消費税ゼロでも家計負担は軽減されない
物価高対策のために、食品の消費税を2年間ゼロにするという選挙公約を掲げて圧倒的勝利を収めた高市政権。
野村総合研究所の試算によると、食品の消費税をゼロにすれば、家計の支出は年間で約6万円抑えられると言います。ただ高市政権下では、この6万円が軽く吹っ飛んでしまうような、実質増税ともいえる負担増が目白押し。すでに決まっているだけでも、今年1年間に以下のような項目で国民負担が増えるものがあります(図表1)。
肝心の「消費税減税」を“悲願”と言うなら、国会の予算審議並みにスピーディーに進めれば年内には実現するはずだったのが、なんの法的拘束力もない高市総理肝入りの「国民会議」というお手盛り懇談会で話し合うために、早くても来年の夏以降になりそうです。
それまでの期間には、怒涛のような実質増税が家計を襲うことを今から覚悟しておいたほうがいいでしょう。
補助金終了で光熱費は年1万円超の負担増
増税以外にも家計を直撃するものには、電気・ガス料金もあります。これまで政府は物価高対策として冬場3カ月を目安に、4人世帯で計7000円を補助してきました。月約2500円ですが、この補助金がゼロになると、4月(5月検針分)からはそのぶん一般家庭の光熱費負担が増加します。
それだけでなく、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃で、原油価格が高騰中。1バレル70ドル近辺で推移していた原油価格が100ドルを超え、150ドルに達する可能性もあると言われています。暫定税率廃止で下がったガソリン価格ですが、今後はリッター200円を超えるとの予想も出ています。2026年1月には、平均150円だったので、200円になると40Lで約2000円近く支出が増える計算です。
もちろん、電気代・ガス代も跳ね上がり、実際に原油高騰の影響が出てくる夏場の電気代は、かなりの負担増となる可能性があります。民間シンクタンクのエコノミストの試算によると、電気、ガスだけで年間で1万円以上の負担増になる可能性もあるそうです。ガソリンや光熱費だけでなく、運送費その他、日々の生活に直結するあらゆるものが値上げされ、物価高は止まらない様相になってきそうです。
「子ども・子育て支援金」年最大1万2000円増
4月からは「子ども・子育て支援金」の徴収が始まります。これは、社会保険料に上乗せされてすべての人が払うもので、金額は加入している保険や年収によって異なりますが、子育てで恩恵を受けない独身者や高齢者まで徴収されるので、ちまたでは「独身税」とも呼ばれています。
たとえば年収600万円の公務員や会社員だと、2026年度は年7200円、2027年度は年9600円、2028年度以降は年1万2000円と段階的に徴収額が増えていきます。
子どもがいようがいまいが払わなくてはならないので、税金や社会保険料と同じです。ただし、「支援金」という怪しい名前がついたこの徴収は、なんと国民所得に占める税金や年金、健康保険、介護保険など社会保険料負担の合計である「国民負担率」には入らない、なんだか、おかしな徴収です。
それでも、この徴収で少子化が防げるならいいのですが、少子化に本格的に対処するための組織を2003年に設けてから20年以上。当初の関連予算は年3兆7000億円でしたが、今では年間10兆円を超えるほど膨大に。予算に比例して子どもが増えているかと思いきや、この数字に反比例するように子どもの数は当時と比べて約3割も減り、しかも少子化は政府の想定よりも17年も早く進んでいます。少子化が今以上に加速すれば、実質的には負担する人の手取りが減るだけの話になってしまいます。
70歳以上の通院は最大7万2000円の負担増
「高額療養費」とは、保険医療で高額な費用がかかった場合、一定額以上かかったぶんについては戻してもらえるというもの。たとえば、現役のサラリーマンが病気の治療に100万円かかったとしたら、3割負担なので30万円ですが、「高額療養費」で定める上限金額は9万円弱なので、30万円払っても請求すれば約21万円を戻してもらえます。
この「高額療養費」の、「これ以上は払わなくてもいい」という上限が引き上げになります。これについては、2025年、当時の石破内閣が上限額を引き上げようとしたところ、がんや難病などの患者団体をはじめとする多くの国民の強い反発で、引き上げを諦めた経緯があります。
また、高市首相も総裁選では「負担を増やすべきではない」と反対を明言していたのですが、首相就任後の11月に前言を翻し、「能力に応じてどう分かち合うという観点から検討を進めていく」と言い出し、選挙で大勝したことを追い風に、数の力で政府予算案を成立させると同時に、強硬に2026年8月からの「高額療養費」の上限引き上げを決める方針です。
負担額は、年齢、収入によって変わりますが、たとえば70歳未満で年収600万円の人は、100万円の医療費がかかると現状の自己負担は8万7430円ですが、2026年の8月、2027年の8月と2段階で上限が上がることで、10万4830円となります。つまり、月1万7400円の負担増に。年収700万円だと、月約3万円負担が増えます。
さらにすごいのは、70歳以上で通院する人。「外来特例」という自己負担を安くする設定が見直され、年収約200万~370万円の人だと現在の負担額の上限年14万4000円が、2年後には年21万6000円となり、今よりも年間で7万円2000円も負担が増える人が出てきそうです。そうなると、食料品消費税の年約6万円減税分を優に超えてしまい、負担は増すばかりです。
今回の見直しでは、現役世代(70歳未満)の8割が負担増になり、70歳以上の人でも、前述のように通院で大幅な負担増となるために、乳がんや肺がんなどで外来化学療法を行っている患者の中には、治療を断念せざるを得ない人も出てくるのではないかと心配されています。
こうしたものこそ、「国民会議」で丁寧な議論が必要だと思いますが、負担増はさっさと決め、負担減の消費税減税などは「国民会議」でなるべく先送りしようとしているように見えます。
10万円パートは手取り1万5000円減
10月からは、今まで社会保険に加入しなくてもよかったパートでも、週20時間以上働いていたら、全員が社会保険に加入し、保険料を支払わなくてはならなくなります。
自営業者やシングルマザーなど国民健康保険、国民年金に加入している人は、会社が社会保険料の半分を負担してくれるので支払いが減ります。ただ、サラリーマンや公務員の妻は、これまで夫の社会保険が妻の分まで負担してくれていたので、自分は一銭も保険料を負担しなくても国民健康保険、国民年金に加入している扱いになっていました。ところが、これからは自分で負担しなくてはならず、そのぶん手取りが減ることになります。
具体的には、40歳以上で月に10万円もらっていたパートの場合、健康保険料と厚生年金保険料と介護保険料で月約1万5000円を払うことになり、手取りはおよそ8万5000円に減ります。
名称変更の隠れ蓑でステルス増税
アメリカとの約束で約43兆円の防衛費を捻出するために、2027年1月から防衛増税がスタートします。
「防衛増税」は、「復興特別所得税」2.1%のうち1%を充てるということで、目先で見れば「復興特別所得税」2.1%が、「特別復興所得税」1.1%+「防衛増税」1%なので、取られる金額は変わらないように見えます。ただし、2037年で終わるはずだった税金徴収が10年延びて、2047年末にならないと終わらないので、目に見えないステルス増税ということです。
2037年から2047年までは「防衛増税」のみの1%の徴収ですが、この先20年は細く長く続くことになります。
また、「防衛増税」の財源確保として、喫煙者の方には2026年4月から加熱式たばこの増税も待ち受けています。銘柄によもよりますが、2026年は2段階に分けて、1本あたり1円〜2.5円の増税となり、2027年からはさらに税率が上がる予定です。1日1箱(20本入り)加熱式たばこを吸う人なら、月あたりで最大約1500円、年間で最大約1万8000円も支出が増えることになりそうです。
紙巻きたばこについては、2026年は値上げが予定されていませんが、2027年から3年かけて、毎年1本あたり0.5円ずつ値上げされる予定。つまり、3年間で1本あたり計1.5円増税され、防衛費に充てられるということです。
以上は、すでに決まっている大きな増税並びに社会保険料負担増ですが、この先も自民一強政権であるため、独断的に物事が決められそうです。手取りを増やすどころか、さまざまな負担増を決めてくる可能性があるので、注意が必要です。