「資産1億円」は夢のような数字だが、あきらめる必要はない。自分に合った方法を見極めてチャレンジを続ければ、誰でも到達できる。ファイナンシャル・プランナーの藤川太さんが、1億円を築いた人の事例をもとに、目標達成のための秘訣を紹介する――。
Mid adult couple drinking coffee at home
※写真はイメージです(写真=iStock.com/Yagi‐Studio)

“1億円女子”3つのタイプ

資産1億円は夢だけど、私には無理――。そんなふうに最初からあきらめている人も多いだろうが、実はそうでもないらしい。

「普通の会社員が節約だけで1億円貯めたケースもありますよ」と話すのは、ファイナンシャル・プランナーの藤川太さんだ。藤川さんが運営する「家計の見直し相談センター」には、さまざまなお金の相談が寄せられるが、相談者の3%程度が1億円超えの金融資産を保有しているという。その人たちは、いかにして1億円をつくったのかのだろうか。

「代々の資産家を除けば、3つのタイプに分かれます」と藤川さんは言う。

それは

①節約家タイプ
②投資家タイプ
③高収入タイプ

の3つだ。

お金持ちになるには、3つの方法しかない

藤川さんによると、お金持ちになるための法則は、次の計算式で表すことができるという。

<お金の持ちになるための法則>
資産の増加=収入―支出+運用益

この式からわかるのは、資産を増やすには、収入を増やすか、支出を減らすか、運用益を増やすか、この3つの方法しかないということだ。

「このうち、どれか一つでも他の人より優れている才能を持った人がお金持ちになっているのです」

とすれば、3つのうち「自分はどれが得意か」を見極めることが、資産1億円への近道となる。もう一つ重要なのは「期間」。節約をするにしても、運用で増やすにしても、期間が長いほど有利になるのは当然だ。自分の得意な方法を見極めたら、すぐ実行に移すことが大切になる。

では、自分がどのタイプに向いているのか、どう見極めればいいのか。各タイプの特徴を知ればヒントになるだろう。

<節約家タイプ>共通点は「共働き」で「夫婦仲がいい」

節約家タイプでお金持ちになった夫婦には共通点がある。それは、共働きであることだ。

「どんなに節約に熱心でも、ある程度の収入を確保しなければ、効果は期待できません」

その上で夫か妻か、どちらか一方の収入で生活費を賄うようにすれば、配偶者の収入は、まるまる貯蓄に回せることになる。

収入を増やす道は、共働きだけではない。最近は副業を認める会社も増えているし、不動産投資で賃貸収入を得るなどの方法もある。本業の収入で生活費を賄い、本業以外の収入を貯蓄することができれば、お金持ちへの第一歩を踏み出すことができる。

「節約家タイプは夫婦の仲がいいのも特徴ですね」と藤川さんは指摘する。

「家計の見直し相談センター」に相談にくるお金持ちは、夫婦で訪れる比率が明らかに高いという。

単身者では実家暮らしが共通点だ。都会に住んでいると収入は高いが、家賃も高い。実家暮らしにより家賃が必要なければ、都会のメリットを最大限享受できる。もちろんそのうえで節約家であることも条件だ。

同じ会社勤務で同じ稼ぎなのに、貯蓄額に大差

また、藤川さんは企業や団体の社員・職員向けの相談サービスも実施しているので、同じ会社から複数の人が相談に来ることも多い。収入はそれほど変わらないにもかかわらず、貯蓄額の差に驚くことも少なくないという。ある人は借金に苦しみ自転車操業の生活を続けているかと思えば、すでに数千万円の貯蓄がある人もいる。そしてその差には、夫婦仲が関係していることが多いという。

普通はお金の絡む話題から逃げ回る夫婦が多い。住宅や教育、老後など、家族の将来に向き合えば、「必要なお金をどう用意するか」という話題になるからだ。日ごろの無駄遣いを責められるかもしれないし、自由に使えるお金を減らすことになるかもしれない。だから、できるだけ話題にしないようにする。

だが、「家計を管理する目的は、自分ではなく、家族が幸せになることです」。そう考えれば、お金の問題に夫婦で向き合う時間をつくることは重要だ。最初は、互いの主張がぶつかり、夫婦喧嘩になるかもしれない。だからこそ簡単ではないが、日ごろから夫婦でお金の話をして、家族内で役割分担がしっかりしている節約家は、お金が貯まるし自然と夫婦仲がよくなるわけだ。

<投資家タイプ>1円でも多く投資に回したい

投資家タイプのお金持ちの特徴は、消費にあまり興味がないことだという。

「大きな家に住んだり、高級車に乗ったりする人は少ないですね」

一般的なお金持ちのイメージとはだいぶ違いそうだ。街で出会っても、外見からその人がお金持ちだとは気づかないだろう。

お金を使うくらいなら、1円でも多くを投資に回したいと思っているのが投資家タイプだ。だから、無駄遣いを嫌う。それが1円、10円であっても同じだ。だからこそ、投資家タイプは、パートナー選びでもお金の価値観を重視する。自分自身が無駄遣いを嫌うので、パートナーが浪費家であれば、嫌な思いをすることになる。お金の使い方を巡って、喧嘩も絶えないだろう。であれば、お金の価値観が一致する人をパートナーに選んだほうが合理的というわけだ。

投資の損失は割り切ることができる

「彼ら/彼女たちは、本来支払う必要のなかったものを節約できなかったときは多いに悔しいと感じるんです。けれど、投資で損失が出てしまったときには、仕方ないとあきらめることができるのが特徴です」。

それが100万円、1000万円単位のお金でも割り切ることができるという。普通なら投資にチャレンジして失敗すると、「二度と投資などしたくない」となるはずだ。投資家タイプも失敗は悔しいのだが、なぜ失敗したのか、どうすれば失敗しないのか、学びを得て次のチャレンジに生かすことができる。

「チャレンジして失敗することより、チャレンジをしなかったことでチャンスを逃すのが悔しいと思う人たちですね」

投資家タイプの中には、短期間で大儲けした人も多い。

「実は、お金持ちへの扉が開く時期があるのです。その扉に気づき、くぐることができた人は、一気に資産を築くことができるのです」

ここ20年ほどで考えても、1999~2000年のネットバブル、2003~08年の不動産ミニバブル、2005~07年のFXバブル、直近では2013年以降のアベノミクスなどは扉が開いていた時期だという。その波にうまく乗れることができた人がお金持ちになっているというのだ。

<高収入タイプ>自己投資でステップアップを目指す

高収入タイプは、勤務先や職業によっていくつかのタイプにわかれる。わかりやすいのは、国内企業と外資系企業の差だ。

「外資系企業に転職することで年収が2倍くらいなるケースもありましたね」

最近は、契約社員や派遣社員として働く人が増えて、そもそも正社員として働くことをあきらめてしまう人が多いが、それでは高収入は望めない。働いて貯めたお金はまず、自分に投資して、契約社員から正社員、中小企業から大企業、あるいは国内企業から外資系企業へとステップアップしていくことで収入を増やすことができる。

しかし、気を付けなければならないことがある。

「資格や学位の取得を目指す人が多いのですが、取得が目的になってしまって収入アップに結び付かないことも多いのです」

目標はあくまで「ステップアップすること」であることを忘れてはいけない。

小さな副業で経営センスを磨く

他に、今からでも高収入を目指せる方法はあるだろうか。

藤川さんは、「起業であれば数年間で成功するケースも多いです」という。

起業で成功した人の中には、もともと働いていた業界と関連する業界で新しいアイデアを発見して起業した人が多いそうだ。

「会社員として働きながら、副業的に小さなチャレンジを繰り返して、経営に必要な能力を身に着けていくのがいいでしょう。もちろん、その力は本業にも役に立ちます」

以上、1億円貯めた人の3つのタイプを紹介してきたが、あなたにはどのタイプが合いそうだろうか。次回以降では、それぞれのタイプについて、お金持ちになるための実践法を紹介する。