大企業で非正規雇用の社員を正社員化する動きが広がっている。このうちクレディセゾンは、2017年9月、2200人のパートタイマーなどを正社員にすると発表した。同社は「同一労働同一処遇」として、給与体系だけでなく、評価基準、昇格上限、確定拠出年金制度なども全社員共通にしたと説明する。いわゆる「名ばかり正社員」とは違うのか。戦略人事部長の松本憲太郎さんに聞いた――。

社員のモチベーションを上げる必要があった

松本 憲太郎さん1993年入社。関西、北海道、神奈川支社でカード営業を担当。その後、営業企画、商品企画部門の部長を経て2014年より現職。経営目標達成に欠かせない組織力強化のため、社員全員が活躍できる制度改定を推進。

──新制度導入にはどんな狙いや背景があるのでしょうか。

【松本】お客さまのニーズや市場の変化が激しくなり、クレジットカード事業だけでは収益が生まれにくくなったことがあります。AI(人工知能)やIoT技術、FinTechの進化、海外事業の展開などによって、事業構造の大変革が起きました。そこで、これまでのように、会社が雇用形態に合わせた職務を定義して、社員がそれに合わせて行動するという仕組みでは、時代の変化に合わなくなってしまったのです。

旧制度の下でも働きやすかったと思いますが、新たな事業にチャレンジしたい、もっと活躍したいと思えるような制度にする余地があった。そこで、これまで以上に社員一人一人のモチベーションを引き上げる環境づくりのために、会社が変わる必要が出てきたのです。

──女性社員の働き方はどのように変わりますか?

【松本】当社はもともと社内全体の女性の比率が高く、管理職(係長以上)に占める女性比率も46%(17年9月1日現在)と高くなっています。特に旧雇用区分のセールスに限定した専門職社員や有期雇用のメイト社員(パートタイマー)は、ほぼ女性が占めています。しかし、その中には、昇格の上限を上回るようなハイパフォーマーの女性も多く存在していました。新しい制度では、昇格の上限を超えて、もっと大きなフィールドで活躍したいという人が、より上の役割やマネージャーを目指しやすくなると思います。

──社員のみなさんの反応はどうですか?

【松本】これまで積極的に上のポストにいきたいと思う女性は比較的少なかったのですが、これからは誰にでもチャンスがあるという意識の変化が起こったようです。実際に、有期雇用だった人が自ら社内公募のポストに手を挙げて、その結果、18年春以降役割等級が2つ上に登用されるというケースもあります。そうなると周りの人たちが影響を受けるようになり、「私も手を挙げようかな?」という動きも出はじめています。

──パートタイマーなどの短時間勤務だった人は、今回の制度変更でどう変わるのでしょうか?

【松本】旧メイト社員は、勤務時間の幅が細かく設定されていました。新制度導入後は、各社員の置かれている状況に合わせて働き続けることができるよう、労働時間や勤務スタイルのバリエーションを増やしました。それに併せて会社全体も旧制度より年間所定労働時間を30時間短縮しました。女性が働きやすい環境に整えることをきっかけにして、会社全体も変わるということです。

──今後、女性社員に望むことは?

【松本】企業は変革期にあります。常識を疑い、柔軟な思考で新しいことにチャレンジする人が必要なのです。人材不足だから女性の労働力に頼るという時期は既に過ぎており、多様な考えや価値観を持った、自律的でダイナミックな人がどんどん出てきてほしい。今はかつてないほど女性が活躍しやすい、追い風の時代が来ていると思います。