地球環境破壊を訴えるドキュメンタリー映画を製作し、数々の賞を取ってきたロックフェラー家のメンバー、スーザン・ロックフェラーにインタビュー。「富と機会は還元するもの」と語る彼女が選んだキャリアとは……。

行動へと突き動かされた環境問題の実態

1970年代にアースデイがつくられた頃から、地球環境とサステイナビリティについては関心がありました。大学で環境問題と有機栽培を学び、農業と漁業のプロジェクトに関わったアラスカ北極圏でイヌピアット(アラスカの先住民族)と共に暮らしたことが大きく影響しているのだと思います。しかし、「いざ行動に起こさなくては」と危機感を抱いたのは、雑誌『ザ・ニューヨーカー』に掲載されていた「The Darkening Sea」という記事を読んだときでした。二酸化炭素がいかに海の生態に影響を及ぼし、海水の気温上昇を引き起こし、食物網を破壊するような酸化につながっているかということが書かれ、私は衝撃を受けました。

そうした実態とこれまでの学びが一緒になり、より私たちの地球を守るために行動しなければいけないと思い始めたのです。

これまで、環境問題や発展途上国の医療、音楽療法などをテーマにドキュメンタリー映画をつくってきました。そして、映画製作以外にも、海洋自然保護団体「OCEANA」や持続可能な農業を提唱する「ストーンバーンズ」の理事も務めています。

さらに、美しい海、美しい地球を次世代の子どもたちに渡していかなければいけないという強い思いを、メッセージ・ジュエリーという形で多くの人に感じてもらおうと、私の名前を冠した「SUSAN ROCKEFELLER」というジュエリーブランドも立ち上げました。売上の一部は海洋自然保護活動に役立てています。2019年には、アトリエ・スワロフスキーとコラボして、「Beautiful Earth Collection」という自然の色、素材、神秘を感じてもらえるようなグリーンやブルーをあしらったジュエリーコレクションも発表しました。女性の美と地球の美、両方にインスパイアされ、そしてその両方を称えるジュエリーです。

過去15年ほど夫と共にアジアを旅行してきました。その中で、建築資材、洋服の繊維、そして食べ物にまでなってしまう竹の素晴らしさに気づいたのです。竹は、森林再生にも大きな役割を担います。そして中国で絶滅危機にあるジャイアントパンダの食料でもあります。そうした、健全なエコシステムを考えさせる、アジアで出合った竹とパンダも、ジュエリーのデザインのインスピレーションになっています。

アトリエ・スワロフスキーとコラボした「Beautiful Earth Collection」は、ジャイアントパンダの生息地である全世界の森を保護する団体「ザ・ネイチャー・コンサーバンシー(The Nature Conservancy)」を支援している。

「ガラスの天井」を打ち破るには声を上げること

女性が働き、そして女性の声を社会に反映させていくのは容易ではありません。

映画業界では、女性が平等に扱われてこないことが多くあり、今後改善しなければいけないと思ってきました。映画業界で影響力を持てるようになるまでが大変でしたが、20年以上を過ぎ、やっと私たちの会社「Louverture Films」をとおして、男性と女性の素晴らしいネットワークができました。

成功の秘訣は、共通の土台を見つけ、ともに働くことです。男性ばかりの職場にいるのならば、あなたの声をきちんと聞いてもらえるようにすることが大事です。そして、あなた自身も自分の考えをきちんと表現して、伝えるようにとにかく実践あるのみです。あなたの提案がしっかりと評価されるまであきらめず、少しずつでも前進していけるといいですね。

小さな一歩でも、行動することは、あなたが大事にしていることの価値をきちんと伝えることでもあるのです。あなたが変えていけるのです。

そして、あなたの意見は、若い人たちにも影響力を持っていることにも気づいてくださいね。メンターやインフルエンサーとして、若い人たちと対話していきましょう。

私は、年齢を重ねるごとに、いかに自分が知らないことが多いか、そして、内面の知恵が人間性をつくり出すことを思い知らされます。どんなに貧しくても、人生を他人のために捧げている人もいます。大なり小なり、私たちも還元していくことを考えなくてはいけません。小さな親切の行動が積み重なれば大きくなるのです。

富と機会は、還元すべきもの

「ノブレス・オブリージュ」という考え方があるのはご存じかと思います。富と機会というのは、還元する義務があるものだと思っています。あなたの時間、才能、宝物など、与えられるものはたくさんあります。世界の苦しみを癒やすために、みんなで協力しなければいけないのです。私たちの地域にも世界全体にも、困難を抱えた人はいますし、動物たちだって声を上げられなくてもこの地球社会の一員です。社会の一員として、そうした脆弱なコミュニティを守っていくのだという強い意思を持ちましょう。

地球環境に対しても、日々の生活で少しずつ変えることができるのです。例えば、洋服や食べ物などの選び方を変えてみたり、もしあなたが会社のトップ役職についているのならCSR(企業の社会的責任)やESG(企業の環境、社会、ガバナンスへの取り組み)にもっと目を向け、確固たる取り組み姿勢を見せましょう。

みなさんも、日々の生活の中で少しでも環境にやさしい行動を心がけてみてください。そして、必要なことには声を上げてください。あなたの選択が、影響を与える行動だと信じてください。

そして、モノの購入を減らし、もっと健康的で環境が継続できるような食材を使い、自家用車より公共交通機関を使ったり歩いたりしてみてください。

文化、芸術、美、海の恵にあふれ、訪れる人を魅了し、インスピレーションを与える美しい日本をどうか大事にし、楽しんでください。人は、愛するものを守ります。小さなさざ波が大きな波へと変わります。一緒にもっと良い世界をつくっていきましょう。