エコで手軽な移動手段だが、思わぬ事故に!

買い物や通勤、塾通いなど、大人から子どもまでエコで手軽な移動手段として日常生活に欠かせない自転車。ところが最近、子どもの自転車事故が問題視されている。自転車といっても、かなりのスピードが出せることと、無灯火、ケータイ操作をしながらの運転、一旦停止をせずに走るなど交通ルールをキチンと守らない場合があり、危険度が増しているのだ。

2008年に神戸市で起こった当時小学校5年生の男の子と歩行者の女性との衝突事故で、2013年7月に出た判決では、少年の母親に約9500万円の賠償金支払いが命じられた。被害を受けた67歳の女性は、今も意識が戻らない状態が続いている。

自転車には、自動車の自賠責保険にあたるものがない

自動車やバイクを運転するときには自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)に加入することが義務付けられていて、「強制保険」とも呼ばれている。このような保険が、自転車の場合は何もない。他人に被害を与え、賠償金を支払う義務が発生すれば、すべて自腹で払わなくてはならないのだ。加害者が子どもの場合の賠償責任は、保護者である親が負うことになる。一般の家庭で、先ほどの事例の9500万円もの賠償金を払うのは困難だ。貯金を崩し、マイホームを売っても払えない。子どもが起こした自転車事故ひとつで、家族が今までどおりに暮らせない事態にもなってしまうのだ。では、どのような対策がとれるのだろうか。

ひとつは、子どもに交通ルールを守って自転車に乗るように指導すること、もうひとつは、自転車事故にも対応する保険に入っておくことだ。

まず、入っておきたいのは「個人賠償責任保険」

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個人賠償責任保険に入る主な方法

自転車事故で発生するリスクは3つ。最大のリスクは、他人をケガさせたり、死亡させたりすること。次に他人のものを壊すこと(ぶつかって相手の自転車を壊す、自転車で店や住宅などに突っ込んで建物を壊すなど)。最後に自分がケガをしたり、死亡したりすること。まずは、最初の2つに備えよう。

他人に損害を与え、賠償責任を負った場合は、「個人賠償責任保険」で補償される。個人賠償責任保険に入りたい場合は、自動車保険、火災保険など損保系の商品に特約でつけるのが合理的な入り方。すでに加入している保険に、個人賠償責任保険がついていないか確認しよう。ついている場合は、念のために補償額と補償範囲を確認。補償額は、無制限、もしくは1億円など多めにしたい。1本入っておくと、家族全員の賠償責任をカバーしてくれる。

自動車保険、火災保険に入っていない場合におすすめなのは、CO・OP共済の《たすけあい》に加入し、それに月々の掛金一律170円で入れる個人賠償責任保険に加入すること。これで最高1億円の補償が得られる。CO・OP共済《たすけあい》は、病気入院、手術、ケガ通院など幅広い保障内容で、月掛金1000円から入れる共済。

ケガをした際に補償される傷害保険や、自転車事故に限定した補償などで比較的保険料が割安な自転車保険に加入し、個人賠償責任保険を確保する方法もある。満0~59歳まで月掛金が一律1200円の全労済の「こくみん共済 傷害安心タイプ」のような傷害保険(共済)、スマホやパソコンから申し込みできるau損害保険の「あうて『じてんしゃBycle』」、セブン-イレブンの店頭で販売している三井住友海上火災保険の「自転車向け保険」のような自転車保険に加入すると、個人賠償責任保険だけでなく、自分がケガをした場合の補償も確保できる。

個人賠償責任保険は、自転車事故のときだけではなく、子どもが投げたボールがマンションのガラス扉を割ってしまった、買い物途中に子どもが走り回って高額な商品を壊してしまった、というような場合にも補償される。家族で1本入っておいたほうがいい保険だ。

自動車保険のなかの人身傷害保険の補償範囲が「車外」かどうか

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自転車事故に備える保険

自分のケガや死亡には、まず、すでに加入している医療保険や死亡保険があれば、当然保障される。さらに手厚くしておきたい場合は、前述の傷害保険や自転車保険などを検討しよう。

最近は、セゾン自動車火災保険やSBI損害保険などのように、自動車保険に自転車傷害特約や自転車事故補償特約をつけられる会社も出始めた。また、自動車保険のなかの人身傷害保険の内容次第では、歩行中や自転車に乗っているときの自動車との交通事故の場合にも、人身傷害保険が適用される場合がある。人身傷害保険が「車内のみ」でなく、「車外」も補償範囲になっていれば適用されるので、確認しよう。

日常利用することが多い自転車だが、手軽に利用できる分、保険加入が必要だとは思わないかもしれない。しかし、事故が起こってしまってからでは遅い。少なくとも、個人賠償責任保険には加入しておきたいものだ。

フリーライター 生島典子(いくしま・のりこ)
投資信託の運用会社、出版社勤務を経て独立し、2004年よりライター・編集者として活動。子育て、家計、住まい、働き方などが主な執筆テーマ。好きなことは、出産と住宅ローン。3人の子どもを助産院で出産した経験あり。