住宅購入でペアローンを利用する際の注意点はなにか。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「『ペアローン団信』の仕組みを知っておいてほしい。夫婦どちらかに万が一のことがあった場合、夫と妻“両方”のローン残債がゼロになるというものだが、落とし穴もある」という――。

※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんの元に寄せられた相談内容を基に、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーを考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

東京湾
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4世帯に1世帯が選ぶ「ペアローン」

都心部を中心に住宅価格の高騰が続いています。不動産経済研究所が発表した2026年5月の市場動向(不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2026年5月」)によると、首都圏の新築分譲マンションの平均価格は1億660万円で、前年同月比13.5%アップとなっています。

そんな中、住宅金融支援機構の2026年1月調査によると、現在4世帯に1世帯近くがペアローンを選択しており、夫婦でローン返済をするスタイルが定着しつつあります(住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査」)。

そこで今回は、「ペアローン団信」の落とし穴について説明したいと思います。

「ペアローン団信」の登場

ひとつの物件に対して夫婦それぞれがローンを組む「ペアローン」。夫と妻、各自でローンを組むことで大きな金額を借り入れできるため、特に住宅価格が高騰している都心部の物件を購入する際に、ペアローンの利用率が高いといわれています。

さらに、借入条件をそれぞれ設定できるので柔軟性が高く、住宅ローン控除もそれぞれ適用可能となるメリットもあります。そして互いに団信に加入できるため、片方が死亡・高度障害となった場合、当人の残債がゼロになるというのは、大きなポイントでしょう。

そんな中、2024年頃から「ペアローン団信(ペアローン連生団信)」が大手銀行で取り扱われるようになり、話題を呼びました。特徴をごく簡単に説明すると、夫婦どちらかに万が一のことがあった場合、夫と妻“両方”のローン残債がゼロになるというものです。

通常のペアローンの場合、先程説明したとおり、相手が死亡・高度障害となった場合でも自分のローンは残りますので、ペアローン団信の方がお得に感じるのではないでしょうか。

しかし、ファイナンシャルプランナーの仲間たちの間で当時、ペアローン団信に対して問題提起が相次ぎました。それがまさに今回の落とし穴なのです。

所得税・住民税が跳ね上がる可能性がある

一見、メリットが大きいように見えるペアローン団信。しかし、相手にもしものことがあった場合、自分のローン残債もゼロになると同時に、その「免除された自分の残債額」が税制上、「一時所得」として課税対象になってしまうのです。つまり、所得税・住民税が跳ね上がる可能性が高く、ファイナンシャルプランナーの仲間たちが懸念した点は、まさにここでした。

では一体どれくらい税金が増えるのか試算してみましょう(※以下、本稿での試算はわかりやすくするため、大まかに示した一例です)。たとえばペアローン団信に入って夫婦それぞれが5000万円を借り入れ、双方のローン残債が3000万円の時点で夫が死亡したとします。その際、夫婦それぞれのローン残債はゼロになりますが、免除された妻のローン残債3000万円は一時所得としてカウントされます。妻の年収を1000万円として、以下の計算式にあてはめて一時所得額を試算してみます。

住宅ローンの計算イメージ
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【一時所得の計算式】

一時所得の金額=(総収入-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円))×1/2

「総収入」は免除された妻のローン残債額である3000万円、「収入を得るために支出した金額」は、これまで支払ったペアローン団信の保険料の総額となります。35年ローン、変動金利1.2%(変動金利1%、ペアローン団信分の上乗せ金利0.2%)で金利が変動しなかったと仮定すると、住宅ローンの毎月の支払額は約14.6万円です。詳細の計算は省略しますが、この間の金利上乗せ分の総額は69万円です。すると、妻の一時所得は「(3000万円-69万円-50万円)×1/2=1440万円」となります。

残債額が大きいほど税金も高くなる

そして実際に所得税・住民税の対象となるのは給与所得と一時所得の合算になるため、年収1000万円の妻の場合、課税所得額は以下となります。

給与所得額=1000万円-195万円(給与所得控除)=805万円
一時所得額=1440万円
合計所得額=(805万円+1440万円)=2245万円
課税所得=合計所得額2245万円-62万円(基礎控除)-150万円(社会保険料控除)=2033万円

※基礎控除は令和8年の場合と仮定、社会保険料は給与年収の15%と仮定

所得税率は7段階ありますが、今回の場合は40%にあたるため、所得税は2033万円×40%-279万6000万円(控除額)=533万6000円。

住民税率は所得税率に関係なく一律10%。加えて均等割(5000円)が課されるため、住民税は2033万円×10%+5000円=203万8000円。

つまり、ペアローン団信で3000万円の残債がゼロになった妻は、737万4000円の税金の支払いが発生することになるのです。

今回の計算はあくまで目安ですが、残債額が大きいほど、税金の支払いが多くなることがおわかりいただけるかと思います。

「万が一の場合」の試算をしておく

ペアローンを利用する夫婦はパワーカップルが多いとされていますが、世帯収入が多かったとしても、ストックがあるとは限りません。ペアローン団信を利用する場合は、「万が一の場合、これくらいなら払える」という試算をし、金融機関の担当者ともシミュレーションをした上で利用をするようにしていただきたいと思います。

また、ペアローン団信を利用しない場合には、相手に万が一のことがあると、一人でローン返済を続ける必要があります。子育てなどをしながら返済を続けられるのか。また、年齢を重ねれば誰しも更年期や病気で思うように働けないリスクも出てくるでしょう。住宅ローンは人生の大半に関係するものであることを今一度考慮し、メリット・デメリットを見極めていただきたいと思います。

夫婦の手の上のミニチュアハウス
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「50年ローン」は落とし穴だらけ

最近では、「50年ローン」について若いお客さまから相談されることも増えました。お世話になっている20代の美容師さんも、「20代で戸建てを持てるならいいっすよね」と、目をキラキラさせながら話していたのですが、私は50年ローンにも警鐘を鳴らしておきたいと思います。

そもそも、50年という長期に及ぶ借り入れは、当然ですが、利息も大きくなります。月々の返済額は抑えられても、返済総額でみれば何百万円と損をしてしまう可能性が高いでしょう。

「繰上返済して65歳までに完済すればいい」と言う不動産業者や金融機関の担当者もいるようですが、ライフスタイルや経済状況の変化によって後ろ倒しにならざるを得ない可能性も、十分、あり得ます。つまり、「繰上返済」という不確定なものを頼りにするのは危険だ、ということも頭に入れておいていただきたいです。

そして今は金利上昇の局面ですよね。一昨年まで1%前後だった固定金利も、現在は3~4%台で推移しています。最低賃金の引き上げも後ろ倒しになりそうな気配で、戦争による物価高騰も続いています。まさに先行き不透明な時代だからこそ、これまで以上に住宅ローン選びは慎重にしたいところです。