富裕層は猛勉強していて、一般人は無関心。知識の差が大きい分野が「税制」です。多くの富裕層と接点をもつ午堂登紀雄さんは「彼らが知る節税法は、一般の会社員にも有益」と断言します――。
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お金持ちは税金をコストと考える

富裕層と一般の人との知識差が大きい分野のひとつに税金があります。実際、税理士以上に税法に詳しい人も多く、どうすれば財産を残せるか、つねに国内外の課税の仕組みや税制改正に敏感です。というのも彼らは、税金の知識があるかないかで、手元に残るお金の額が大きく変わることを知っているからです。

富裕層の多くは事業主であり多額の税金を払っていますから、税をコストととらえ、いかに合法的に節税するか、日々勉強し知識を増やしているというわけです。

一方、会社員の場合、申告納税は会社が代行してくれるので、税に無関心という人も少なくないようです。

しかし、あまりに税制に無知では、合法的に払わなくて済むはずの税金、申告すれば取り戻せる税金を見逃すことになりかねません。たとえば贈与や相続などでも、課税の仕組みや軽減措置といった税制上の特例などを知っているか知らないかで、納税額はずいぶん違ってきます。

計画的に贈与をしてこなかったばかりに多額の相続税が課税されたり、知らないがゆえにあとで贈与税の追徴をされたりという人がたまにニュースになります。会社員であっても、税を学ぶことは有益だと言えるでしょう。

温泉に行って節税する方法

例えば扶養する老親がいれば所得控除が受けられます。年間10万円以上の医療費が発生すれば、超えた部分を所得から控除できる医療費控除、生命保険や医療保険に加入すれば保険料控除、税額から直接控除される住宅ローン減税、住民税から控除されるふるさと納税、配当や売却益が非課税となるNISAなどなど、節税策をすでに知っていて活用している人も多いと思います。

では、「温泉に行って節税できる」と聞いて信じられるでしょうか。

先ほどの医療費控除に関するものですが、通院などの直接的な治療費以外にも、行政が認定する施設において治療行為の一環という医者の証明書があれば、医療費控除を受けることができる――。このような、あまり知られていない情報もあります。

iDecoで節税&貯蓄がかなう

ほかにもiDecoと呼ばれる個人型確定拠出年金。すでに加入している人も多いと思いますが、節税と貯蓄という2つの目的が同時に達成できる方法です。掛け金は全額所得控除になり、所得税と住民税の削減になる。引き出せるのが60歳以降で、商品構成を保険や定期預金だけにしておけば、元本はほぼ全額戻ってきます。

たとえば年収500万円の人であれば、所得税率は10%。住民税も10%なので、単純計算で掛け金に対して20%の節税になります。厳密には少し計算は異なるのですが、これが掛け金を払い込んでいるあいだ中、ずっと続くのです。こんな高利回り商品はなかなか見つからないでしょう。増えるかどうかわからない投資信託にお金をつぎ込むより、iDecoのほうが断然有利です。

民間保険は節税目的でかけるのも手

さらに民間の保険の所得控除の活用です。生命保険、医療保険、個人年金の3種類があり、それぞれ年間8万円以上の払い込みで、最大の所得控除が受けられます。そこで、所得税の所得控除が最大年間12万円+住民税の所得控除が最大年間7万円という、控除枠をフルに使える最小の金額だけ加入するとします。いずれも掛け捨ての保険ではなく、満期返戻金がある貯蓄型のタイプにしておけば、中途解約さえしなければ、満期後には払込保険料の100%以上が戻ってきます。

たとえば年収500万円の人が3種合計で24万円の掛け金を払えば、所得控除が12万円、税率10%で12000円の節税。住民税の所得控除は7万円なので、これも税率10%で7000円の節税。払い込み金額24万円に対し19000円の節税なので、年利約8%の利回り商品になります。

年収が300万の場合は所得税率が5%ですが、住民税は一律10%なので、それでも所得税6000円+住民税7000円の節税になり、5.4%の利回り。民間保険はたいていクレジットカードで払えるので、さらにポイント還元が受けられます。1ポイント還元のカードを使えば、年利6%を超えます(税率は家族構成などによって変わります)。

また、自営業者や会社経営者に限りますが、小規模企業共済(経営者や自営業者が加入できる退職金)も掛け金全額が所得控除になります(掛け金は月7万円まで)。あるいはセーフティネット共済(中小企業倒産防止共済)という保険があり、月間20万円まで、総額800万円までという上限はありますが、掛け金が損金算入となるため、法人の節税になります。(法人の実効税率を30%とすると、拠出した800万円に対し、240万円もの節税になる)。

副業で節税できる?

それだけではありません。働き方改革の一環として、副業が解禁される企業も増えてきましたが、これも節税につなげることが可能です。もちろん、副業規定は会社によって違うので確認してからですが。

副業をする場合、個人なら青色申告承認申請書を提出し、複式簿記の原則に従って帳簿をつけて申告することで、最大65万円の所得控除を受けられます。そして、たとえばオークションやアフィリエイトなどのネットビジネスをやり、その事業に要したと説明できるパソコンや書籍、携帯電話などの通信費、交通費、消耗品などを経費として落とすことができます。

これでもし事業が赤字になってしまった場合、給与所得と損益通算し、給与から天引きされた税金を取り戻すことができ、さらに翌年からの住民税が安くなって手取りが増えます。住民税で保育園料金が決まる認可保育園の保育料も安くなります。

迷った場合は税務署に相談を

ただし、多くの人にとって副業収入は少ないですから、税務署からは「事業的規模とは言えない」「その経費は本当に事業に必要なのか?」と否認される恐れもあります。

経費は、「この仕事で必要だった」と具体的客観的に説明できることが必要です。事業的規模については、「スタートアップで規模が小さいのは当たり前。十分に時間と労力を投入している」と立証できれば、れっきとした事業であると主張することにおいては、法律的には問題ないでしょう。ただし、迷った場合は税務署や税理士に相談することをおススメします。

いずれにせよ、税の仕組みを知ることは、財産をより多く残す一助となるはずです。