マイナス金利で住宅ローンは借り換えのチャンス!

2016年2月に実施されたマイナス金利政策の影響で、住宅ローンの金利も下がっています。三菱東京UFJ銀行の場合、2016年4月現在の適用金利は、変動金利で0.625%、10年固定で0.9%、全期間固定で1.22%(31~35年)という超低水準となっています(いずれも最優遇金利)。住宅金融支援機構が民間金融機関と共同で提供している全期間固定ローン「フラット35」の金利は金融機関によって異なりますが、一例では、借入期間21~35年は1.190%、20年以下なら1.020%という、驚きの低金利です(融資率9割以下で、取り扱い金融機関で提供する金利での最多金利)。

住宅ローンの超低水準は、これからマイホームを購入する人にも朗報ですが、何といってもメリットが出るのがすでに住宅ローンを借りている人。このまま払い続ける予定の利息をグンと減らすチャンスです。今よりも低い金利のローンに借り換えて、家計の負担を減らしましょう。

借り換えは早いほうが効果大。窓口に行ってしまうのがおすすめ

低い金利のローンに借り換えをするとトクすることはわかっていても、なかなか面倒で重い腰が上がらない、という人も多いでしょう。しかし、借り換えるのならなるべく早く行動したほうがより多くの利息が減らせます。

まずは、各銀行や住宅金融支援機構、知るぽると(金融広報中央委員会)などのホームページにある住宅ローンシミュレーションでどのくらい利息が圧縮できるか試算してみましょう。数百万円トクになるとわかれば、やる気も出てきます。

自分でシミュレーションするのが面倒な場合は、今の住宅ローンの返済表を持って借り換え候補の銀行の窓口で試算してもらいましょう。「もし、ここで借り換えるなら」という前提で相談ができます。手続きの仕方や借り換え手数料などについても具体的に教えてもらえるので、行ってしまったほうが話が早く進みそうです。

また、住宅ローンの借り換え先の情報が欲しい場合は、無料でダウンロードして使える「モゲチェック」というアプリもあります(http://mogecheck.jp/)。自分が借りている住宅ローンの情報を入力しておくと、全国の銀行120行、1000本以上のローン情報の中からベストな借り換え先と借り換えメリット額を教えてくれます。入力するのは住宅ローンの情報だけでOK。個人情報の入力は不要です。

すでに変動金利で借りている人は、0.625%の金利になるわけではない

10年固定や全期間固定で借りている人は、借り換えを検討しようと思うでしょうが、問題なのは、すでに変動金利で借りている人です。「自分は変動金利で借りているから、次の金利の見直しのときに今の変動金利の0.625%になるから、借り換えなくても自動的に金利が下がるんだ。やっぱり、変動金利を選んでいてよかったな。変動金利、最強!」と思うかもしれませんが、これは大きな勘違いです。

ここで、「基準金利(店頭表示金利)」と「優遇金利」と「適用金利(実際に借りる際の金利)」の仕組みを理解しましょう。図のように、「基準金利(店頭表示金利)」から「優遇金利」を引いたものが、「適用金利(実際に借りる際の金利)」となります。基準金利は、長期金利や短期プライムレートをもとに決められますが、優遇金利部分は、各銀行がそれぞれの考えで設定できる割引部分。それによって適用金利が変わってきます。

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「基準金利(店頭表示金利)」と「優遇金利」と「適用金利(実際に借りる際の金利)」の仕組み

これを踏まえて見てみると、0.625%の変動金利で借りられるのは、今の最優遇金利マイナス1.85%が適用される人だけ。すでに変動金利で借りている人は、自分が借りた時点の優遇金利が全期間続くので、もし、マイナス1.00%の金利優遇が条件なら、現在の変動金利の基準金利2.475%から1.00%を引いた1.475%が適用金利となります(図参照)。

マイナス金利になって長期金利が下がったため、10年固定などの基準金利は下がっていますが、「短期プライムレート」と呼ばれる金利をベースにする変動金利の基準金利は2.475%のままで、ここ数年動いていません。マイナス金利で変動金利が下がってきているのは、各銀行が独自に設定できる優遇金利の幅が徐々に広がってきているからなのです。

住宅ローンを借りている人は、自分が適用されている「優遇金利」を知ろう

優遇金利は、年々拡大しているので、借り入れをした時点が早いほどマイナスの幅は少なくなるのが普通です。さらに、借り入れの内容や審査結果によって、優遇金利が決まる金融機関もあり、借りる人によって優遇金利が異なる場合もあります。

変動金利で借りている人は、自分に適用されている優遇金利を銀行に聞いてみましょう。現在の変動金利の基準金利から優遇金利を引いた金利が、あなたのローンに適用されている金利です。

10年固定や5年固定などの固定金利期間選択型のローンを借りている人も、この優遇内容を銀行に確認しましょう。優遇金利の中には、当初、優遇幅が大きく、固定期間が終了した後は優遇幅が小さくなるタイプもあり、場合によっては、適用金利が2~3%台に上がってしまうこともありますから要注意です。

変動金利で0.625%のローンにしたい場合は、他の銀行で借り換え、もしくは今借りている銀行に交渉して、最優遇金利をゲットする必要があります。

マイナス金利下での借り換えは、全期間固定がおすすめ

借り換えの際は、より金利が低い0.625%の変動金利に注目する人が多いようですが、私はフラット35などの全期間固定金利の低さに魅力を感じます。残りの返済期間が20年を切っていれば、1.020%で全期間固定にできるのです(フラット35は借入期間が20年以下なら、比較的低い金利で借りられる)。私が最初にマンションを買った20年ほど前は、住宅金融公庫の金利が3.60%で当時の最低金利でした。それから比べると、今は夢のような低金利です。

もちろん、変動金利や10年固定で0.9%など、どの金利タイプに借り換えても構いません。ぜひこのタイミングで借り換えを検討してみましょう。そして、借り換える際には、返済期間を変えずに月々の返済額を減らすのではなく、できれば返済額を減らさずに返済期間を短くして、より効果の高い借り換えをめざしましょう。返済せずに済んだ利息の分は、迷わず貯蓄に回してください。

フリーライター 生島典子(いくしま・のりこ)
投資信託の運用会社、出版社勤務を経て独立し、2004年よりライター・編集者として活動。子育て、家計、住まい、働き方などが主な執筆テーマ。好きなことは、出産と住宅ローン。3人の子どもを助産院で出産した経験あり。