What is IMPACT 10×10×10?
・国家首脳10名、グローバル企業のCEO10名、大学の学長10名をIMPACTチャンピオンとして選出
・トップから、ジェンダー平等に向けて変革を促すことを目指すイニシアチブ
・PwC、ユニリーバのCEOも選出されている
「女性活躍」に違和感あり!
【島田】私が“HeForShe”の活動をやろうと思ったのはのは、唐木さんのお誘いがきっかけでしたね。(“HeForShe”については、前回の記事「私たち、HeForSheにコミットします!」参照)
【唐木】そうです。島田さんとはある朝食会で知り合って、ほかの集まりでも顔を合わせるうちに、島田さんがどんなことを考えているかを知って親しくなっていきました。
島田さんが役員を務めるユニリーバは、私たち(PwC)と同じく、UN Womenが認めたジェンダー平等を実現している10社の企業の一つですし、島田さん自身、すごく信頼できる人。だから島田さんとなら絶対に面白いことができると思いました。
【島田】私も唐木さんからのお話だからきっと面白いはず!と思いました。ジェンダー平等を実現するという“HeForShe”の理念にはすごく共感できました。
【唐木】でも最初にこの話をしたとき、島田さんは「やるかどうかお返事をする前に、ひとつ確認があります」と言ったんです。それは、「よくある“女性活躍推進”とか、“女性管理職比率を高めよう”というだけの活動じゃないですよね?」でした。
【島田】残念なことにこういう活動は、表面的なものに終わることが多い印象を受けています。たとえば女性管理職比率さえ上げればいい、とりあえず制度をつくることに価値がある、のように……。
【唐木】日本の社会では、全員で一斉に取り組むことを重視していることが多いと感じます。「女性は全員管理職を目指せ」というのもその一つです。
【島田】全員が管理職を目指すのではなく、自分の好きな道、好きな働き方を選べること。それこそがあるべき姿ではないでしょうか。管理職になりたい人はもちろんなれるように、なりたくない人にそれを押しつけるのではなく、やりたいことを本人が選択しそれをサポートしていく、それでいいと思うんです。
話を戻すと、唐木さんがやろうとしていることを聞いて、「じゃあ、面白いからやる!」とすぐに返事しました。
【唐木】それが超・濃密な日々の始まり(笑)。
【島田】昨年の秋から、1~2週間に1度、お互いのチームが集まって、「私たちはこの活動を通じて何を成し遂げたいのか」とか、「世の中がどうなったら楽しいと思う?」とか、ワイワイ自由に意見を言いあって、コンセプトを固めていきました。たまたま全員女性だったのですが、不思議なことに、まったく関係ないことを話していても、ふっといいアイデアが出てくる。これは女性のパワーだと思います。ふと思えば、男性がいるときよりもエネルギーレベルが高い……?
【唐木】ほかの人と違う意見でも、堂々と言える雰囲気でした。大げさですが、チームの大義が明確だったので、皆が言いたいことを言って、最後に大義に照らして考える、そういう動き方ができました。議論もスムーズで楽しかったですし、その後の役割分担をしてそれぞれが動き始めてからもブレがなかったですね。あまりに議論が活発すぎで、時間はたくさん使いましたけど(笑)。
“HeForShe”から“One For All”に
【唐木】3月7日に“HeForShe”キャンペーンの認知や理解を促進するためにセミナーイベントを開くことになったのですが、「女性が活躍できるように盛り立てなくてはいけない」とか、「女性を管理職にしよう、オー!」みたいな会にはしたくなかった。島田さんも私も、今の日本ではあまりに皆が同じような働き方、同じような人生の組み立てを前提としていることに違和感があったので、まずは働き方の多様性、柔軟性が大事だと思っていました。そして、やるのであれば、わくわくして、しかも、できそう、という感覚を持っていただくこと大事だと。それで未来について考えることをテーマにしました。イベントの冒頭では、専門家に脳の最新の研究結果やAI(人工知能)の話をしてもらうことで、まずは「こんな世界があるんだ」と気づいてもらい、そこから経営者の方の意識と熱い思いに触れていただき、実際に取り組みを進めている人たちの具体的な話で何ができそうか考えていただきたいと思っています。「これからの世の中は、女も男も関係なく、人それぞれの個性が活かされるようになればいい」というメッセージを伝えようと思っています。
【島田】実は3月7日だけでなく、3月8日の国際女性デーにもイベントを企画中です。そちらはスピーカーもオーディエンスも全部女性。「働くってどういうことだろう」とか、ワークとライフの問題とか、管理職になる自信がないとか、別に管理職になりたくないとか、いま女性が抱いている8つのモヤモヤについてそれを経験した女性リーダーと対話しながらみんなで考えてみよう、というイベントです。こっちは勝手に“HeForShe”ならぬ“SheForShe”って呼んでいます(笑)。
【唐木】そう、“SheForShe”も大事! 男性による女性の支援も大事だけど、女性が女性を支えてくれることは本当に多いものです。
私が社会人になって初めは外資系で社内弁護士として働いていました。そのとき男性の上司に、「年上の女性にかわいがられなさい」というアドバイスをもらいましたね。
外資系企業では、職種がパキッと分かれています。私がプロの弁護士なら、その手伝いをするパラリーガルは法律業務のサポートのプロ。秘書はプロの秘書なのです。でも、私よりずっと年上の女性が私たちにお茶を淹れたりしていると、なんとなく申し訳ない気分になるでしょう? 「お手伝いします」と申し出たら、「これは私がプロとしてやっていることですから、あなたは自分の仕事をしてください」と言われました。
【島田】本当のプロですね。私も最初の上司は女性だったので、その方に本当にいろんなことを教えてもらいました。
【唐木】よく女性のほうが女性に冷たいと聞くけれど、そうじゃない人もたくさんいる。厳しいことも含めて伝えるべきことを伝えて育てることと、サポートすること、そして、何よりもわかりあうことが大事だと思います。
【島田】“HeForHe”だってありえます。“SheForHe”だって。
【唐木】結局は“YouForMe, MeForYou”だね、と話しています。
【島田】そう、男とか女とか関係なく、相手のために何ができるか。最終的には“One For All, All For One”ですよね。
「Are you happy?」に何と答えますか?
【島田】この活動をしていて、よく「大変だったでしょう」とか「苦労したでしょう」と言われますが、苦労というほどの苦労はまったくなし。目標に向かってするべきことの要素をブレイクダウンすると、やることが決まってくるので、あとはそれをやるだけ。
【唐木】なぜか「こんなことをやりたい」と言ったらそれが叶ってしまうことの連続でした(笑)。やりたいことをどんどん口に出すと必ず叶うんだな、ということが体験できた。私たち自身が感じたこのことも、イベントでお伝えしたいと思っています。
【島田】私は「Are you happy?」と聞いたら、「Yes!」と万人が疑いなく答えられるような世界にしたいと思っているんです。そのためにどうすればいいかは、みんなで考えればいい。イベント当日はこのマインドを持ち帰ってもらって、自分のいるところで広めてほしい。
【唐木】今年で終わりじゃなくて、最低でも3年は続けたいと思っています。
【島田】オリンピックイヤーの2020年までは続けましょうよ。そのころには「女性活躍」という言葉自体、なくなっていてほしい。それよりは「一億総活躍」のほうがいいですね。「一億総わくわく」ならなおよしです!