ふるさと納税はノーリスクで特産品が手に入る国の制度

「ふるさと納税」をすると地方の自治体から特産品が届き、しかも住民税が安くなる!?

増税、増税の昨今ですが、ふるさと納税は実行した人全員がノーリスクでおいしいものがてんこ盛りに自宅に届く、久しぶりの(!?)嬉しいニュースです。

ふるさと納税とは、「納税」と名前がついていますが、実際は自分の居住地以外の自治体に「寄付」をすると、のちに「住民税の税額控除」によって2000円を超える分が税金から差し引かれる仕組みです。

2015年4月から制度が拡充され、寄付金控除額の上限が従来より2倍になり、また、サラリーマンの確定申告が必要なくなりました。ふるさと納税ワンストップ特例制度とはいえ「そんなおいしい話はあるわけがない……」と、人は理解できないと手を出しづらいもの。今回は“三方良し”のふるさと納税を、声を大にして説明します。

まずは居住地以外の自治体に「寄付」をする

まずは、「寄付」のほうから説明をしましょう。

日本には現在、「市」「区」「町」「村」が合計1741あり、47の「都道府県」があります。この自治体に直接、寄付をするのがふるさと納税のスタートです。寄付をすると、自治体から、「寄付をいただいて感謝します。そのお礼としてわが町の特産品を送りますので、お好きなものを選んでください」などと、特典が選べる自治体があるのが大人気となっています。

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ふるさと納税の仕組み(サラリーマンの場合)

このときの「ふるさと」は、自分の出身地でなくともかまいません。自分が応援したい、好きな自治体に寄付をしてOK。最近のふるさと納税をする動機は特典で選ぶ人が大多数ですが、もちろん、それでもOKです。

さらに、寄付金の使い道として、「子どもたちの教育資金に」というものから、ピンポイントで「地元のJリーグの運営資金に」「犬の殺処分ゼロをめざしているNPOに」などと指定できる自治体もあります。

寄付者がお礼としてもらえる特産品は、自治体の地域内から調達するので、地元が潤います。役場のふるさと納税担当者は地域を駆け回り、直接取引で特産品を確保することも多いとか。特産品のPRも兼ねているので、生産者も自慢できる品質のよいものを提供してくれます。

地域の食品加工会社などは発注品が増えて手が足らなくなり、「ふるさと納税のおかげで人を雇いました」という嬉しいニュースはあちこちから聞こえてきます。

お礼の品は地域の自慢の品がズラリ!

お礼の品としての特典の種類は多種多様です。地元でとれた米、肉、魚介、野菜、フルーツ、酒、加工品はもちろんのこと、工芸品から温泉宿泊券、お寺での滝修行まで。牛や豚まるごと一頭やマグロ1本などの豪華品も! 中には自転車や、その地域にある工場で生産されたタブレットなどもあります。まるでネット通販のように、さまざまなものが揃っているのです。

参考までに2014年の寄付金トップ5は、長崎県平戸市(12億7884万371円)、佐賀県玄海町(9億3205万8000円)、北海道上士幌町(9億1097万5609円)、宮崎県綾町8億3247万8008円、島根県浜田市(6億2170万185円)です。

3位の北海道上士幌町は人口5000人ほどで、高齢者が多く過疎に悩む町ですが、9億円もの寄付が集まりました。その寄付金を使い、町には「ふるさと納税基金号」のスクールバスが走り、中学校の吹奏楽部にも楽器が揃いました。人気の特典は十勝ナイタイ牛や、十勝ハーブ牛だそう。

つまり、自治体はその寄付金を使って地域を活性化したり、住民サービスを充実させることができるのです。私たちの寄付金が目に見えて役立つのなら、応援したい“ふるさと”に寄付をしたくなるのも人情ですよね。

寄付した金額マイナス2000円分の住民税が安くなる仕組みとは?

次にふるさと納税をする寄付者の「住民税の税額控除」から見てみましょう。

ふるさと納税はまず自治体に寄付をすることから始まります。その寄付した金額は、のちに住民税から差し引かれます。ならばたくさん寄付をしてたくさん特産品をもらいたいと思いがちですが、そうはいきません。

ふるさと納税はあくまでも自治体を応援するための寄付行為なので自治体にいくら寄付をしてもOKですが、住民税の2割までに抑えて、2000円の負担で済む範囲内の金額を寄付するのが効率的。

ふるさと納税の「住民税の税額控除」は、住民税の所得割の部分の2割です。住民税は年収、妻を扶養しているかどうか、子どもの年齢などによって納める金額は人それぞれですが、住民税の2割までの寄付金なら戻ってくるというわけ。このとき、住民税が安くなるのは寄付金マイナス2000円なので、実質2000円の自己負担が必要です。

それぞれの上限額は総務省の「ふるさと納税ポータルサイト」に目安や「寄付金控除額の計算シミュレーション」がありますので計算してみましょう。
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/080430_2_kojin.html

ここで自己負担が2000円で済む寄付金の上限額が5万円の人は、1万円×5カ所の自治体に寄付をして、それぞれから特産品をもらっても自己負担は全部で2000円です。よく「自治体1カ所につき2000円ではないの?」との質問がありますが、5カ所からお礼をもらっても枠内なら全部で2000円。

特典は早い自治体なら2週間、遅くとも2カ月で届きます。米、肉はダントツ人気ですが、旬の魚介類やフルーツなど新鮮・採れたてが宅配便で届くのはとても嬉しいものですよね。

気になる住民税が実際に安くなる時期はというと、住民税は「後払い方式」なので、2015年1月1日~12月31日までに行った寄付は、サラリーマンなら2016年6月以降に納める2015年分の住民税から戻ってきます。戻ってくるといっても本来納めるべき住民税が安くなり、給料の手取りが増える仕組みです。

税金が安くなったかどうかを調べるには、毎年6月ごろに会社からもらう「住民税特別徴収税額通知書」で確認しましょう。自営業者は住民税の納税書で昨年より減税になったかどうかを確認してください。

最後に、ふるさと納税はいきなり寄付をするのではなく、事前に寄付をする自治体に申し込みを行い、受け付けの連絡を得てから実行します。申し込みと同時に特典を選ぶのですが、人気の特産品は品切れになることもあるのでご注意。

ふるさと納税の申し込み法は電話やファックス、ネット、ふるさと納税ポータルサイト経由など自治体によって異なります。サラリーマンは寄付する自治体5カ所までなら確定申告の必要はありません。住民税は給与から天引きで納税していますが、勤務先の会社にふるさと納税をしたらといって、迷惑がかかることもありません。

自営業者はいつもの確定申告で「寄附金控除」をしてください。

ふるさと納税は「ローカル・アベノミクス」の切り札

少し説明が長くなりましたが、ふるさと納税は国民が気軽に地方へ貢献できる国の制度です。さらに4月から従来より控除額が2倍になったのは、国からのメッセージとして、納税者に「どんどんふるさと納税をしてね」という意味もあるのでしょう。

ふるさと納税は納税者が寄付をする自治体を選ぶことができ、選ばれた自治体はその寄付金を使って地域を活性化できます。地域の特産品の生産者も潤います。納税者は寄付のお礼が届くのでうれしいでしょう。これが“三方良し”の所以です。

今までアベノミクスの恩恵を受けていない……と嘆いている人も、ぜひふるさと納税の「ローカル・アベノミクス」でトクしてください。

マネージャーナリスト 坂本君子(さかもと・きみこ)
広告代理店、出版社にてサラリーで働くエディター、ライター、プランナー、コピーライターを経てフリーに。得意分野は投資、住宅関連。大ブレイクはしないけれど、仕事は堅実でハズさない。満を持して2008年に起業。個人投資家としての投資歴は15年選手(ちょっぴりプラス)。