リーマンショック並みの金融経済クラッシュが来たら――。そんな風に考えると不安が大きくなりますが、最悪を想定し備えることはとても大事。家計コンサルタントの八ツ井慶子さんが提案する、“家計防衛時代”に身に付けたい大事な4つのこととは?
※写真はイメージです(写真=iStock.com/wichayada suwanachun)

リーマンショック後の深刻な相談

こんにちは、家計コンサルタントの八ツ井慶子です。

いまちょっと気になる家計に関するテーマを取り上げてみたいと思います。

それは、“家計防衛時代”に入るのではないか、です。

2008年9月、米国の投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破たんしたことに端を発し、世界同時株安が引き起こり、リーマンショックといわれるほど世界にまたがる大規模な金融危機が起こりました。

その余波は実体経済にまで及び、企業倒産、大規模なリストラ、収入減、資産の暴落、将来への不安増幅等、さまざまな形で私たちの生活に多大なる影響を及ぼしました。

当時のご相談ではとても深刻なケースも見受けられました。

家計相談は「景気に反比例」と俗にいわれ、世の中の景気が悪くなると、家計相談が増える傾向があるとされていました。ところが、リーマンショックの後は相談件数もグッと減り、通常のレベルを超えた景気悪化であることを感じました。

当時痛感したのは、会社員よりも自営業の方々は本当に深刻だな、ということです。売り上げが減り、貯蓄を取り崩し、家を売却し、体を壊し……、とまさに負の連鎖でした。

「ようやく気持ちを切り替えて、相談に来ました」といわれたときには、本当にいたたまれない気持ちとありがたい気持ちが入り混じり、自分に何ができるか、とにかくご相談者と一緒に考えようと必死だったのを覚えています。

もちろん会社員の方々がたいへんではなかったということではありません。ボーナスが減り、資産運用していた方は貯蓄額が減り、ライフプランを再検討せざるをえないケースもありました。

リーマンショック以降、顕著な傾向としては、将来の収入予測がグッと厳しくなったことです。

家計相談では、現状把握をするとともに、将来予測も加えながら、「いま」何ができるかを考えていきます。そこで、将来の収支予測が必須になるわけですが、リーマンショックの前と後では、顕著にご相談者の意識が変わったように思いました。

当時ほどではないにしても、いまもその傾向は根強くある気がします。

経済クラッシュはいつ起きてもおかしくない

家計相談からも分かるように、いまの複雑で広範囲につながる世界の金融市場がひとたび大混乱となれば、決して対岸の火事ではなく、私たちの生活(家計)に多大なる影響を及ぼします。

会社員であっても、自営であっても、生活再建にはやはり職あってのことだったわけですが、当時、非正規の方々含め、多くの方が失業に追い込まれました。

注目に値するのは、この時期の生活保護受給総世帯数の増え方です。生活保護の総世帯数の推移をみると、2008年の1年間で増えた世帯数に比べ、リーマンショックの翌年である2009年では、なんと3倍ほどに一気に増えているのです。2010年もその増加傾向は弱まることなく、リーマンショック後に生活保護の受給総世帯数は大きく増えました。伸びは鈍化したものの、総世帯数はいまも(直近のデータまで)増え続けています。株価は戻っても、元の生活に戻れていない人々がどれほどの数いるのでしょうか。リーマンショックの影響は、いまだ終わっていないのです。

リーマンショックから11年が経過しました。

過去の金融経済クラッシュを考えると、いつ再び起きてもおかしくないのかもしれません。金融市場の規模がますます膨らんでいるいま、次のクラッシュはリーマンショックをしのぐ規模になるかもしれません。

ご存知の方も多いと思いますが、日本では2016年2月からマイナス金利を導入しました。その影響が金融機関に及んでいます。

朝日新聞の記事によると、地方銀行の2019年3月期決算では、全体の7割に相当する72行で減益・赤字転落。記事では、各地銀の経営に影響を及ぼす共通の背景として、マイナス金利の影響以外に高齢化による預金の積み上がりや、人口や企業の減少による貸出先の減少を挙げています。

大雨も怖くない最強の備え4つ

決して不安をあおるつもりはありませんが、私自身はこうした中での次のクラッシュを非常に不安に感じています。が、世の中のムードは私が思うほどでもないように感じますので、杞憂に終わればいいかなとも思います。

とはいえ、「備えあれば憂いなし」。来るやも知れぬ“家計防衛時代”に準備をしておくのと、そうでないのとでは対応に違いが出ると思います。雨予報の雨に備えて、傘を持つようなものです。雨が降るかどうか分かりませんが、傘があれば一定の安心は得られるでしょう。そのような感覚で、家計防衛時代に備えることを考えてみてはいかがでしょうか。

では、どう備えたらいいかを考えてみたいと思います。

収支バランスを重視する

まずは基本を押さえておきましょう。家計の3要素は「収入」「支出」「貯蓄(運用)」です。複雑な時代でもこれは変わりません。家計をよくするのに自らでコントロールできるのは、収入アップ、支出カット。この収支バランスがとても重要です。

収入アップには2通りあります。額を増やすことと、長く働いて生涯収入を増やすこと。人生100年時代には後者が家計には大きく影響してきますので、まずは長く働く「意識」を持つことが大事でしょう。

支出は、むやみやたらと削ればいいというものではありません。貯めることが目的にならないでいただきたいなと常々思うのですが、貯蓄すらいつか使うと思えば、なんだかんだ大事なのは使い方です。

何を削るかではなく、何を買うかにフォーカスして、本当に必要なもの、本当に欲しいもの、自分の人生を豊かにしてくれるもの(こんまりさん風にいえばときめくもの)に使うことを意識してみてください。その結果として、ムダづかいを減らしていきます。月々の効果は小さかったとしても、寿命が延びるほど累計額は大きくなり、日々のコツコツは決して侮れません。

価値あるものに目を向ける

金融市場が混乱すれば、そのものに価値のあるものを持ってもいいかもしれません。金、宝石、絵画、古銭等……。

とはいえ、多くの方が簡単にできることでもないかもしれません。できる人や、興味のある方はトライしていただくとして、さらにもっと身近で、もっと根本の“価値あるもの”に目を向けてみてはいかがかなと思うのです。

それは、あなた自身です。

この世に生を受けて、日本というすばらしい国に生まれて(と私は思っているのですが)、ちょっとたいへんなご時勢かもしれませんが、それでも私たちはちゃんと生きています。

お金中心の金融経済よりも、人間の尊厳の方がよっぽど大事なはずです。一人ひとりが唯一無二で、プライスレスであること、経済よりももっともっと価値のあるものだということを再確認してみてはいかがでしょうか。

このことに気づけると、人に優しくなれます。いい仲間づくりにもとても大事な観点です。今後、自助のみならず、共助(助け合い)が大事とよくいわれますが、いい仲間もプライスレスなものです。

不確実性の高い時代に求められること

地域活動の情報にアンテナを張る

高齢化や人口減少、空き家問題が深刻な地方では、すでにさまざまな取り組みがなされています。事例を知ることで、いざというときの“傘”になるのではないでしょうか。

例えば、介護ボランティアをすることでポイントをもらい、それを実質的に公的介護保険料に充当できる取組みが、一部の自治体で行われています。“労働”が社会保険料として機能するとても興味深い取り組みです。

また、地域のボランティア活動を行うこと等で、地域内で使える地域通貨を得て、域内のレストランなどで食事ができる取組みもあります。地域通貨のすべてが成功事例ではないので、まだ留意する点はあると思いますが、長く続いているものの中には、住民の安心につながるような取り組みを行っているところもあります。域内でお金と人との交流・循環が生まれれば、心を込めてお金を回すことができそうです。

対象者をひとり親に限ると、自治体内への移住を促しながら、介護事業所での従事を斡旋しつつ、生活の補助を行ってくれる自治体の例もあります。

こうした情報は多額の広告宣伝費をかけて広めることが難しいため、私たちが能動的に情報収集することが大事です。だまって入ってくる情報は、基本的に支出を促すものでしょう。

自分の住まいの自治体のホームページを見てみたり、ネットニュースや雑誌、書籍などで地域の活動をキーワードにしたものは気を付けておくなどして、少しずつ関心を広げてみるといいと思います。

柔軟性を持つ

金融危機に関わらず、これからの日本社会は非常に大きく変化する時代を迎えます。これまでの常識や他の人に捉われることなく、心を柔軟にして、適宜判断していくことが非常に重要になってくると思います。人任せにせず、自分で考えて、自分で決断することです。何かに迷ったら、ご自身が楽しい方、笑顔になれる方を優先して選択していただきたいなと思います。

心の柔軟性は、不確実性の高い時代こそ、もっとも求められる資質ではないかと思います。

これから日本社会はどのようになるのでしょうか。

私自身も本当に頭の中がごちゃごちゃになるくらい考えていますが、よく分かりません。いまも勉強中です。

ただ、上記に挙げたことは、これまでの家計相談の経験を通して、家計にとってきっと大事であろうと思うものです。何か少しでも参考になればうれしいです。