人生のなかで、家の次に高い買い物だといわれる保険――。なんだかよくわからないのに、よいものを選ぶことはできない。まずは、“ここだけは押さえておきたい”最低限の知識を頭に入れよう。

そもそも保険って何?

保険は預貯金や株などと同じく金融商品の一種。おもに、将来の“危機的状況”に備えて、お金を準備しておくために使う。

生計を支える人が突然亡くなったり、自分や家族が大病やケガをしたり、天変地異に見舞われたりしたときは、どうしてもお金が必要だ。保険に入っておけば、そのような場合にまとまったお金を受け取れるので、蓄えが心もとなくてもひとまず安心できる。

「つまり保険とは、貯金があまりない人ほど入っておくべきものなんです。貯金だけだと急には増えないので、いざというとき資金不足になる恐れがありますが、保険は違います。たとえば、コツコツ生命保険の保険料を支払っておくと、万一のときは払い込んだ保険料以上のお金がドカンと入ってくることもあります」と、FPの畠中雅子さんは言う。

保険の場合、入ったばかりで払い込んだ保険料がまだ数万円なのに、契約者が亡くなって保険金が2000万円出た――なんてことも起こりうる。こうしたことが可能になるのは、一つの保険を不特定多数の人が契約し、お金を出し合うことで、互いに支え合う形になっているからだ。

生保は損保固有の、損保は生保固有の商品を互いに販売できないルールになっている(子会社を通じてならOK)。生保と損保両方が取り扱えるのは、第三分野保険のみ。

なお、保険とひと口にいっても、大きく「生命保険」と「損害保険」「第三分野保険」に分けられる。それぞれの特徴は図のとおり。

簡単にまとめると、人の生命に関連する保障がつくのが「生命保険」、偶然のアクシデントで生じた損害を補てんするための保険が「損害保険」、それ以外が「第三分野保険」と呼ばれる。私たちはこの中から自分に合った保険を組み合わせて加入するというわけだ。

私たちに必要な保険は?

自分に必要な保険を見極めるには、「自分が今、何を不安に思っているか」を考えるところから始めるとよいだろう。多くの人が口にしがちな「不安」を、次にピックアップしてみる。

(1)突然の病気やケガで、これまでどおり働けなくなるのが不安。
(2)自分や配偶者、あるいは両方が急に事故などで亡くなったとき、子どもなど取り残された遺族が路頭に迷わないか不安。
(3)自分や家族が急にがんになって治療に莫大なお金がかかったら……と思うと不安。
(4)老後、年金だけで暮らすのは厳しいというけど、自分で老後資金を十分貯められるか不安。
(5)子どもの大学進学のとき、学費を支払えるかどうか不安。
(6)将来、自分や配偶者が要介護状態になったとき、介護のスタッフを頼んだり施設を利用したりするのに、お金が足りるか不安。
(7)子どもが高級車にいたずらして、賠償請求されたらと思うと不安。
(8)自営業なので、自分がケガをして収入が途絶えることが不安。

イラスト=Asami Hattori

これらと似た不安を抱える人は多いのではないだろうか? 一般に、(1)の不安を持つ人は「医療保険」、(2)は「生命保険」、(3)は「がん保険」、(4)は「年金保険(または「終身保険」)」、(5)は「学資保険」、(6)は「介護保険」、(7)は「個人賠償責任保険」、(8)は「所得補償保険(または「就業不能保険」)」という具合に、対応する保険を選ぶことになる。

「ただ、払える保険料には限界があります。保障のバランスも考えつつ、優先順位を決めて入ることになります」

●不安を解消してくれるさまざまな保険
【医療保険】
病気やケガで入院したとき、入院日数や手術の種類などに応じてお金がもらえる保険。病気の種類は問わない。
【生命保険】
契約した人が死亡したとき、あるいは重度の障害を負ったときなどに、受取人に対して所定の保険金が出る保険。
【がん保険】
がんの治療費が保障される保険。診断された時点で一時金が出て、入院+通院治療の費用もカバーするものも。
【年金保険】
現役時代に保険料を支払い、60歳、65歳などの老後に積み立てたお金を年金のようにして受け取る保険。
【学資保険】
子どもの教育費(主に大学進学費用)を積み立てるための保険。子どもの病気などの保障がつく商品もある。
【その他】
その他多くの人に関係するものといえば自営業者向けの「所得補償保険」、介護費用を蓄える「介護保険」など。
畠中雅子
ファイナンシャルプランナー。マネー分野専門のフリーライターを経て1992年より現職。著書に『子育て中でも貯金ゼロでも 1000万円貯める 10のルール』( 主婦の友社)など。今買いたいものは、ブラウンダイヤのリング。