節約が長続きしない理由
節約が長続きしないのは、食費を削ったり、お小遣いを減らしたり、つらいことを実践しなければならないから。それを乗り越えて長続きさせるためには、「ライフプランの作成から始めるのが有効」とはファイナンシャル・プランナーの藤川太さん。
ライフプランを見直して目標が明確になれば、多少つらくても実行できるという。これは会社も同じ。理念やビジョンが社員に浸透していない会社は、売上目標を立てても実現しにくい。家族がいる場合は目標を共有すれば、互いに協力しあって節約を続けやすくなる。
既婚者の場合は、とくにパートナーの協力を取り付けることが欠かせない。
「交渉事というのは何でもそうですが、相手が“YES”と言いやすい環境を整えるとうまくいくものです」
その第一歩として「将来こうなりたい」というライフプランを示すわけだ。「マイホームを購入したい」「子どもをいい大学に進学させたい」などと相談すれば、「NO」と言われることはあまりない。そうやって家族で話し合い、目標のすり合わせをしていく。
藤川さんのもとを訪れる相談者の中には、共働きで世帯年収に余裕があるのに、どちらかに家計を任せきりにしていたために、まったくお金が貯まっていない家庭があるという。一方で年収はそれほど高くなくても、夫婦で話し合うことで計画的な資産形成を実現している家庭もある。
だからこそ、家族でライフプランを考えることが有効といえる。ただ、日ごろは忙しくて家族でゆっくりライフプランを考える時間などない。年末年始でまとまった休みをとりやすいときこそ、家族で考えるチャンスだ。
ではライフプランを共有した後は、何を実践すればいいか。
エクセルで1年間の支出を棚卸し
実際の節約で盲点になりやすいのは口座から自動で引き落とされているお金。家計簿をつけていれば、把握できるがそうでなければ把握できない。財布から直接出すお金は意識しやすいが、知らない間に引き落とされているお金は気づきにくい。簡単に見つけ出すにはどうすればいいか。
「節約の第一歩として1年間の固定支出をエクセルに整理してください」
通帳やクレジットカードの明細などを用意して、エクセルに入力していく。面倒に感じるかもしれないが、実際にやってみると何時間もかからないという。これによって1年間の固定費の棚卸ができる。
固定費が明確になると、意外なムダが発見できることも少なくないという。
「私自身もこの方法で気づくまで、昔契約したIP電話の基本料をずっと支払い続けていたことがあります」
月額300円だったそうだが、毎月だから積み重なると大きな金額になる。
よくあるのは、スマホの契約時に付けたオプションがそのままになっているケースだ。初月の利用料が無料になっているケースが多いので気軽につけてしまうが、結局、解約しないままになってしまうことが多い。
「聞いたところによると、オプションをすぐに解約する人は1割程度しかいないそうです」
なんと9割はオプション料金を支払い続けていることになる。
見つけたムダはその場で解決する
無駄に気づいたら、すぐに実行に移す必要がある。「時間のあるときに手続きしよう」などと考えていたら、すぐに1年や2年が経過してしまうからだ。藤川さんは気づいたその日に窓口に行って解約したという。
1年間の支出をエクセルにまとめると、月ごとの傾向も見えるようになるので、節約を実行しやすくなる効果もある。特定の月だけ電気代が高いことがわかれば、その原因を突き止めやすくなるからだ。
既婚者の場合、固定費のカットには夫の協力が欠かせない。共働きであっても公共料金などは世帯主である夫が契約者になっているケースが多いからだ。そういう意味でもお正月休みは家族で話し合ういい機会かもしれない。
内容量を減らす隠れ値上げが増加
以上のような固定費カットは、一度実行すると継続的な効果が得られるから、家計を大きく改善することができる。以前はこれだけでも赤字家計を脱し、貯蓄ができるようになったがいまは違うという。もう一歩進めた節約が必要になっている。
その理由は負担増だ。このところ物価がじわじわと上がっていると実感している人は多いだろう。実際に商品の値上げは続いている。
たとえば、スターバックスは19年2月にドリップコーヒーなどの定番商品を10~20円値上げした。日本製粉は19年3月納品分から市販冷凍食品の価格を約5~約13%値上げしている。19年9月には、お菓子のブルボンが価格は据え置きでルマンドを13本から12本に、アルフォートを11枚から10枚に変更している。このような価格を上げずに内容量を減らす実質的な値上げが増えているのも、最近の特徴と言える。物価上昇が統計には表れにくいが、確実に家計を圧迫している。
家計簿アプリでやりくり費にもメス
加えて消費税率の引き上げが行われ、家計はダブルパンチを受けている状況だ。この負担増を乗り切るには、固定費のカットだけでなくやりくり費のカットも不可欠になる。やりくり費とは日々の食費や日用品代など、生活にかかるお金のことだ。
「そこで活躍するのが家計簿アプリです」
銀行口座やクレジットカードと連携させれば、収支を自動的に記録できる。現金で支払ったものはレシートを撮影すればOK。
いったんアプリの利用を始めると、できるだけ自動記録したいとの気持ちが働きキャッシュレス化しようとする。それがまた、家計の見える化を進めることにつながり好循環が生まれる。
おすすめの家計簿アプリとは
さまざまな家計簿アプリがあるが、藤川さんのお薦めは「Money Forward ME(マネーフォワードミー)」と「Zaim(ザイム)」だ。
いずれもレシートの読み取り機能など、家計簿を自動記録する基本機能は備えているが、「Money Forward ME」は資産状況をリアルタイムで確認できるなど、資産管理に向いているという特徴がある。一方「Zaim」は、月の予算を決めて家計簿の残高を表示するなど家計管理に向いている。好みに応じて選ぶといいだろう。