「富裕層の世帯数」日本は世界3位
ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子です。シンガポールはお金持ちの国で有名ですが、日本も富裕層の数は非常に多い国です。ボストン・コンサルティング・グループの世界の家計「金融資産(※1)」に関する調査(2015)によると、金融資産が1億ドル(約10億円)を超える「超富裕層」の割合が多い国は、1位香港(10万世帯当たり15.3世帯)、2位シンガポール(同14.3世帯)、3位オーストラリア(同12.0世帯)という順番になっています。
同調査によると、金融資産が100万ドル(約1億円)以上の富裕層世帯は1位アメリカ(約690万世帯)、2位中国(約360万世帯)、3位日本(約110万世帯)ということで、日本も富裕層の数を見ると、3番目に多いのです。
日本のお金持ちの内訳
野村総合研究所の調べ(2017年)によると、「純金融資産保有額(※2)」が、5億円以上の「超富裕層」が8.4万世帯、1億円以上5億円未満の「富裕層」が118.3万世帯、5000万円以上1億円未満の「準富裕層」が322.2万世帯、3000万円以上5000万円未満の「アッパーマス層」が720.3万世帯、3000万円未満の「マス層」が4203.1万世帯と、ピラミッドのような形になっています。
※1:金融資産とは一般に土地や家屋などの実物資産を除いた預貯金や有価証券などを指す。
※2:純金融資産保有額とは、預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険など、世帯として保有する金融資産の合計額から負債を差し引いたもの。
働く女性の間では、2000万円も貯金があるとすごいと思われがちですが、富裕層の定義からすると、なんとマス層に分類されてしまうのです。日本では高齢世帯が資産を保有しており、富裕層の多くは株式を保有している人も多いので、アベノミクスの恩恵を受けて資産が増加しているのです。この調査には不動産など実物資産は含まれていませんが、富裕層の多くは不動産も保有しているのでそれを含めるとより差がつきそうです。つまり、資産運用をする余裕のある家庭はどんどん豊かになっていくのです。
シンガポールを目指す日本人富裕層の姿
外務省の海外在留邦人数調査統計(2017年10月1日現在の集計)では、日本の領土外に在留する邦人(日本人)の総数は、135万1970人で、前年より1万3493人(約1%)の増加となり、統計を開始した昭和43年以降最多となりました。地域別では、北米が在留邦人全体の37%、アジアが約29%、西欧が約16%、国別では1位米国(約32%)、2位中国(約9.2%)、3位オーストラリア(約7.2%)、4位タイ(約5.4%)などですが、シンガポールも約2.7%(3万6423人)と、人口が少ない小さな国の割には非常に日本人の割合が高くなっています。
シンガポールにやってくる日本人富裕層の姿としては、ビジネスや投資などで成功をした人が多いです。最近の傾向としては、仮想通貨長者となった人たちがシンガポールに来るケースも増えています。20代30代など若くして億万長者になった方も多くいます。ちょうど子育て世代なので、子供の教育にも関心が高く、シンガポールのインターナショナルスクール(以下インター校)は富裕層に人気があります。
シンガポールにはインター校が20以上あって、日本のインター校並みの料金(年間250万円前後)なので富裕層にすれば支払える金額です。人気の理由として、間口の広さなどが挙げられます。最初は英語ができなくても受け入れてくれて英語力を磨いてくれる学校が多いのです。入学試験も日本の幼稚園や小学校受験と比べると比較的楽で、高校までエスカレーターなので学校にある程度お任せできます。名門校に行けばよい大学にも進学しやすいのです。学費を準備し、手続きをしっかりとすれば受け入れてくれるシンガポールのインター校は人気が高いのです。相変わらず母子留学も人気で、日本だけではなく中国など周辺アジアから来ている家庭も多いです。
富裕層の中にはプライベートバンクやヘッジファンドを使って資産運用をしていて、資産運用の利益で子供の学費をまかなっているという人たちもいます。プライベートバンクとは富裕層向けの銀行サービス。通常はプライベートバンカーという資産運用のプロフェッショナルが担当につき、顧客のニーズに合わせた金融商品をオーダーメイドで提供するのです。シンガポールには富裕層向けのプライベートバンクも20以上あり、日本人のバンカーもたくさん働いています。まさに、富裕層にとっては至れり尽くせりな国なのです。
富裕層の2大関心ごと
富裕層の関心ごととして、1つは子供の教育ですが、もう一つに税金のことがあります。富裕層ほど会計士や税理士などの専門家を雇い、税金対策をしっかりとしています。より低い税率を求めて海外に渡る富裕層も多いのです。
給料の高い外資系の金融機関で働いていた友達は、日本にいた時にいかに重い負担があったかシンガポールに来て気付かされたそうです。所得税で45%、住民税で10%、社会保険料で約14%取られると、いかに高級取りでも手元に残るものはごくわずかになります。シンガポールの所得税の最高税率は22%で、住民税はありません。また、キャピタルゲインも原則として非課税、相続税や贈与税もありません。
そのため、家族全員で海外移住をする家庭も増えているのです。相続税法の「10年ルール」と呼ばれるものがあり、大雑把にまとめると、家族全員で海外に移住して、10年超待てば、海外に移した資産に関して、原則的に日本の相続税や贈与税を課せられずに済むのです。
一方で日本では海外に逃げる財産に対しての課税強化が続いています。2015年7月に導入された「出国税」は、1億円超の有価証券を保有する人が海外に移住する場合、株式などの含み益に課税を行うというものです。
以前に比べると海外にお金を逃がすことが難しくなったとはいえ、海外に住む日本人の数は増え続けていきます。各国の政府が課税や情報交換を強化しても、富裕層も優秀な専門家を雇って対策を講じるのでイタチごっこになっています。
気になる富裕層の素顔ですが、代々の富裕層という人ほど、堅実なので地味で見た目からして富裕層と見抜くのは困難です。他方で、一代にして財産を作ったニューリッチ達はオーラもあり、派手なのでオールドリッチとは違って見分けやすいです。ただし、派手だけど貯金額は少ないエセセレブも多いです。シンガポールでは狭いエリアに色んな人が住んでいるので超富裕層の生活も垣間見れてエキサイティングです。