売りやすく、貸しやすい物件で潤いのある暮らしを
住宅ジャーナリストの山本久美子さんは、「男性が資産価値を重視するのに対して、女性は居室の心地よさ、家事効率など、暮らしやすさや快適性を優先してマンションを選ぶ傾向があります」と話す。
実家住まいで思うような暮らしができない。賃貸住宅では水回りのグレードが低く、料理の腕が振るえない。お風呂でリラックスできない。収納が足りない。そうした不満が生じがちだが、「間取りや家事動線、設備など、自身が思い描く暮らしに合ったマンションを購入することで、これらの不満を解消。自分の城で潤いのある暮らしを実現する方が増えています」。
立地選びも重要だ。結婚、出産といったライフイベントにより、将来、住み替えが必要になることも考えられる。万一の時に、好条件で売却できたり、賃貸できたりする立地の物件を選ぶことが望ましい。
まず重要なのはターミナル駅へのアクセスの良さ。東京圏ならば新宿、渋谷、池袋、品川、東京などから30分圏内の駅が候補となる。
山本さんは加えて「駅から徒歩5分以内の物件がオススメ」という。
徒歩5分以内の駅近ならば、便利で需要も高く、インターネットの不動産サイトでも検索されやすい。また、「ヒールを履いて、重い荷物を持って歩けるのは、400mくらいまでですね。帰宅が遅くなり、夜道を一人で歩く時の安全面を考えても、このくらいの距離を目安にするといいでしょう」。
人気のエリアより自分にとっての好立地
好立地というと“住みたい街の人気ランキング”を思い浮かべがち。「東京・吉祥寺などランキング常連のブランド立地では物件自体が少なく、価格も高めです。それよりもライフスタイルを見つめ直し、何を重視するかで立地を検討し、自分なりの穴場を見つけること」と山本さんはアドバイスする。
通勤の利便性に加え、豊かな自然環境や教育環境の優れた文教地区、活気ある商店街があるエリアなど、人によって好立地の基準は異なる。
「オススメのキーワードは“ノーブランドだけど地元ブランド”。広く知られているわけではないけれど、地元では誰もが知る、人気抜群のエリアやマンションという意味です」
住宅情報誌やインターネットで調べると、なじみのない沿線でも人気のエリアや物件は意外に多い。これという候補には足を運び、自分の目で確かめたい。坂道など土地の起伏は現地に行かなければわからない。
「不動産会社から情報を聞き出すことも重要です。警戒せず、積極的にプロを活用しましょう。立地を決めたら、できれば複数の会社に話を聞き、情報を収集します」
物件周辺の商店に街の様子などを聞くのもいい。女性ならではのコミュニケーション能力を活かそう。
「前は何が建っていたか、治安はよいか、住み心地はよいかなど、自然に情報を引き出せるといいですね。治安についての情報は、地元の方の実感に勝るものはありません」
女性のリスクを考えてゆとりあるマネープランを
一方で山本さんは女性のマンション購入には注意点もあるという。
「想定通りにはいかないのが人生。結婚や出産などにより、仕事が続けられなくなるリスクがありますし、出産や育児休暇などで一時的に収入が減ることもあるでしょう。こうした変化を想定して返済額を決めるなど、ゆとりある資金計画を立てることが大切です」
子どもがいる場合は教育費も考慮。私立に進学となれば、支出もかさむ。
住宅ローンの返済期間は最長の35年とするのが一般的で、返済期間が長ければ毎月の返済額が少なくて済む。余裕ができたら、先々の返済分を前倒しして返す「繰り上げ返済」をして、定年前に完済したい。
「住宅ローン控除が受けられる物件なら税制上のメリットもあり、おトクです」と山本さん。住宅ローン控除とは、毎年末の住宅ローン残高の1%が、10年間にわたり所得税等から控除される制度。登記簿の床面積50平方メートル以上の物件を、返済期間10年以上のローンを組んで購入した場合などに適用される。最大で年間40万円、10年間で400万円が控除されるのは大きい(ただし納めた所得税等の範囲内で還付)。
マンション購入時は、マネープランを考える、絶好の機会でもある。
「とくにDINKsの方は、お財布が別々で、互いの収入や貯蓄額を知らないケースも多いようです。マンション購入をきっかけに資産や家計を見直し、2人の人生設計を考えるといいですね」
またマンションの管理会社では物件の資産価値を維持するための長期修繕計画を策定している。快適に長く住み続けるためにはチェックも必要だ。3回目の大規模修繕まで修繕計画が立てられているか、修繕計画に基づいた修繕積立金が設定されているか、また当初抑えられていた修繕積立金が段階的に増額されるケースもあるので、あらかじめ確認しておきたい。
マンション購入は、暮らしの快適性やマネープランを考え、豊かなライフスタイルをつくる契機となるはずだ。
Text=荒田雅之 Photograph=永井 浩、アフロ