“英語は教えない、自習をコーチングする”をコンセプトに英語コーチングプログラムを提供するプログリット。個々人に合わせたカリキュラムと手厚いフォローで、TOEIC(R)のスコアは約3カ月で平均180点アップ、と驚異的な成果で注目されています。プロサッカー選手・本田圭佑氏のコーチングを担当する副社長・山碕峻太郎氏に、働く女性に効果的な英語の自習方法について、そのノウハウを伝授してもらいました。

自習の効果を最大化するのは“学習生産性×投下時間”

プログリット 副社長 山碕峻太郎さん

英語力を伸ばす公式は“学習生産性×投下時間”です。いかに自分に合った最適なカリキュラムに対して、どれだけ時間を投下できるか、これに尽きます。

自習のいちばんのメリットは、この投下時間を自分でコントロールできること。一方、自習だと「何をしたらいいかわからない」「続かない」といった2点がデメリットとなります。しっかりと時間をつくりながら、この2点を解消していけば、自習でもしっかり英語力を伸ばすことができると言えるでしょう。

投下時間を増やす2つのポイント

では1日どれぐらい自習をすればよいのでしょうか。成長速度を速めるなら、理想は1日3時間です。そして、これを3カ月続けること。なぜかというと、勉強を始めて2カ月を過ぎたぐらいに成長曲線が急カーブを描いて伸びるからです。ここがいちばんしんどい期間ですが、気づいたら伸びていたという人は皆、ここを乗り越えています。

ただし、なかなか時間がとれないという人は、1日1.5時間を半年あるいは1年と長くかけてもOK。

仕事に子育てに忙しい女性が1日3時間の自習時間を確保するのは至難の業でしょうが、投下時間を増やすポイントは次の2つです。

1 何を減らすかを決める

忙しい中でも必ず減らせる時間があるはず。減らす方法として、よく聞くのがこの3つです。

飲み会
いちばん多いのがコレ。プライベートと仕事、さらに仕事は緊急度と重要度に分け、緊急度と重要度の高いものには参加し、低いものは行かないと決めましょう。

仕事時間
仕事から帰る時間を決めると、仕事の優先順位が決まり、生産性が高まります。生産性を高めるには、タスクの量を減らすか、タスクにかかる時間を減らすかのどちらかです。

何もしていない時間
スケジュールを書き出してみると、何もしていない時間が意外とあるものです。この時間の多くがスマホをいじったり、テレビを見ていたりする時間。意識して削りましょう。

2 計画を立てる

何を減らすか決めたら、次は一週間のスケジュールを決めましょう。そうすれば仮に飲み会が入っても、前の日に多めにやるなど、時間をうまくやりくりできます。

そのうえで、一日をどう設計するか考えるんです。いつ、どこで、どんな教材に取り組むか決めて、その時間になったら自動的に行います。

たとえば、音声を聞いたあとに復唱するシャドーイングは、家事をしながらでも可能。ですから「朝、食器を洗いながら20分、シャドーイングをする」と決めてしまいます。その他、「1時間の移動時間で単語」「会社帰りにカフェで30分の多読」「ランチの時間を削って30分の文法」など、きっちりと計画を立てていきます。

会社を複数社経営して日米それぞれで約40社に投資をし、カンボジアの代表監督、プロのサッカー選手でパパでもある本田圭佑さんは、もう480日以上連続で毎日2時間半の自習を続けられているんですが、それを叶えられている理由のひとつは事前の綿密な計画立て。アメリカからヨーロッパへ移動する日であろうと、絶対に自習時間は確保されています。その結果、最近も新たな単語を2400ワードほど覚えられました。プライベートだから……ではなく、まるで仕事のアポのように自習時間を24時間の中に組み込むのが毎日の自習をやり抜くコツです。

TOEICのスコアが700点以下の場合にすべきこと

中級レベルであれば、まずはリスニング、語彙、文法、読解力など基礎力をしっかりと強化し、そのうえでオンライン英会話を利用して実践力を伸ばします。このうちのどれが自分は苦手なのか、どこを強化するべきなのか、ご自身の課題を認識したうえで重点的に行うと、効率よく自習をすすめられるでしょう。

とはいえ、多くのビジネスパーソンが「何を言っているのかわからない」「英語が喋れない」といったように、リスニングとスピーキングを課題としています。

そもそもリスニングとは、①耳に入ったワード=音声信号を“音声知覚”としてキャッチし、②そのワードの意味を理解する“意味理解”という2ステップから成立しています。これができるのは、過去に覚えた単語や文法などの“知識データベース”があるから。まず音声知覚でデータベースに問い合わせ、ワードの意味をキャッチし、意味理解の段階でもう一度、処理されて初めてリスニングできるというわけです。リスニングができないときは、そもそもデータベースに蓄積がないケースも多いと言えます。

一方、スピーキングはリスニングの2ステップを踏んだあと、“概念化”→“文章化”→“音声化”の3ステップを経て、最後にアウトプットとして出てくるものです。「英語をしゃべれない」という人に、その原因をくわしく聞いてみると「相手が何を言っているのかわからない」ということがあります。これは、そもそも音声知覚ができていないということ。

要はスピーキングの問題ではなく、リスニングの問題なのです。

ですから、どんなビジネスパーソンも特に強化すべきはリスニング。それも音声知覚のトレーニングです。

効果的なのはシャドーイング。シャドーイングは聞こえてきた文章を、2、3語遅れて発音するというトレーニングですが、これを1日1時間ほどやり続けると、音声が聞こえてきたときに瞬間的に発音できるようになります。シャドーイングで音を瞬時に認識できれば、音声知覚の自動化もできているということ。シャドーイングは自身のレベルよりワンランク下のものから始めるのがおすすめです。

TOEIC(R)のスコアが700点以下なら、まずは単語や例文をしっかりと覚えて、データベースを完璧にすることから始めましょう。

自習が続かない「3つの原因」

自習が続かない人の原因は3つ考えられます。

1 成長実感が得られないとき

いくら頑張っても成長していないと感じると、やる気がなくなります。目標を週ごとにブレイクダウンして、できたところとできていないところを可視化しましょう。テキストを見返したり、ボイスメッセージを聞いたりして、過去の自分を振り返るのが有効です。

2 納得感がないとき

なぜ自分がこれをやるのかを理解し、納得できていないとモチベーションがキープできません。「よくわからないけど、これはよさそう」とやっているものは、たいてい続きません。そのためには、自分が信じた理論を見直し、なぜこれをやるのか腹落ちさせること。そして、いざ「この一冊の理論で自習する」と決めたなら、その一冊の最後のページが終わるまでは、他の理論には脇目も振らず学びぬくことがおすすめ。継続に必要なのは精度以上に腹落ち感なのです。

3 目標の解像度がはっきりしない

自分がこの英語ができたときに、どんな世界が待っているかということが明確にイメージできると、投下時間を増やしやすくなります。何故英語力をアップさせたいのか? を端的に述べられるようにすると良いです。

また、高い目標を設定しすぎないことも重要です。どうしてもネイティブレベルの英語力を目指してしまいがちですが、自分に合ったレベルで目標を設定するようにしましょう。

完走するには仲間の存在が重要

1日3時間の自習を3カ月続けると、やがて成果が出てきます。とはいえ何かを削り、3カ月コミットするのはきついもの。モチベーションをキープするには、なぜこの3カ月間、英語に時間を投下するのか、その意味合いを理解しておきましょう。そして、毎日振り返って成長実感を得ること。さらに大切なのは、仲間を見つけるということです。

一人で自習を続けるのは、やっぱりしんどい。ですから英語自習専用ツイッターアカウントを開設して日々の勉強内容や成果をつぶやいてみるのもいいし、会社の同僚とグループをつくって自習進度を報告し合ってもいい。誰かといっしょにやることは思いのほか大事だと知っておきましょう。

以前本田さんも「夢を叶えられないときは夢を忘れるとき。夢を忘れなければ一生それを追い続けるから、絶対に叶えられる。ではどうやって忘れないようにするのかと言うと、毎日言えばいいだけなんですよ」とおっしゃっていたのですが、自分の目標を忘れずモチベーションを保ちつづけるのに、毎日目標を確認し合える仲間がいることは効果的だと思います。