働いて得たお金の使い方は人それぞれ違います。時代の先端に立ち、世の中を引っ張っている人たちはどんな思いで働き、どんなことにお金を投じているのでしょうか。雑誌「プレジデントウーマン」から営業、デザイナー、理事長という3人の女性のインタビューをお届けします――。

信頼される自分でいるために思い切ってお金を使う

営業
松本なおみさんプルデンシャル生命 コンサルティング・ライフプランナー 課長

 
新卒でミキハウスに入社。約5年間、営業として西日本の百貨店回りなどを経験した後、2006年にプルデンシャル生命へ。入社4年目にしてMDRTに入会。以来、トップセールスとして活躍中。

生命保険と金融のプロだけが会員になれるというMDRT(Million Dollar Round Table)。なかでもプルデンシャル生命は、その会員数が20年連続日本一という記録をもっている。同社でライフプランナーとして活躍する松本なおみさんも、MDRT会員の資格を持つひとり。法人営業担当のほうが会員になれやすいといわれるが、彼女の顧客は9割が個人。まさにトップセールス中のトップセールスなのだ。

「私たちの仕事はお客さまからのご紹介でつながっていくものがほとんどなのですが、私のお客さまは、仕事はもちろん、子育てや趣味など“何かにプライドを持って頑張っている女性”が多いです。それはなぜかというと私自身が、キラキラしている女性にはこの先もずっと輝き続けてほしいと考えているから。しかし、お金が原因で人生のバランスが崩れてしまうことも。知識を備え、対策さえ講じればより明るい未来が手に入るので、それをお手伝いしながら、私もお客さまと共に輝く女性になりたいと思っています」

顧客から絶大な信頼を得る松本さん。一人一人と真摯に向き合い最高のパフォーマンスを発揮するためには、思考をクリアにする時間と空間が欠かせないという。

「エネルギーをチャージすることには思い切ってお金を使います。昨年は単身でハワイへ。ビーチで仕事上の課題をリストアップしたり、戦略を考えたりしていたのですが、それがものすごくはかどって(笑)。オフィスで考えるのとプライベートビーチで考えるのとでは、全然違いますね」


Q 愛用の腕時計は?
A フランク ミュラー

松本さんが“いくこママ”と呼び、心から慕っているお客さまの一人から「持っていてほしい」と託されたもの。「ご主人の遺品を形見分けしてくださって。生前、ご主人のことをとても尊敬していたので、この時計を見るたびに力をいただけるような気がするんです」

Q この1年で何に一番お金を使った?
A ビジネスクラスでハワイへひとり旅

幼なじみの結婚式への参列を口実に、思い切ってビジネスクラスでハワイへ。せっかくのひとり旅なので、高級リゾート「ザ・カハラ・ホテル&リゾート」に宿泊したという。「長いフライトは憂鬱なものですが、ビジネスクラスにするだけで、心豊かな時間になります」

美しい器を毎日使って、発想のヒントを得ています

デザイナー
毛見純子さんkay me 代表取締役

 
ボストン・コンサルティング・グループなどで経営戦略コンサルティングに従事。2007年、コンサルティング会社を設立し、代表取締役に。11年に自社事業として「kay me」を立ち上げた。

昨年、日本政策投資銀行主催の第5回DBJ女性新ビジネスプランコンペティションで大賞を受賞した毛見(けみ)純子さん。毎日が忙しく、洋服にかける時間もなかなか持てなかった前職時代の経験から、上質なジャージー素材だけでつくるワンピースブランド「ケイミー」を立ち上げた。

「クリーニングに出す時間も惜しいから自宅で洗える素材の服を探すのですが、見つけるのもひと苦労。“洗える・伸びる・シワにならない”素材で、仕事中に華やかな気分になれるような洋服をつくろう!って。それが、私なりの働く女性を応援するやり方なのではと思ったんです」

ロンドンでも展開している同ブランド。毛見さんによると、花と鳥を愛でてお茶を楽しむイギリスの文化は、日本文化と通じるところが多いそう。「デザインするうえで着物の柄からもインスピレーションを得ることがあるんです。日本の古いものに触れると感性が研ぎ澄まされていく。センスを触発されるものに、お金を使いたいと思っています」

そんな彼女がコツコツと集めているのがアンティークの食器。飾って眺めるのではなく、あえて日常使いしているという。「特に和食器は耐久性が高い。それは焼き方だったり、土の配分だったり、見えないけれど研究し尽くしてつくっているところがあるはず……。私は快適な素材だけで洋服をつくっているので、美しくて丈夫なものに常に触れて、“手で触れたときの感触”に、敏感でいたいと考えています」


Q 愛用の腕時計は?
A なし

時間はもっぱらiPhoneで確認。時計を着けない理由は、体に何かを巻きつけるタイプのものが苦手だからだという。「私がつくる洋服と同じように解放感や機能性を重視したい。だから、腕時計だけでなく、腕が重たく感じるようなブレスレットなどもしないんですよ」

Q この1年で何に一番お金を使った?
A アンティークの深皿

フランスなどから洋食器を取り寄せることもあるという毛見さんだが、やはり一番心を引かれるのは和食器だそう。なかでもお気に入りは絵付けが美しい皿。「このお皿(写真)は日本橋三越で購入しました。発色も絵柄も本当に美しくてほれぼれしてしまいます」

自由に使えるお金の約7割は人とのおつきあいに

理事長
波多野麻美さん公益社団法人 東京青年会議所 第68代理事長

 
2003年、東京青年会議所に入会。14年に国際アカデミー準備会議議長、15~16年にはJCI APDC議長などを歴任。16年、東京青年会議所副理事長を経て現職。11年にはシアトルに留学し、帰国後13年にMBAを取得した。

公益社団法人東京青年会議所は1949年、青年経済人によって明るい豊かな社会の実現を理想に設立された組織だ。そして今年、初の女性理事長が誕生。ダイバーシティが進む今、同組織にも新しい風を吹かせたいと立候補したのが、波多野麻美さんである。

「私はどちらかというと引っ込み思案な性格だったのですが、JC(青年会議所)に入会し、多くの人と出会えたことで価値観がかなり変わりました。特にJCの国際活動などを通じて、多様性のある考え方や光景を目の当たりにした経験が大きかった。これからは性別に関係なくもっとアクティブにならないといけないし、私も自分の個性を生かして、できることからやっていかなきゃって思うようになったんです」

JCへの入会が人生の転機になったと語る波多野さんだが、お金の使い方にも変化が。30代になってからは人とのつながりや自己の成長など目に見えないものに価値を置き、人生経験に投資する生き方を選ぶようになったそう。

「お祝い事の席などにはできるだけ出席したり、記念の品を贈ったりなど、人とのおつきあいに一番お金を使います。自由になるお金の約7割は交際費に。海外の方へは、漆器やお重など和の物を選ぶことが多いですね。出会いと経験、そして日本人としてのアイデンティティーを、今後も大切にしていきたいです」


Q 愛用の腕時計は?
A エルメス

ブリュッセルで開かれた国際青年会議所の世界会議に出席したあとに立ち寄ったパリで購入。「当時は腕時計の必要性を感じていなかったのですが、記念に残るものがほしくて。ジュエリーをつけないので、2重巻きのベルトで華やかになるところが気に入っています」

Q この1年で何に一番お金を使った?
A 京友禅の着物

着物が好きな波多野さんが今、一番気に入っているという京友禅は、約120万円。「祖母の代からおつきあいのある呉服屋さんが引退されるということで、感謝の気持ちをお伝えしたいと購入しました。JCの活動でも着たいですね