高校の修学旅行費用、私立・長男は30万円、公立・長女は10万円

夏の暑さも和らいで、風が心地よい秋になりました。秋は春と並んで、子どもたちが修学旅行へ出かける季節です。うちの高校2年の長女も11月に修学旅行へ出かける予定。公立高校へ通う娘の修学旅行費用は、約10万円。行き先は、4泊5日のシンガポール・マレーシアです。

昨年までの旅行先は沖縄でしたが、海外体験をさせたいという先生たちの熱意で、今回は海外になったと説明を受けました。しかし、公立高校の場合は、かけられる費用に上限があるらしく、その費用の範囲で行ける海外で、治安がいいところということで、シンガポール・マレーシアが選ばれました。

今年から大学生になった長男の高校のときの修学旅行費用は、約30万円。6泊7日のオーストラリアで、農場へのホームステイ体験でした。長男が通っていた私立の高校は、例年、修学旅行は海外と決まっていて、当然のごとく費用を払わせられたことを思い出しました。

「公立と私立では、修学旅行の費用も3倍違うのね……」と思ったことをきっかけに、今回は修学旅行の費用について調べてみました。

都道府県ごとに修学旅行の実施基準がある

まず、東京都の公立高校の修学旅行について決められていることを調べました。

「平成26年度 都道府県・政令指定都市 修学旅行実施基準概要一覧」によると、東京都の高校の修学旅行費用については、国内の場合7万9800円以内、海外の場合9万5000円以内(燃油付加運賃を除く)となっています。

そのほかにも、旅行期間は96時間以内、海外の場合はガイドラインにより、安全・衛生・治安が良好な方面を行き先に選出すること、海外修学旅行実施については学校交流等条件があることなど、計画・実施にあたっての制約がいくつもあり、先生方のご苦労がうかがえます。

そもそも、「修学旅行の始まり」は?

修学旅行の始まりは、明治19(1886)年の東京師範学校の「長途遠足」でした。この旅行は「行軍」の計画に対して、校長らが「学術研究」および「教育」的配慮を加えて実施したものです。最初は軍隊の要素が強かったものに、旅先での生物・鉱物の標本採集や史跡探訪を交えた旅だったようです。それから120年以上。今は全国の学校で実施されている修学旅行は、日本独特の文化として根付いてきました。

120年超の歴史の中では、第二次世界大戦による修学旅行の中止と復活、鉄道運賃の団体割引適用、修学旅行専用列車の建造、昭和31(1956)年には文部省による「修学旅行の手引き」の発行、費用負担が困難な児童への旅行費用の補助、公立高校の修学旅行に航空機利用許可など、時代とともにいろいろな制度や環境が変化してきています(参考資料:公益財団法人 日本修学旅行協会「データブック2013 教育旅行年報」修学旅行の歴史)。

中学校・高校の修学旅行、国内に行く場合のかかる費用と行き先

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高校の修学旅行 見学先ベスト20

前出、公益財団法人 日本修学旅行協会「データブック2013 教育旅行年報」で、修学旅行費用の平均を調べてみました(2012年度分データ)。

中学校の場合、国立:7万2177円、公立:5万6978円、私立:8万287円で、全体の平均は6万1952円。旅行先は、1位:京都、2位:奈良、3位:東京、4位:千葉、5位:大阪、以下、沖縄、兵庫、神奈川、長崎、広島と続きます。

高校の場合は、国公立:8万7654円、私立:11万3142円で、全体の平均は9万7486円。旅行先は、1位:沖縄、2位:京都、3位:東京、4位:大阪、5位:北海道、以下、千葉、奈良、長崎、福岡、広島と続きます(見学先については、図表参照)。

いずれも目的は、歴史学習、平和学習、芸術鑑賞・体験、モノづくり体験、スポーツ体験など。特徴は、日頃の学校教育ではできないことをやる「体験学習」が増えている点です。また、中学でも高校でも8割以上の学校が実施しているのが「班別行動」。生徒が自主的にコースを計画して、移動手段も自分たちで調べて行動するというもの。「先生が組んだコースにゾロゾロとついていく」だけでなく、旅行における自主性を仲間との協調性を養うのが目的です。

最近では、班ごとに1台、GPS付きの携帯電話を連絡用に持たされ、先生がそれぞれの班の行動を把握できるようになっています。高2の娘が中学生のときの修学旅行では、京都の班行動の際に、宿と反対に向かうバスに乗ってしまったのを先生がGPSで気づいて電話をくれた、という間抜けな事件がありました。

中学校・高校の修学旅行、海外に行く場合のかかる費用と行き先

行き先が海外の場合の平均費用は20万705円ですが、最も安い台湾で11万2483円、韓国・中国・マレーシア・シンガポール・ミクロネシアが16万円以内、ハワイになると20万円を超え、オセアニア・欧米は26万円以上で、行き先により費用負担が変わってきます(これ以外にも、事前にパスポートを取得する費用や、準備のための費用、現地でのお小遣いなどが必要になります)。旅行先は、1位:韓国、2位:オーストラリア、3位:シンガポール、4位:マレーシア、5位:グアム・サイパン、以下、台湾、ハワイ、他のヨーロッパ、英国、アメリカ本土と続きます。しかし、現在集約されている2013年度の調査では、韓国が順位を落とし、シンガポール・台湾が順位を上げているようです。

海外の修学旅行の目的は、語学研修、国際交流、現地の風土や習慣を知る、歴史学習など。現地の学校との交流を行う場合も多くみられます。

こうやって調べてみると、うちの子ども2人は、一番安いコースと一番高いコースの海外修学旅行であったことがわかりました。

修学旅行費用の払い方と費用面での課題

私立高校の場合は、入学と同時に修学旅行の積立が始まったと記憶しています。2年の夏までの1年半で必要な金額を積み立てる仕組みになっていて、2年の秋以降は、「授業料の支払い額が減ったな」という感覚がありました。

一般的には、旅行代金を定期的に積み立てていく方式か、最初に一括納入してしまう方式(多少の割引あり)、最後に一括で総額を払う方式などがあります。どの方式でも大差はありませんので、家計の事情に合わせて納入方法を選びましょう。

費用の面ではいろいろな課題があります。個人で行く格安旅行と違って、修学旅行は団体旅行となり、さまざまな条件・制約がつく上に、かなり前からの予約が必要となるため、通常の旅行代金より割高になることが多いのです。

先に触れたように、公立学校の場合旅行費用に上限がある場合もあり、その範囲ですべての計画を立てなければならないこともネックになっています(見学先や体験内容が限られる)。また、自治体からの補助などもありますが、経済的な問題で参加できない生徒もゼロにはなりません。

海外へ行く場合は、燃油サーチャージが高い、円安になると旅行代金が上昇するなど、国内旅行とは違ったお金の問題も。

修学旅行で得るものは? そして、何よりも優先されるべきことは、安全性

子どもにとって修学旅行は、楽しい行事であり、友達とのいい思い出になります。しかし、親になって改めてその意義を考えてみると、校外に学習に行くという要素以外にも、親と離れて寝泊りすることの自立性、団体行動における協調性、公共の場での社会性などを養う機会。また、自分が住んでいる地域以外のさまざまな文化・風土に触れ、いろいろなことを考え、発見する機会でもあります。

今回調べてみて、修学旅行にかかる費用の目安がわかりました。子どもたちが楽しく学んで、経験を積むために、親は修学旅行費用が工面できるよう、入学当初から考えておきましょう。

そして、修学旅行において一番大事なことは、安全性。韓国の旅客船セウォル号が沈没し、修学旅行中の学生が多数死亡した事件は、記憶に新しいことです。親が後悔しないためにも、子どもを修学旅行に送り出すときは、交通、治安、衛生などの安全性、団体旅行保険、補償内容も含め、万一病気になったときの対応など、十分に説明を受けておきましょう。

フリーライター 生島典子(いくしま・のりこ)
投資信託の運用会社、出版社勤務を経て独立し、2004年よりライター・編集者として活動。子育て、家計、住まい、働き方などが主な執筆テーマ。好きなことは、出産と住宅ローン。3人の子どもを助産院で出産した経験あり