ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子です。2019年10月に消費税が10%に上がる予定です。「消費税が10%に上がったら大変!」と思っている人も多いでしょう。ですが、この10%という数字は世界的には低い方だということをご存知でしょうか――。
※写真はイメージです(写真=iStock.com/Satoshi‐K)

消費税の国際比較

消費税(付加価値税)の標準税率(2019年1月現在)は下記の通りです。

デンマーク 25%
スウェーデン 25%
ノルウェー 25%
イタリア 22%
ベルギー 21%
オランダ 21%
フランス 20%
オーストリア 20%
イギリス 20%
ドイツ 19%
中国 16%
ニュージーランド 15%
フィリピン 12%
韓国 10%
インドネシア 10%
日本 8%
タイ 7%
シンガポール 7%
台湾 5%
カナダ 5%

ヨーロッパなどの多くの国では消費税は日本よりもかなり高いのです。デンマークやスウェーデンなど北欧をはじめとした高福祉国が多いからだと感じるかもしれません。ですが、日本の社会保障も世界標準からすると実は非常に高福祉なのです。

例えば、私が住んでいるシンガポールは税率が低いことで有名ですが、その分、社会保障も手薄です。例えば、医療費の自己負担割合は6割程度(日本は13%程度)、年金に関しては積立方式で、自分で現役時代に積み立てて、運用をして増やした分で老後の生活に備えるという形です。

現在20歳の人は68歳まで働く必要性

厚生労働省は2019年8月27日、公的年金の長期見通しを試算する財政検証結果を公表しました。経済成長率が最も高いシナリオでも将来の給付水準は今より16%下がり、成長率の横ばいが続くケースでは3割弱も低下するという内容でした。60歳まで働いて65歳で年金をもらう今の高齢者と同水準の年金を現在20歳の人がもらうには68歳まで働く必要があるとの試算も示しました。

少子高齢化によって需給のバランスが崩れていることが原因ですが、そもそも日本の社会保障は高福祉の割に低負担が続いており、制度を維持させるためには負担を諸外国程度に引き上げる必要があるとも言われています。

消費税で比較をしても、税率が低くて有名なシンガポールと同程度なのです。将来的には消費税はヨーロッパと同程度の25%程度まで引き上げられたとしても日本の財政を考えるとおかしくはありません。

また、所得税・住民税負担の国際比較を見ても、イギリス、ドイツ、フランスなどヨーロッパの先進国と比べるとかなり低く、アメリカと同程度です(https://www.nta.go.jp/taxes/kids/hatten/page13.htm)。

社会保障の充実を求めるのなら、ヨーロッパと同じように負担を高くしていかないと財政が釣り合わなくなります。あるいは、アメリカやシンガポールのように、税負担を低くして保障は薄くという自己責任型にするかどちらかでしょう。

日本の物価は世界的にも低い?

では、もう一つ、住みやすさの基準になる物価についてはどうなのでしょうか?

組織・人事コンサルティング会社であるマーサーの『2019年世界生計費調査‐都市ランキング』によると、駐在員にとって最も物価の高い都市トップ10のうち8つがアジアの都市になりました。ランキングの上位には香港(1位)、東京(2位)、シンガポール(3位)、ソウル(4位)チューリッヒ(5位)、上海(6位)、アシガバット(トルクメニスタン)(7位)、北京(8位)、ニューヨーク(9位)、深セン(10位)に。東京は相変わらず世界で2番目に物価が高い国となっていますが、これは外国人駐在員向けの住宅という高級物件で比較しているのに加えて活発な住宅市場のコストが高いことにも起因するようです。

もう少し庶民的な数字で考えるために、マクドナルドのビックマック(レギュラーメニュー1人前)の価格(USドル)を比べてみると、東京は6.26、ニューヨーク10.22、シドニー7.5、チューリッヒ13.63、パリ9.08、ローマ7.83と他の先進国と比べるとかなり安くなります(https://www.mercer.co.jp/newsroom/2019-cost-of-living.html)。

ランチが安くておいしい

「日本はランチが安くておいしい」とシンガポールで働くショップ店員などが語るように、今や日本は、比較的所得が低い層でも気軽に旅行に行ける国のようです。香港やシンガポールのような欧米化された国やオーストラリアや米国、ヨーロッパでは、日本のように1000円でランチセット(ドリンク込み)を見つけるのは非常に難しく、下手をするとドリンクだけでその値段になるのではないかというくらいです。例えば、ハンバーガーとカフェオレで3000円など。ただし、サイドに付くポテトなどとても食べられないくらいの量なので、小食な日本人にとっては子供などとシェアをしてちょうど良いボリュームではありますが。

日本は化粧品も安い

先進国では総じて量も値段も倍近いと考えてもよいほどランチの値段は変わります。一つの理由として、物価だけではなくランチは空いている時間を利用してお店を知ってもらうために安く提供しようという日本的な概念がないことも挙げられます。海外では昼も夜もアラカルトメニューは全て同じ値段で営業をしている店舗も多いからです。

さすがに日本人の私も4年以上海外に住んでいるとこの価格にも慣れてきて、日本に帰ると特にランチ代が著しく安く感じてしまうのです。日本に帰って何をしたいかというと、毎日安くておいしいランチを食べ尽くしたいという気分になります。また、ドラッグストアの化粧品もかなり安いので爆買いをしてしまいます。中華系は抜け目がないので、「日本ではブランド品が安い。ドラッグストアの化粧品も安くていい。食べ物が安くて美味しい」と旅行に来て消費をしていくわけです。1本1000円もする飲む美容液をお土産に頼まれたこともあります。ただ、シンガポールの高級エステサロンでは3Dパックなどが1枚4000円くらいで売られていることもあるので1000円など安く感じるのかもしれません。1000円代で30シートも入っているドラッグストアのパックは言うまでもありません。

資産運用で将来の購買力を維持しよう

このように、日本では今のところ、低負担で高福祉が受けられる、物価も安いという点において世界と比べて見ると日本人、もしくは日本社会に溶け込める人にとっては明らかに住みやすい国だと言えます。ただし外国人にとっては、一定レベル以上の不動産は高い、交通費も高い、英語が通じないなど長期で生活をするには不便も多い国。とりあえず観光で来るのであれば楽しめるのでしょう。

しかし、今後は少子高齢化がますます進み、財政も更に悪化していくことが予測されます。そうなると、負担も増え、給付も削られ、現在と同程度の水準で暮らしていくのが難しくなるかもしれません。賢い女性は今のうちから将来に備えて資産運用をするなどで将来の購買力を維持できるよう努力をすることが大切です。仕事などで外国に出るチャンスがあれば、そのチャンスを積極的に引き受け、日本のことを客観的にみるのも良いかもしれません。