2015年4月より介護保険が改正される

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認知症患者は増加の一途

超高齢社会の日本。厚生労働省のデータによると、2000年に156万人いた認知症患者は、2010年には226万人、さらに東京オリンピックが開催される2020年には296万人になると予測されており、増加の一途をたどっています。

高齢になるほど認知症の割合は高くなり、85歳以上では4人に1人が認知症であるとか。自分の親や自分が要介護状態になったとき、役立つのが介護保険です。介護保険は40歳以上の人は全員加入し、保険料を払います。その保険料や税金を財源とし、市区町村(保険者)が実施する要介護認定において介護が必要と認定された人は、費用の一部を負担するだけでさまざまな介護サービスを受けることができます。2000年に介護保険が始まって以来、少しの改正はありましたが、2015年4月から徐々に大改正が行われていきます。

その内容は全体的に負担増、給付縮小であり、高齢者には厳しいものです。主な改正を紹介します。

介護保険改正のポイント

●要支援1・2の通所・訪問介護を介護保険本体から外す

介護保険は要支援1・2と、要介護1~5に区分されます。要支援1・2は軽度の支援を必要とする人向けで、「訪問介護」と「通所介護」を受けられます。「訪問介護」とはヘルパーが自宅に来てくれ掃除や買い物、入浴などを手助けしてくれるもの、「通所介護」とは施設に通ってレクリエーションを楽しんだり、リハビリも支援してくれるもので、どちらも利用者にとってはありがたいものです。私の叔母が要支援と認定されたときには、本人は喜び、その家族も心の中でガッツポーズをしたものです。

その要支援の「訪問介護」と「通所介護」が、2015年4月より3年をかけて市区町村が取り組む「地域支援事業」に移行されることになりました。つまり、介護保険の本体から外すというわけです。厚生労働省によると、制度廃止に当たっては現在給付している財源を新たな事業に回すのでサービスの利用は継続できると説明していますが、今後は自治体によってサービスに差が生まれてくるでしょう。

●特養への入居は要介護3以上に限る

「特養」とよばれる特別養護老人ホームは公共の老人ホームで、一生涯、食事や入浴、排せつを含め、日常生活で手厚い支援を受けられ、費用も安くなっています。しかし、数がとても少なく、入所待ちの高齢者が2013年度は52万2000人(厚生労働省発表)にのぼります。これまでは介護認定を受ければ入所できましたが、介護保険の改正で2015年4月より、原則、要介護3以上に限ることになりました。

より重度の介護支援を必要とする人を特養に入りやすくする気持ちはわかりますが、要介護2以下の在宅生活困難者も多数おり、その人たちの居場所の確保が問題になっています。

また、圧倒的に足りない施設自体が増えない限り、空きがなかなかでないので、今の現役世代が老後になって特養に入りたいと思っても、いつまで待ってもサービスを受けることができません。高い介護保険料を納めているのに……、将来、特養に入るのはますます大変になりました。

●施設入居者向けの食事や部屋代の補助を縮小

公共の施設である特養や老健(介護老人保健施設)では、食事や部屋代は自己負担ですが、これまで所得が少ない人には自己負担分を軽減する仕組みがありました。今回の改正で、この基準が明確に、厳しくなります。

これまでは単純に所得(市区町村民税非課税)だけで判定していましたが、今後は遺族年金や障害年金(どちらも非課税)も収入としてカウントされます。また預金チェックもするそうです。

預金を持っていることが調査でわかったら、それまでより自己負担分が上がるというのはあまり気持ちのよいものではありません。

●所得が一定以上あるとサービスを受ける自己負担は2割に

介護保険サービスを利用するには、年収にかかわらず利用した金額の1割負担ですが、2015年8月からは、一定以上の所得がある人(年金収入が280万円以上など)は自己負担が2割となります。

1割から2割というと、今までより金額が2倍になるわけで、自然と利用と控える人も増えるでしょう。参考までに「要介護5」で最高月35万8300円までのサービスが受けられ、そのうちの自己負担分は1割で月3万5830円、2割で7万1660円です。

●所得の低い人は介護保険料が安くなる

介護保険料は自治体によって基準額が異なりますが、月5000円前後です。所得が低い人は段階的に保険料が軽減される仕組みですが、この軽減率が2015年4月より拡充されます。

この改正が唯一、負担軽減となるものですが、軽減の対象になる人は世帯全員の住民税が非課税か、本人が非課税である人が前提です。

誰しも福祉のお世話になる可能性は高い。徐々に老後の準備を!

以上、介護保険の主な改正について説明をしてきました。誰しも人生の最後のほうは、福祉のお世話になる可能性が高いです。そこで元気なうちに自治体の高齢者向けサポートを調べ、その時が来たら迷うことなく利用できるように準備をしておきたいものです。また機会があれば、民間施設も見学してみましょう。

老人ホームの金額は、目安として、特養なら月15万円+介護保険1割負担、民間老人ホームの一般的な施設で、入居金なしで月25~30万円+介護保険1割負担といったところです。自分が認知症になることは想像しづらいかもしれませんが、今日からでも徐々に老後資金を貯めていったほうがよさそうです。

マネージャーナリスト 坂本君子(さかもと・きみこ)
広告代理店、出版社にてサラリーで働くエディター、ライター、プランナー、コピーライターを経てフリーに。得意分野は投資、住宅関連。大ブレイクはしないけれど、仕事は堅実でハズさない。満を持して2008年に起業。個人投資家としての投資歴は15年選手(ちょっぴりプラス)。