「仕事人生50年!」といわれる時代。ずっとバリキャリで、なんていられないですよね。賢い降り方、上手な戻り方を考えてみました。

アンハッピーバリキャリの中には、子どもが生まれても、以前と同じようにバリバリ働いて、子どもとの時間がほとんど取れないという状況の人も多い。子どもが不安定になり、泣きながら「ママ、そばに居て」となって、ようやくバリキャリからいったん降りる決心がついたという人も。

はぴきゃり代表取締役 金澤悦子さん

なぜ、そうなるまでがんばってしまうかというと、それまでのリソースを手放すのが不安だから。あるいは仕事を減らして評価が下がるのが不安だから。でも、「仕事の量を減らしても質を下げない方法はいくらでもあります」と金澤さんは言う。

例えば、ひとつの企画で成功したら、ほかにも持っていけそうなところがないかと考えて、1粒で2粒にも3粒にもなるように仕組みを考えるとか、たくさんの人に商品やサービスの情報を伝えたいときに、いちいち訪問しなくてもインターネットを使って伝える仕組みを考えるとか。

「時間で対価を得るという発想から脱却することが大切なポイントです」(金澤さん)

前述のように、金澤さん自身も20代後半に営業ウーマンだった頃、朝7時から夜中の2時、3時まで働いて、体を壊してしまった経験がある。「働き続けないと目標を達成できないという思いにとらわれていたんです。それで心も体も壊してしまいました」

これではいけないと思い、「これから私は毎日夜7時に帰る!」と宣言。そうしたら部下が生き生きと仕事をするようになり、過去最高の目標数字を達成したという。

「もちろん不安はあると思いますが、思い切って時短にしてみることで見えてくるものが必ずあるはず。私は部下に仕事を任せることでできた時間で新しい事業の構想を練ることができ、実現できました。そういう意味では、育児は働き方を見直すいいきっかけになると思います」

それは高速道路と一般道路のようなものと金澤さんは続ける。

「高速を走っているときは見えなかった紅葉の景色など、違った景色が見えてきますよ。あー、みんな悩んでいるんだなあとか、自分はバリバリ走っているつもりだったけど、実はみんなに助けられていたんだなとか、いろんなことが見えてきます。一般道でダラダラドライブするのも、時にはいいものですよ」

女性1000人へのアンケート調査の結果が図版です。横軸が現状のバリキャリ度、縦軸が人生の満足度。円グラフは、それぞれのタイプ別に聞いた時間配分の平均値だ。

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女性1000人へのアンケート調査の結果

同じようにバリバリ働いているのに、満足度が80点以上のハッピーバリキャリと満足度20点以下のアンハッピーバリキャリの違いは、金澤さんが指摘するように仕事と生活のバランスが取れているかどうかにありそう。

ハッピーバリキャリは、仕事はほどほどに、「妻としての自分」も「親としての自分」もそれなりに時間配分できている様子。一方のアンハッピーバリキャリは未婚や子どもなしの人も多く、「妻として」「親として」が少ない代わりに「仕事」が8ポイントも高くなっている。

ハッピーゆるキャリは「仕事」の時間がうんと少なく、家事や育児を楽しむ家庭人。同じゆるキャリでも、アンハッピーゆるキャリは、「妻」や「親」の時間が少なめだ。

ただし、理想の時間配分に正解はない。金澤さんは「仕事の配分が多くても、ハッピーならそれが正解。自分の理想を見つけてほしい」と話す。

再びバリバリモードに戻りたければ、同じ要領で「仕事」の時間を増やせるようにほかを減らして調整する。ずっとバリ、ずっとゆるではなく、人生において自分のそのときの状況に応じてキャリアの太さを調整するイメージ。ゆるとバリをミックスしていくことが、ハッピーキャリアのコツだ。

はぴきゃり代表取締役 金澤悦子
リクルートを経て転職。2001年転職マガジン「ワーキングウーマンタイプ(現ウーマンタイプ)」を創刊、編集長に就任。05年独立。セミナーや研修を通じて女性のハッピーキャリアを支援。