税金をできるだけ安く済ませるにはどうしたらいいのか。6人の子育て中FPの橋本絵美さんは「申請するだけで得をする制度がある。9月末までにやればポイント還元でさらにお得だ。これをやらない手はない」という――。

返礼品+ポイントで“実質黒字”

「納税」という言葉には、いいイメージはありませんが、「納税の唯一の楽しみ」と言っても過言ではないのが「ふるさと納税」。みなさんはふるさと納税はどのような方法で行っていますか。ふるさと納税には、ふるさと納税専用の便利なポータルサイトが沢山あります。各ポータルサイトで付与される「ポイント」を楽しみにしている方も少なくないのではないでしょうか。貯まったポイントを使って普段の買い物をすることもできるので、さらに家計の助けになりますね。

しかし、2025年10月から、この状況が大きく変わります。総務省はふるさと納税におけるポイント付与禁止の方針を打ち出しました。え! ポイントがなくなるの? もうお得じゃないの? と戸惑っている方も多いようです。今回はふるさと納税ポイント付与禁止の影響について解説します。

ふるさと納税のオンライン申請
写真=iStock.com/takasuu
ポイント付与のラストチャンス。各ポータルサイトをチェック。(※写真はイメージです)

ふるさと納税は、自治体に寄附すると、寄附金控除を受けることができ、寄附のお礼としてその土地の特産品や旅行券などの返礼品がもらえる制度。お米やお肉、フルーツをはじめ、その土地の工場で作られた家電や日用品も返礼品としていただくことができます。控除を受けることができる金額には各自の所得に応じた上限がありますが、寄附したお金のうち2000円を差し引いた金額が住民税・所得税の控除を受けることができます。上限以内の寄附であれば、自己負担2000円で返礼品が貰えるという、納税者にとってとても嬉しい制度です。

また、納税者にとってさらなるメリットだったのが、ふるさと納税ポータルサイト上で付与されるポイントです。ふるさと納税を行う際に利用するふるさと納税ポータルサイトでは、寄附金額等に応じてサイト独自のポイントが付与され(※ポイント付与を行っていないサイトもある)、自己負担2000円を上回るポイントが貰えることもありました。

例えば、楽天ふるさと納税では、楽天市場の買い物と同様の買い回りキャンペーンを活用すれば、寄附額の10%といった金額が楽天ポイントとして戻ってくることもあります。ふるなびでは現在なんと最大100%分のふるなびコイン(ポイント同等)がもらえるキャンペーンを行っています。(2025年9月11日現在)

還元されたポイントは普段の買い物に利用

こうしたポイントは日用品・食料品の購入に使えるため、実質的な生活費の節約につながります。わが家でも、毎年ふるさと納税の寄附はポイントの還元率が上がるように、他の買い物と併せて工夫しながら行っていました。返礼品でビールやお肉、フルーツなどをいただきながら、還元されたポイントは普段の買い物に利用できるので、家計に大きな助けになっています。

すっかりおなじみになったというイメージの「ふるさと納税」ですが、実は、2025年現在、最新の統計でもその利用率は日本全国で18.5%。国民の8割の人がまだ利用していないのです。そして、このふるさと納税に対するポイント付与が2025年10月から禁止されることになりました。迷っている暇はありません。ポイント還元のラストチャンスです。9月30日までに、最後のポイントが付く各ポータルサイトを通してふるさと納税を申請することをおすすめします。

なぜ変わる? ポイント禁止の背景

最近ふるさと納税を始めた方は驚かれたかもしれませんが、実は今回のポイント付与禁止は、ふるさと納税制度における規制の第一弾ではありません。これまでにも制度の健全化を目的とした制度改正が進められてきました。

ふるさと納税は2008年から始まりましたが、開始当初は確定申告をしなければならないこともあり、あまり利用者のいない制度でした。その後、2015年に寄附金控除の上限額がそれまでの約2倍に拡大し、ワンストップ特例制度が導入され、確定申告が不要になるという“2大改善”が行われました。会社員のハードルが下がったことで利用者が増えていきます。

2015年2大改善
・上限額が約2倍に拡大
・ワントップ特例制度開始

また、ふるさと納税を簡単に行うことができるふるさと納税ポータルサイト「ふるさとチョイス」が2012年に開設、その後も楽天ふるさと納税、さとふる、ふるなびといったポータルサイトが相次いで開設されます。ふるさと納税が買い物感覚で簡単にできるようになったことから、その後もふるさと納税制度利用者は右肩上がりで増えていきました。

4大ポータルサイト開設
・ふるさとチョイス
・楽天ふるさと納税
・さとふる
・ふるなび

あまりにも過熱しすぎた納税獲得競争

認知度が上がるにつれて、各自治体によるふるさと納税獲得競争が激化していきます。還元率が70%を超えるような返礼品や高級家電や商品券などの地域性のない返礼品も続々登場しました。あまりにも行き過ぎたことから、2017年には返礼品の金額を寄附額の3割以下とすること、地場産以外の返礼品を自粛すること、換金性の高い返礼品を禁止すること、といった是正要請が出されます。それでも過熱は収まらず、2019年には法改正により商品券や高額家電などの返礼品で寄附を集めていた自治体など、基準に満たない自治体がふるさと納税の制度の対象外とされる厳格な規制が始まりました。

2017年是正要請・2019年ふるさと納税に係る指定制度開始
・返礼品は寄附金額の3割以下とすること
・返礼品は地場産品であること
・基準を満たさない自治体は制度の対象外とすること

その後も2023年には返礼品は事務経費や手数料を合わせた費用を寄附額の5割以下とすること、熟成肉、精米については原材料が同一都道府県内産であるものに限るなど、制限が強化され、今回2025年にはポイント付与を禁止するといった流れになっています。

2023年
・事務経費や手数料を合わせた費用を寄附額の5割以下とする
・熟成肉・精米については原材料が同一都道府県内であるものに限る

2025年
・ポータルサイト等によるポイント付与禁止

じわじわ重いステルス増税

ふるさと納税を行っている方々にとっては、この制度変更は家計にじわじわと負担がかかるものになってきます。

今回のポイントだけで見てみてもたとえば、5万円分をふるさと納税で寄附し、10%のポイント還元があったとすると、5000円分のポイントが得られていたわけです。これがなくなるということは、5000円収入が消えるということになります。今年、ふるさと納税をするなら、9月中にかけこみで行ったほうがいいのです。

ただ、ポータルサイトでのポイント付与がなくなっても、ふるさと納税が無意味になるわけではありません。クレジットカード決済に係るポイント付与は禁止されていません。寄附金控除を受けながらお礼の品がいただけるのもやはり、家計にとってはプラスになるでしょう。地方でとれたお米をふるさと納税を活用して、定期便でいただくのもおすすめです。

ふるさと納税「ポイント付与禁止」反対の署名を石破首相に提出した三木谷浩史氏
写真=時事通信フォト
新経済連盟代表理事として、地方創生に関する政策提言とともに、ふるさと納税「ポイント付与禁止」反対の署名を石破首相に提出した三木谷浩史氏(左)(2025年3月18日)。

ふるさと納税のポイント還元がなくなるのは、わが家にとってもやっぱり痛手です。ただ、ふるさと納税の制度自体が良いものかどうか疑問があるのも事実です。

ふるさと納税の出発点は都市部に集中する税収を地方に分散させ、地域の活性化を促すというものでした。都市部ではふるさと納税によって税収が減っている自治体もありますが、それは制度の目的通りとも言えます。ただ、あまり知られていないかもしれませんが、国が税収の流出を補填する仕組みも存在します。

「損得ではなく応援したい」ところにふるさと納税を

しかし、川崎市や世田谷区など補填の対象外となる不交付団体は、住民税の流出の影響をもろに受け、財政運営に影響が出ています。これも大きな問題ですし、そもそも国が補填するのであれば、ふるさと納税の制度をつくらなくても、最初から税収の少ないところに補填していれば、それでよかったのではないかという気もします。

ただ、ふるさと納税という制度を活用することによって地方の経済が活性化するというメリットがあると思います。しかし、それも行きすぎた競争であるとして、規制強化しているので、いったいどうしたいのかがなかなか見えづらいところです。

市場原理が働くことで、寄附が集まる自治体とそうでない自治体が生まれることも自然なことです。ポータルサイトのポイントや手数料が問題視されていますが、自治体が独自のサイトを運営しても多大なコストや労力がかかります。寄附を多く集めている自治体は、PRや返礼品に工夫を凝らし、地域の魅力を最大限にアピールしている結果であると思います。都市部も地方も納税者も潤うような制度になっていくと良いですね。

まとめ
今後もふるさと納税のルールは変わっていくことでしょう。ふるさと納税がお得なことは事実なのですが、単に「お得だから」という理由だけでなく、返礼品を通してこの地域を応援したいという納得の理由でふるさと納税をすることで、今後のふるさと納税がより良いものになることにつながっていくのではないでしょうか。返礼品は大きな魅力ですが、ふるさと納税には返礼品のない災害支援や地域再生のクラウドファンディング型のふるさと納税などもあります。お得だけじゃない、応援したいという視点でのふるさと納税もぜひ取り入れてみてください。