」。フッ素に並ぶむし歯予防成分として1993年に旧厚生省の認可を受けた。
「もともと人の唾液には歯を守る働きが備わっていますが、現代では糖分の多い食生活や仕事のストレスなどで口腔環境は悪化しがち。『薬用ハイドロキシアパタイト』はむし歯の原因となる歯垢や細菌を吸着し、歯の表面のミクロの傷を充てん。さらに歯の主成分を補給して初期むし歯(むし歯の一歩手前)を再石灰化します。唾液本来の機能を助けて、口の中がスッキリと気持ちよく変わるのを実感できますよ」
NASAの技術をヒントに世界に先駆けて実用化
今では欧州などでもハイドロキシアパタイト配合のオーラルケア製品を見かけることは珍しくない。その流れを生み出したのがサンギだ。きっかけは米国航空宇宙局(NASA)の技術にあった。
「無重力の環境下でもろくなる宇宙飛行士たちの骨を補強するための研究の中で、ハイドロキシアパタイトが利用されていたことがヒントになりました。骨や歯の主成分で、安全性が高い──。それならば、毎日の歯みがきに使えるようにすれば、歯に良い効果をもたらすのではないか。こう着想し小さな研究所をつくったことが、今に続くサンギの研究開発事業の原点になっています」
大人の素肌に優しいスキンケアブランドが誕生
ハイドロキシアパタイトは合成方法によって異なる特性を持つため、抗菌剤や医療機器、医薬品などさまざまな領域で応用できる。その一つが、女性にとって身近なスキンケア。一昨年、サンギからスキンケアブランド「HAP+R(ハップアール)」が誕生した。
「独自開発した肌専用のハイドロキシアパタイト『アパリン』を配合した、大人の女性のためのスキンケア製品です。アパリンは酸化した皮脂や古い角質などは選択的に除去し、必要な皮脂は残してくれます。継続してこそ意味のある製品ですから、使い心地のよさを重視しました」
楽しく働ける環境からベストな成果が生まれる
「HAP+R」の開発を主導したのは女性研究チーム。サンギは従業員の半数が女性で、研究開発職では約4割を占めているという。
「子育て中の人も多いですね。男女に関係なく、才能を生かして楽しく働けることが、ベストな成果につながるはず。一人一人の事情に配慮しながら、フレックスタイム制や時短勤務など働きやすい環境整備に努めています」
個性を生かした自由な発想から、これまでになかった製品が生まれる──。まさにサンギの研究開発の原点であり、その成果が多くの人の豊かさの一助になればと、ロズリンさんは話す。
「口元の美しさは、その人の第一印象を決定づける大きな要素です。笑うときに手で口元を隠してしまっては、もったいないですよね。日々のオーラルケアで口元に自信が持てれば、ビジネスシーンでも笑顔で人に接することができます。加えてアパガードは歯みがき後もスッキリ感がずっと続くので、リフレッシュ効果もあります。ただ汚れを落とすための日課ではなく、歯みがきタイムを自分へのご褒美の時間にしてほしいですね」
Edit=Embody Text=新田理恵 Photograph=金城匡宗(インテンスインク/インタビューカット)