忙殺されているときでも旅行する
最近の富裕層には、ワークライフバランスといった発想がありません。その理由として2つ考えられます。
ひとつは、頭の中はつねにアイドリング状態であり、ワークとライフの境目が非常にあいまいな点が挙げられます。
プライベートな時間でもつねに仕事について考えています。たとえばショッピングをしていても「このマーケティングはうまいな」「これ、ウチの会社で取り入れられないかな」などと参考にしているなど、日常生活すべてが仕事モードであり学びの場なのです。
一方、多忙な仕事のさなかでも、急に思い立って旅行に行ったり、誰かに会いに行ったりすることがあります。それで英気を養って再び仕事に戻って来るとか、人脈や取引先を開拓してくる、といったこともあります。
つまり彼らの感覚からすると、ワークとライフは一体であり、むしろワークライフ・インテグレーション(統合)と言い換えた方が良いのかもしれません。
だからこそ、彼らにオンとオフを分けるとか、ワークとライフをバランスさせるといった発想が出てこないのでしょう。
オン・オフを分けるのはもったいない
富裕層のほとんどが「起業」を選ぶ理由もそこにあります。
そもそも「起業」とは衣食住と同じくらい人間の本能に根差したもので、自らの知恵と努力と才覚で生きて行こうという、生々しい生存欲求に他なりません。
未知のことに挑戦する姿勢は、人間だけが持つ知的好奇心でもありますし、自分が提供する商品やサービスが社会に貢献しているという実感は、究極の自己表現手段、自己実現手段と言えます。
そんな楽しいことをしているわけですから、オン・オフを分けるのはもったいないぐらいなのです。
次に富裕層は、自分のライフステージにおいてワークとライフがアンバランスになるのは当然のことであり、その時々で最適な対応をすればいいと、無意識の思考が根底にあるのではないかと考えられます。
たとえば独身であれば仕事一辺倒であっても、結婚して子どもが産まれれば、仕事のペースを落とし家族に割く時間が多くなります。親の介護が発生した場合などでも同じです。そして子どもが大きくなって手がかからなくなれば、再び仕事の割合が増える。それは当然である。
富裕層男性は家事育児にも積極介入
にもかかわらず、これほどワークライフバランスがもてはやされる理由はやはり、会社に縛られて時間の融通が利かないとか、「育児は妻がやるべき」などといった根拠のない常識にとらわれて、自分の時間や生き方を適切に調整できないからなのでしょう。
しかし起業して自分がトップになれば、勤め先からの束縛から解放され、自分で就業規則を作れますから、ワークとライフは自由に調整することができます。
そして、富裕層の男性は「家事育児は女性の役割」などといった固定観念がない人が多いので、積極的に家事にも育児にも介入しますし、リモートワークなど在宅勤務を取り入れる柔軟性を持っています。
お金があるから家事をアウトソースするのではない
その柔軟性を反映していることのひとつが、外部リソースの積極的な活用です。たとえば海外では夫婦共働きが中心で、ベビーシッターや家政婦を雇うのが日常茶飯事なように、日本の富裕層もお金を払って外部の手を借り、自分の時間を生み出しています。
彼らには「他人が家の中に入るのが嫌」「シッターに預けるなんて子どもがかわいそう」「親の介護は家族がやるべきだ」などという非合理的で古い価値観はありません。
そうすれば、子どもの世話や親の介護のためにキャリアを犠牲にする必要もないし、それで浮いた時間で仕事もできるし、家族との間にも余裕が持てます。
それは「お金があるからできることだろう」ではなく、自分の限られたリソースをどこに配分すれば、自分や家族がもっともハッピーになるのかを考える、極めて発展的な姿勢なのです。