関東はプレジデント社のメルマガに登録している読者へのアンケート調査、京阪神はリクルート住まいカンパニーが実施した調査「みんなが選んだ住みたい街ランキング2017 関西版」より、大阪府・兵庫県・京都府在住の20~49歳のシングル女性の回答を集計、中京は、10月31日、11月1日の2日間、無職・専業主婦・パート・アルバイトを除いた20歳以上の未婚女性を対象にしたマクロミルによる調査結果をそれぞれベースの数字として使用。そこに、識者による評価を加算してランキングを作成した。各識者の評価したエリアは、3エリアすべて=江原さん、土井さん、関東のみ=三浦さん、京阪神のみ=竹村さん、中京のみ=福岡さん。
仕事帰りに立ち寄れる「バー」があること
働くシングル女性には、どんな街が1番求められているのだろうか。今回、関東・中京・京阪神エリアの独身女性を対象とした「住みたい街」のデータと、5人の識者の評価をもとに、「シングル女性に優しい街」としてランキング化した。
まず関東エリアを見てみよう。「上位の共通点は、女性が仕事帰りに立ち寄れる飲食店やバーがある街であること」と社会デザイン研究者の三浦展(あつし)さんは読み解く。また、「都心に住む」編集長の江原亜弥美さんは、「女性のひとり暮らしなら、まず治安の良さが大切。そのうえで、人通りの多い帰り道を選択できる立地であること。静かな住宅街や暗い路地は、夜の1人歩きには不向きです」と話す。
京阪神は西宮北口がダントツ
中京は、文教エリアの星ヶ丘、繁華街の印象が強い金山(かなやま)、風格のある覚王山と、街の雰囲気に合わせて分散した。一方、リニア新幹線開通後は東京へも通勤圏内となる名古屋駅の人気も高まっている。
一方京阪神は西宮北口がダントツ。「阪神淡路大震災で、西宮北口駅前は壊滅状態になりました。そこから二十数年。徐々に復興し、阪急西宮ガーデンズができたことで、人の流れが大きく変わりました」
そう語るのは「Meets Regional」編集長の竹村匡己さん。震災から復興し、よみがえった西宮北口。今ではあらゆる年代に人気があるのも特徴の1つだ。
高感度な女性から熱い支持
【クラス感のある街】
たとえばこんな街!●代々木上原/広尾/表参道
大使館も多く、国際的な雰囲気も漂う広尾の街並み。「以前住んでいた文京区は、家族連れには非常に住みやすい半面、シングルはちょっと疎外感……。それが広尾に引っ越してきたら、しっくり! 国籍も家族形態もさまざまな人が住んでいて、懐深くなんでも受け入れてくれる街だと感じます」。10年近く広尾エリアで暮らす松崎さんは、実感をこめて語る。
「メディアで取り上げられる広尾はおしゃれなイメージも強いけれど、住んでみると落ち着いていて、こぢんまりした街なんです。トレンド最先端のカフェやスイーツ店と、昔ながらの商店が共存していて、どこか懐かしい雰囲気も。夜も早いから、外からわざわざ来る人は少ないのでしょう。すっかり広尾の穏やかな空気に慣れてしまって、気合を入れないと人の多い街に出かけられません(笑)」
休日は中華屋とカフェをはしごするのが定番のコースだとか。上品でいて気取らない、長く住み続けられる理由はそんなバランスのよさにもあるのかも。
広尾 1.休日は、居心地のいいカフェでゆっくりコーヒーを。2.商店街の突き当たりにある名刹・祥雲寺。定例で開催されている坐禅会も人気。
松崎久美子さん●弁護士。広尾在住歴は約10年。2015年に広尾なみき法律事務所(現・広尾なみき法律会計事務所)を開設。
同じく渋谷区で人気のエリアが、代々木上原。都内でも有数のお屋敷街で、洗練されたイメージ。街のブランド力も高い。「ワインバーやカフェ、こだわりのパン屋さん、世界観のあるアパレルショップなどが点在して、昼も夜も楽しい街。坂が多いから、足腰も鍛えられますよ」と笑うキムさんは代々木上原に魅せられてマンションを購入。人気エリアであることから、ライフステージが変わったとしても賃貸や売却の算段がつくことも決め手になった。「スーパーも多くて自炊しやすいし、疲れてごはんを作りたくない日は1人でふらっと入れるお店も。晴れた日は、近くの代々木公園でピクニックもおすすめです」
代々木上原 1.小田急線、東京メトロ千代田線が乗り入れる代々木上原駅はアクセスのよさも魅力。2.テイクアウトしたドーナツを頬張りながら、ぶらぶら街歩き。
キム・ヒョンソンさん●デジタル広告企業勤務。6年前、会社に近いことから代々木上原に引っ越し。半年後にマンション購入!
洗練された上品な雰囲気が漂う
【落ち着きのある街】
たとえばこんな街!●三軒茶屋/神楽坂/高円寺
「大学時代に散策したときに、雅やかな芸妓さんが角を曲がるのが目に入ったんです。ふと追いかけたらもう芸妓さんの姿はなくて……。夢のようなその光景がずっと憧れとして残っていたことも、神楽坂に住みたいと思ったきっかけです」。神楽坂(新宿区)との出合いを、そんなふうに振り返る上田さん。確かに花街の風情が残る街並みは、路地に入れば異次元へタイムトリップできそうな不思議な美しさを持っている。
「暮らしてみて、理想のライフスタイルがかなう街だと実感。情緒あふれる街並みのイメージそのままに、上質なものが集まっています。とくにおいしいもの大好きな私にとって、ここは魅惑の街。格式の高い料亭だけでなく、カジュアルなフレンチやイタリアンも充実。いいワインやチーズを買って、おうちパーティしたり。友人を招きやすいのも、神楽坂住まいの鼻高ポイント」
神楽坂 1.しっとりと美しい石畳の路地。2.毘沙門天をまつる善國寺は街のシンボル。3.新潮社の書庫を改装したキュレーションストア「ラカグ」。
上田朋佳さん●ITコンサルティング企業勤務。食べ歩きが大好きで、休日は気になるお店のグルメリサーチへ出発!
居心地のいい飲食店が多いという点では、世田谷区の三軒茶屋も根強い人気を誇る。戦後、バラックの商店が立ち並んだ名残を感じさせる仲見世商店街は、ごちゃごちゃした雰囲気が古きよき時代を思わせる。「赤ちょうちんの気さくな居酒屋、日本酒がおいしいごはん屋さんと、1人でも楽しいお店があちこちに。何回か通うと顔見知りになって、リラックスして過ごせるところが多いですね」と新田さん。フリーランスのライターとして活躍する彼女にとって外せないのは、Wi-Fi完備のカフェ。「仕事スペースにも憩いの場にもなるカフェが豊富。お茶をしているときに素敵なおばあちゃんに声をかけられ、ジャズライブにご一緒したことも。温かなコミュニケーションがあることも、この街を離れられない理由です」
三軒茶屋 1.東急世田谷線の三軒茶屋駅直結の「キャロットタワー」。26階からの眺望は絶景。2.落ち着いたカフェや隠れ家レストランもあちこちに。
新田晃与さん●女性誌を中心に活躍するフリーランスの美容ライター。約10年の三軒茶屋暮らしで、引っ越しは1回。
仕事も夜遊びも欲張れる!
【都心に出やすい街】
たとえばこんな街!●恵比寿/中野/大岡山
7位にランクインした大岡山(目黒区)は、知名度は高くないが、「1度住んだら離れられない」との噂。東急大井町線、目黒線が乗り入れ、目黒線は東京メトロ南北線、都営三田線との直通運転を行う。「渋谷に20分で行ける好立地にもかかわらず、駅から少し離れると閑静な住宅街。洗足池公園や桜並木の緑道もあって、自然豊かな環境もお気に入りです」と、大岡山在住2年半の竹内さん。転勤に伴い関西から上京した際、交通の便のよさと穏やかな住環境を重視して住まいを決めた。
「駅前に大学があるので、住宅地だけれど活気もある。住んでみて、とても安全な街だと感じています。大岡山といえばコレ!というものは少ないですが、電車に3分乗れば自由が丘。ショッピングも美容院も、女子に必要なものはほとんどそろいます。終電を逃しても、都心からならタクシー代もそれほどかかりません」
大岡山 1.全長約500mの大岡山北口商店街。2.女子心をくすぐるベーカリーやカフェも。良心価格でボリューム満点の定食屋やラーメン店も多い。
竹内紗耶香さん●フリーランスで活動。兵庫出身、海外勤務を経て東京へ。住まいのエリアは東京在住の友人の口コミを重視。
一方、堂々1位に輝いた恵比寿(渋谷区)は、都心のどこへ行くにもアクセス良好。加えてこのエリア内で欲しいものがすべてそろう点も高評価のポイントに。
なかでも在住4年の峰村さんが推すのは、女性1人でも気軽に入れるバーやレストランが多いこと。「恵比寿のバーは、1人でゆったり飲んでいる女性率が高い! 飲み友達になることも」
深夜、早朝まで開いている飲食店が多く、夜遊び女子にはこのうえない環境といえそう。「1人で飲んでも酔っ払いにからまれたりしないのも、大人な街・恵比寿ですね。ひとつ難点をあげるとすれば、住宅地に入るとスーパーがないことかな」。まったりおうち派よりも、仕事にプライベートに、アクティブに活動したい女性におすすめの街といえそうだ。
恵比寿 1.緑が心地いい並木道。木漏れ日を感じながらの散策は癒やし効果抜群。2.恵比寿のランドマークといえば、やはり恵比寿ガーデンプレイス。
峰村亜希子さん●オートリース企業勤務。転職に伴い京都から上京。街の知名度、アクセスのよさ、住環境を吟味し、恵比寿へ。
のどかな空気感と生活のしやすさが人気
【おひとりさまも安心な街】
たとえばこんな街!●吉祥寺/鎌倉/大泉学園
住みたい街ランキングの常連として知られる吉祥寺(武蔵野市)。充実の駅ビルや百貨店、雨に濡れずに買い物ができるアーケード街に味わい深い横丁と、多彩な表情を見せる街並みが魅力のひとつ。一歩路地に入れば個性的なセレクトショップや雑貨店、映画館やライブハウスと、趣味人のツボにハマるスポットも。そしてなんといっても、住民の自慢は井の頭恩賜公園。「春の桜も秋の紅葉も、どちらもすばらしくて毎年感動。天気のいい日は、同僚とお弁当を持って公園ランチをするのが楽しみです」と語るのは、吉祥寺で暮らし、働く松中さん。
「土日はもちろん平日も人が多くて賑やか。でも不思議とターミナル駅のような忙(せわ)しさはなくて、どこかのんびり。新しいお店、大型の商業施設ができても、吉祥寺が持つ独特の空気感はずっと変わりませんね」。長く暮らしても飽きることがなく、かといって様変わりして寂しくなることもない。どっしりとした街のたたずまいが、安心感につながるようだ。
吉祥寺 1.井の頭公園に向かう通り沿いのお気に入りイタリアン。2.四季折々の美しさが楽しめる井の頭公園。フリーマーケットや大道芸などのイベントも。
松中 優さん●販売職。実家が近くにあり、吉祥寺は幼いころから親しみのある街。現在は住まいも職場も吉祥寺!
街の持つ地域性、温かみから上位にランクインした街がもうひとつ。西武池袋線沿線の大泉学園(練馬区)だ。「池袋まで20分の距離にありながら、家賃が手頃。広々とした空が広がる大泉学園は穴場です」と小林さん。「バスロータリーで迷っていると、お年寄りが乗るべきバスを教えてくれるなど、地元の方に助けていただくこともしばしば。ゴミ収集所の掃除も、ルールで縛るのではなく、気づいた人が率先してやっているところが多いそうです」
地域のつながりが密で、治安がよいのも◎。駅周辺の再開発が進み、より暮らしやすく、便利になった大泉学園は、今後ますます注目度が高まりそうだ。
大泉学園 1.再開発で駅直結の商業ビル、駅近マンションの建設も進み、利便性がアップ。2.駅南口のバスロータリーは、円盤のようなデザインが特徴的。
小林みかさん●化粧品メーカー勤務。都心にはない地域のつながりや温かみのある雰囲気にひかれ、大泉学園へ。