年1200円の口座維持手数料
2020年は銀行との付き合い方を見直す年になりそう。理由の一つは、口座維持手数料を徴収する動きがあるからだ。ファイナンシャル・プランナーの藤川太さんがこう指摘する。
「口座に一定以上の預金がないと、口座維持手数料が必要になるのは海外では当たり前。日本で導入されても不思議はありません」
19年12月、三菱UFJ銀行が口座維持手数料の徴収を検討していることが報じられた。入金や出金などの取引が2年間なかった口座を対象に、年1200円を徴収する案が出ているという。すでに導入を済ませた金融機関もある。十六銀行は18年4月1日以降に開設した普通預金口座で、2年以上の入金や出金がなかった場合に年1200円を徴収する。
以前から保有していた口座は対象外なので慌てる必要はないが、将来はすべての口座が対象になることも考えられる。この機会に付き合う銀行を見直しておいたほうがいいだろう。
では、どんな銀行と付き合うのがベストなのか。
自社ATMを持たないネット銀行がおすすめ
「利用方法にもよりますが、コンビニATMでよく引き出しをするなら、手数料が無料になる銀行を選んだほうがいいでしょう」
メガバンクは一定の取引があると、コンビニATMの利用手数料や時間外手数料が無料になるメンバーズ制度がある。しかし、最近はその条件を厳しくする傾向にあるようだ。メガバンクの場合、都市部の駅前には店舗があるし、独自のATMも一定台数を設置しているので、それを利用してもらおうという方針だ。
そう考えると、自社のATMを持たないネット銀行のほうがコンビニATMの手数料を無料にしているケースが多い。
ソニー銀行は月4回までコンビニATMが無料
たとえば、ソニー銀行の場合、コンビニエンスストアに設置されているセブン銀行、ローソン銀行、イーネットなどのATMなら月4回まで引き出しが無料になる。ゆうちょ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行のATMを利用しても同じ。夜間や土日祝日でも変わらないのでうれしい。
ジャパンネット銀行ではセブン銀行、ローソン銀行、イーネットなどのATMで月1回の出金が無料。2回目以降も3万円以上なら無料になる。(図表1)
ネット銀行のなかでも藤川さんのお薦めは楽天銀行だ。まず、楽天銀行に給与振り込みを指定すると、月3回まで他行あて振込手数料が無料になる。毎月、家賃などの振り込みをしている人にとってはうれしい優遇だ。
コンビニATMの利用手数料は一定条件を満たすと最大月7回まで無料になる。ハッピープログラムと呼ばれる会員制度で5つのステージに分かれている。最高ランクは「スーパーVIP」で残高300万円以上または取引30件以上が条件。ATMの利用手数料は月7回まで無料、他行あて振込手数料は月3回まで無料。2つめのランクは「VIP」で残高100万円以上または取引20件以上が条件になっている。ATM利用手数料は月5回まで他行あて振込手数料は月3回まで無料だ。楽天グループには楽天市場や楽天カードなどさまざまなサービスがある。利用を楽天グループに集中させれば、「VIP」や「スーパーVIP」を獲得するのも難しくないだろう。
ネット銀行の定期でインフレに備える
ネット銀行はメガバンクより預金金利が高いのもメリット。たとえば定期預金の1年物で比較すると、メガバンクは0.01%だがネット銀行では0.2%のケースもある(12月14日時点)。100万円を1年間預けた場合、前者は100円の利息だが後者は2000円と差は歴然としている。
国内では物価がジワジワ上昇しており、将来インフレになる可能性もある。そのとき資産を現金で保有していると目減りしてしまうから、インフレを予想するならインフレに強い資産に乗り換えておくと安心だ。
インフレに強い資産として代表的なのは株式や不動産だ。物価が上昇すると、商品の価格も上がりやすくなり企業の売上も増える。企業の利益も増えれば株価が上がる仕組みだ。不動産は現物資産の一種なので、物価が上昇すると価格が上昇する。
しかし、投資経験のない人にとっては、株式投資も不動産購入もハードルが高い。その場合には、定期預金で備える方法もある。世の中にお金がたくさん出回ることでインフレは起こりやすくなる。インフレを抑えるには中央銀行は金利を引き上げてお金の量を少なくしようとする。そのときは預金金利も上昇する。それを上手に活用すれば、お金が目減りするのを抑えられるという。
1年定期でフレキシブルに
藤川さんのおすすめは、金利が比較的高いネット銀行で1年程度の定期預金を利用することだ。3年あるいは5年の定期預金を利用すれば、もう少し金利は高くなるが、現在のように低金利のときは、期間の短いものに預けて金利が上昇したら預け替えができるようにしておきたい。
もう一つの方法は、変動金利の商品を利用して金利が上がったときの恩恵を自動的に受けられるようにしておくこと。代表的な金融商品は個人向け国債の「変動10」。期間が10年の国債で最低0.05%の金利が保証されている。また、将来金利が上昇すれば、適用される利率も上昇する仕組みになっている。1万円から購入できるし、発行後1年以上経過すれば中途換金しても元本割れはない。他に有利な預け先が見つかればいつでも乗り換えが可能というわけだ。
金利が高くなったら、今度はできるだけ長期のものに預けて金利を固定するのがおすすめ。このように金利情勢に合わせた運用戦略が必要になる。