年末調整の書類はもう提出しただろうか。2025年は「103万円の壁」撤廃により基礎控除額の変更で、例年になく還付金が増えそうだ。経済ジャーナリストの荻原博子さんは「申告すると、さらに税金が安くなる『特定親族特別控除』が新設された」という――。
所得税の申告のために計算をしている人
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年末調整書類で申告漏れでもまだ間に合う

年末調整の書類は提出しましたか。令和7年の今年は、例年にないほど、手取りが増えそうな変化があります。

年末調整とは、毎月給料の中から概算で差し引かれている所得税の合計額を年末に正確に計算し、不足分は徴収し、取りすぎた税金は戻してくれるというもの。会社員は戻してもらえるケースが多かったので、これが第3のボーナスとなっていた人もいるでしょう。特に令和7年の年末調整は、基礎控除や給与所得控除の控除額の引き上げ、さらには、特定親族特別控除の創設など、今までなかった変化で、戻ってくる額がぐんと増えるという人もいるはずです。

もし、提出後に申告漏れに気づいたとしても、税務署への申告期限である1月30日に間に合うようであれば、再計算してもらえる場合もありますので、会社の担当者に相談してみるといいでしょう。

103万円の壁を最大160万円に引き上げ

2025年(令和7年)は、年初から「103万円の壁」が大きくクローズアップされました。

働いて給料をもらう人は、年収103万円を超えると、もらった給料から所得税を支払わなくてはなりませんでした。これがいわゆる103万円の壁で、103万円というのは「基礎控除48万円」と「給与所得控除55万円」を合わせた金額です。

実は、103万円を超えても、超えた分の所得税率は5%なので、もし、年収が1万円超過して104万円になったとしたら、超えた1万円の5%=500円を税金として支払うことになります。ほかに、住民税10%=1000円、特別復興税2.1%=10円で、合計1510円課税されることになります。つまり、超えた1万円のうち、8490円が本人の手元に残るということです。

この手取りをもっと増やそうということで国民民主党などが頑張り、税金のかからない控除額を増やすということになったのです。これが、令和7年1月に遡って行われることになったので、年末調整でも払い過ぎの税金が戻ってくる人が増えそうなのです。

48万円だった基礎控除額が58万円に

具体的に、どれくらい控除が増えたのか見てみましょう。

基礎控除は、図表1のように、今までは48万円でした。これが、基本的に10万円増えて、58万円になりました。

また、給与所得者で収入金額が200万3999円以下なら、基礎控除は大きく増えて96万円になりました。200万3999円を超えても、850万円までは58万円の基礎控除に5万円から30万円の上乗せがあります。これは、令和7年と8年に限定された措置で、図表1のように令和9年からは、200万3999円以上の人は58万円となり、上乗せはなくなります。

ちなみに、収入が2545万円超の人の基礎控除は、従来の48万円のままです。

【図表1】令和7年、8年は、基礎控除が段階的に上がっていく
出典=国税庁HP

基礎控除はすべての人に当てはまりますが、会社員など給料をもらっている人は、さらに給与所得控除が増えています。会社員は自営業者のように、収入から経費を差し引く仕組みが不十分なので、給与所得控除という税金を安くできる控除があります。給与所得控除については、図表2のように190万円以下は65万円になりました。

【図表2】給料から差し引ける控除額も上昇
出典=国税庁HP

年収600万円なら所得税は年間18万円ほど減

表を見ても、よくわからないという人のために、具体的に給料の額によってどれくらい支払うべき所得税の金額が変わるか見てみましょう。

所得税の計算では、区分がかなり細かく分かれているので、ここではおおよその目安となる額を示しています。

年収200万円=所得税は 3万円ほど
年収300万円=所得税は 6万円ほど
年収400万円=所得税は 9万円ほど
年収500万円=所得税は 14万円ほど
年収600万円=所得税は 18万円ほど

子どものバイトの壁が低くなる“特定親族特別控除”新設

また、基礎控除と給与所得控除のほかに、令和7年には「特定親族特別控除」が創設されています。

大学生など19歳以上23歳未満の子どもは「特定扶養親族」に該当し、これまでは年間63万円の控除が適用されていました。けれど、特定扶養親族である子どもの年間所得が48万円(給与収入で約103万円)を超えると「扶養控除」の対象からはずれなければなりません。そのため、子どもがアルバイトなどでこの基準を超える収入を得ると扶養控除が0円になり、結果、親の手取りが減るという「103万円(年収)の壁」が、ここでも問題となっていたのです。

一方で大学などの学費の値上げや、生活費の高騰により、バイトで働かざるを得ない子どもが増えているのが現状です。そのため、令和7年に新設されたのが「特定親族」区分。大学生などの19歳以上23歳以下で、これまで扶養控除を受けられなかった、合計所得58万円を超える子どもが対象です。

この特定親族向けに、バイトで多めに働いても税金がかからないよう設けられたのが「特定親族特別控除」です。

これまでは、子どもの所得が48万円(年収103万円)を超えると扶養親族ではなくなり、親の税負担が7万円〜13万円ほど(※)増えていましたが、この特定親族特別控除の創設により、令和7年からは子どもの所得が58万円〜85万円(給与収入で約123万円〜150万円)までは、これまでどおり63万円の控除が受けられるようになりました。

※平均的会社員給与で、48万円以上所得のある子ども1人

さらに、85万円を超えても123万円(給与収入で約150万円〜188万円)までは段階的に控除額が減額される仕組みができています(図表3)。こうした変更によって年収の壁が緩和され、親の税負担が軽減されるだけでなく、子どもが一定の所得までバイトを控える必要もなくなりました。

【図表3】特定親族特別控除額
出典=内閣府HP

この特別控除は、申告しないと適用されませんので、バイトを多くこなしながら頑張っている大学生などの子ども(※)がいるならば、忘れずに勤務先に「給与所得者の特定親族特別控除申告書」を提出してください。納税者である親の年収にもよりますが、申告することで税金が約7万円〜17万円安くなります。

※生計を一にしている子で、必ずしも同居している必要はない

例えば、親の年収600万円で、特定親族である子どもの年収が125万円(合計所得58万以上85万円以下)のケースで親の減税額はどのくらいになるのか見てみましょう。

【親の年収600万円のケース】

①所得税: (特定親族特別控除)63万円×20%(親の年収の所得税率)=12万6000円
②住民税: (特定親族特別控除)45万円×10%(標準税率)=4万5000円
①+②=17万1000円(年額)減税

年末調整の書類提出がまだの人は、しっかり確認して申請を忘れないように。すでに提出済みの人で、うっかり特定親族特別控除の申告を忘れてしまったという人は、すぐに勤務先に再計算を申し出るか、来年2月16日から3月15日までの期間に自分で確定申告をして、払いすぎた分の還付を受けましょう。

自民党が少数与党になったことで、今後は与野党の協議の中でさらに「年収の壁」が低くなっていくこともありそうなので、これからも注目です。