キャリアを変えることはリスクです。決断を後悔するかもしれません。それでも新天地に飛び込んだ女性たちがいます。なぜその一歩を踏み出すことができたのか。連続インタビューをお届けします。今回は、JewelryRose代表の細川 文さんのキャリアについて――。

※本稿は、「プレジデントウーマン」(2018年4月号)の掲載記事を再編集したものです。

JewelryRose代表、ジュエリーデザイナー
細川 文
さん 45歳 転職2回 独立

転職2回後に独立した45歳女性の「ジュエリー愛」

「メーカーで営業職をしたい」と希望していたのに、配属先はまさかの受付。そのとき、細川さんの心に湧いてきたのは「宝石の仕事がしたい」という思いだった。

(右上・右中)リフォームでは、元の台座を下取りして料金から割り引くなど、リーズナブルになるよう心がける。(右下)石の品質を確認。鑑定士の修業期間はほぼ一日中、顕微鏡をのぞきこんでいた。

「鉱山技師だった祖父の家には、キラキラした石がたくさんありました。子どもの頃から身近に感じていて、大好きだったんです」

思い立つと行動は早い。難関といわれる米国公認宝石鑑定士の資格を取ろうと、2年で会社を辞めてスクールに入学。猛勉強の末に見事合格し、あこがれのTiffany&Co.に転職を果たす。

「すばらしいジュエリーに囲まれて仕事も充実して、副店長にまでなりました。でも、やがて自分でお店を出したいと思い始めて。一流のジュエリーもすてきだけれど、もっと手軽に楽しめるものを提供できないものかと……」

そこで企業経営を学ぶため、コンサルティング会社に転職した。

学ぶことも多かったが、現場は多忙を極め、独立する勇気が持てないまま時が経ってしまう。

転機は34歳のとき。結婚した夫の転勤にともない会社を辞め、ついに輸入アクセサリーのネットショップをオープンしたのだ。

親友が「私が第1号のお客さんになってあげる」

「まだ自信がないと迷う私に、親友が『私が第1号のお客さんになってあげる』と背中を押してくれたんです。最初はまったく売れませんでしたが、ブログを書いたり、販売会を企画してお客さまとの接点を地道に増やして。やはり直接お会いすると、リピーターになってくださる方が多いんです」

最近は顧客の要望に応える形で始めたジュエリーリフォーム事業が順調。祖母の形見のクラシックな指輪を普段使いのペンダントにするなど、持ち主の思いに寄り添った提案をしている。

「自社のデザインにこだわる高級店では絶対にできなかったこと。お客さまの望みをかなえられることに、この上ない喜びを感じます」

40歳で出産した後は、育児との両立が難しく、1度は休業を考えた。だがある顧客から「なくなるのは困る。細々(ほそぼそ)とでもいいから続けて」と頼まれ、踏みとどまった。

「息子が幼稚園に入り、夫も家事や育児に協力的になってくれたおかげで、やっと余裕が出てきました。今後はビジネスをもっと大きくして、いつか、お客さまを豪華な船上パーティーにお招きするのが夢です(笑)」リフォームでは、元の台座を下取りして料金から割り引くなど、リーズナブルになるよう心がける。

22歳:日立製作所に就職。受付に配属
24歳:宝石鑑定士を目指してスクールへ
26歳:Tiffany&Co.に採用される
29歳:経営の勉強をするためコンサルティング会社に入る
36歳:アクセサリーのネットショップを開業
41歳:家事・育児に追われ仕事ができない
44歳:長男が幼稚園に入るとともに、夫が育児に協力的になった