学びたい、もっと成長したい──。そう願っても、社会に出ると学びの機会はぐんと狭まる。子育てや介護で職場を離れるとなおさら、時間や場所の制約から、学ぶのは難しい。だれもが自由に学べる場を提供できないか。伊能美和子さんはそんな思いから、オンライン学習サービス「gacco」を立ち上げた。そして「いつでも、どんな場所でも、学び続けてほしい」とエールを送る。
ドコモgacco
代表取締役社長
伊能美和子(いよく・みわこ)

「gacco」とは、本格的な大学の講義をウェブ上で無料提供する日本初のMOOC(大規模公開オンライン講座)である。自分のペースで学べるオンライン講義に加え、対面でのリアルな講義も用意している。受講生同士の議論や交流会も活発。伊能さんはその仕掛け人だ。

NTT入社後、NTTドコモの教育事業推進担当部長を経て、gaccoの運営会社の代表取締役に就任した。経歴から想像するキャリアウーマン像に反して、話しぶりはやわらかでチャーミング。「受講生の中には、育児のために一度退職したものの、gaccoをきっかけに新しいキャリアを切り開いた人もいます。そうやって刺激を受ける人がいることがうれしい」とほほえむ。

「日本では、長らく学校卒業後の学びの場は限定的でした。その解決策として自由度が高いオンライン学習は有効だけれど、一人での学びはなかなか続きません。だからgaccoでは対面での講義に加え、興味を同じくする受講生同士で交流する仕掛けも組み込んでいます。仲間がいることが、学び続ける原動力になる。サービスというより、学び続けるための『仕組み』であり、学びたい人が集う『場』を提供する感覚です」

オンライン講義を自分のペースで学び、その後の対面授業で理解を深める「反転授業」も取り入れている。受講生同士で意見を交わす交流会も活発に行われている。

人生のあらゆることが学びのチャンスになる

さまざまな人と議論し、多様な価値観を吸収できるのもgaccoの利点だ。正解を見いだしにくくなっている現代では、他者の意見に耳を傾ける力こそ武器になると伊能さんは考える。

「そもそも女性のキャリア自体が多様で、一本道ではありません。子育てなどで会社を離れることもあるでしょう。私自身、親の介護を17年間担いました。突発的に休まざるを得ないことはありましたが、それを負い目に感じたことはありません。親を支えることも、私にしかできない『仕事』だから。会社とは別に成し遂げるべき長期プロジェクトを受注したという感じです。育児も介護も人生における仕事の一部であり、ハンディなんかじゃない。大切なのは、その経験から何を学ぶかです。gaccoは、その気づきを得るきっかけになると思っています」

組織から離れても、一人ひとりの生き方の中で社会とつながり、学びを得て活躍できる。介護を担いながら働いた伊能さんの実感であり、ドコモの掲げる一人ひとりが活躍できる社会の実現に貢献する「For ONEs」の理念にも通じている。

「働きたいと願い、悩む女性たちに、一人じゃない、ここに仲間がいるよ、と伝えたい。gaccoは一人ひとりの思いに寄り添う、学びの伴走者なんです」

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